第70話 ダンジョン攻略

70.ダンジョン攻略








パトロールの二日間が終わって数日後、俺とヘレナは【アルミーシュ】ダンジョンへと来ていた。

ここへ来たのには色々と理由がある、まず現状でヘレナという戦力は俺にとって大きな存在だからそれを出来る限り強化したい、そのためにはこのダンジョンで『機械種マギア』を倒して素材とGPをそれなりに貯めておきたい。


他にはここが戦いやすいというのと、パトロール要請でつぶれた休日の二日間の振り替え休日が出来て学校の時間分空きが出来たのでダンジョン攻略をしてみたいなと思ったのだ。


普段は学校があり畑の世話もしないといけないので毎日家に帰らないといけなくてダンジョンを深くまで攻略というのが出来なかった、なのでこういったタイミングでしか攻略できない。


二日間でどこまで行けるかわからないがやれるところまではやってみよう。



『それにしてもよかったんですか?あの話を断っても』


「その気がないのに返事を先延ばしにしてもしょうがないからね」


ヘレナが操る多脚に円盤の様な物が乗った機体、名前は【不壊】とつけたこの機体は一番最初に作ったあのでかいやつだ。

俺はヘレナが操る【不壊】の上で足をだらっと延ばし雑談に興じている。


話しているのはパトロール要請の際に起きたあの素材屋襲撃事件の後の事、浅村さんは車両を追跡していなくなったのだが割とすぐに犯人は捕まったらしくそう時間はかからず戻ってきた。

その際に浅村さんに声をかけられたのだ、やる気があるなら将来の就職先として特殊警邏隊の推薦を書くぞ?と言われたのだがその気はないのでその場で断ったのだ。


公務員だし職業としては探索者よりも圧倒的に安定している、だけどやっぱり俺は探索者として動いている方が好きなのでその場で断ったのだ。

浅村さんは残念そうにしていたがその後すぐに金森さんとかにも声をかけていたので割と手あたり次第なんだなと思った。


『マスター、敵を見つけました。距離650メートル、子機が15体、人型が5体、隊長格のが1体のいつものですね』


「おー、じゃぁサクッと倒しますか」


索敵を任していたヘレナから敵の発見報告をうける、なぜ自分で索敵しないのかというと俺の【気配感知】は感知範囲が半径120メートルほどしかないからだ。

普通の洞窟型のダンジョンならこれで十分なのだが【アルミーシュ】ダンジョンのようなフィールド型となると全然足りない。

なのでヘレナに索敵用のドローンをいくつか作ってもらいそれを飛ばしているのだ、何キロも先を拡大できるカメラに熱感知に暗視と他にも必要そうな機能は一通り付けてあるドローンだ、このお陰で数キロ先の敵も見つけれるようになった。

まぁこのドローンひとつ作るのにGPが100万近くかかっているので沢山は用意できないが………


現在残っているGPは230万ほど、色々作ったり買ったりしてたからあんまり増えていない。

GPを使用した中でも一番高かったのは【不壊】の使用する武器だろう、何を買ったかと言うと、まぁ見てくれれば分かると思う。


「んじゃ同時に攻撃しよう、奥の大きいのは俺がやるから他は任せた」


『はい』


俺がそう言うとヘレナが操る【不壊】の背中が開き武器が出てくる、右肩からは〝M134機関銃〟左肩からは四角い長方形の箱で穴がいくつも空いている〝多連装ロケット砲〟だ。

どちらも【不壊】の機体に合わせて大きくなっているので見た目的には既存の物に似ているが威力だとかそう言うのは全くの別物になっている。

武器と弾を合わせて全部で350万GPほど使った、高い。


『敵を捕捉、ロックオン完了いつでもいけます』


ヘレナに合わせて俺も〝スナイパーライフルFoxtrot〟を取り出す、使用する弾は【魔法転換:銃弾(雷)】だ、前に来た時にここでも色々と試した時に発見したのだがこのスキルアーツを使うと一撃で倒せる。

その代わり電撃で回路が焼き切れて使い物にならなくなるがボディとかは無傷で手に入るので素材として使うならこの倒し方で何ら問題ない。


「カウントダウン開始」


【不壊】の機体の上で寝転がり射撃体勢をとる。


『カウントダウンを開始します。5、4、3、2、1、発射』


ヘレナのカウントダウンに合わせて同時に射撃する、奥にいるやつは【魔法転換:銃弾(雷)】の一撃で体に電撃がはしりそのまま動かなくなる。

手前にいた敵の子機は機関銃で掃射され、人型の5体は〝多連装ロケット砲〟の攻撃で沈黙した。


「う~ん、攻撃が中々派手になってきたな」


前までは普通の銃でちまちま倒していたのが今ではもはや破壊だ、火力の上り幅が凄いことになっている気がする。


考えながらも回収用ドローンと荷物持ち君を【格納庫】から呼び出しておく。


子機はバラバラなのでまともなGPにならないだろうしこれはダンジョン協会へ売るとして人型のはヘレナの攻撃がうまい事いったのか5体とも頭部が破壊されているだけで他は無傷なのでGP的にも美味しい、最後に大きいやつは【魔法転換:銃弾(雷)】で回路以外は無傷なので一番きれいに残っている。


『回収が終わりました』


「それじゃぁ次に行こう」


『はい』


もうちょっと周回して素材に余裕が出来たらGPにまわそうかな?






◇  ◇  ◇  ◇






『マスター、そろそろ荷物がいっぱいになります。時間もいいですし奥へと行きますか?』


「んあ?あー、ほんとだもう15時か。そろそろ進むか」


『機械種マギア』を狩り続けてGPが600万を超えて、荷物持ち君の中にも素材がいっぱいになったようだ。

因みに荷物持ち君は俺の【空間庫】の数倍は持てる、その空きが無くなったという事は結構な量になっていたようだ。


時間もいいし奥へと進む事にする、【アルミーシュ】ダンジョンは最奥がダンジョン全体で言うところの中心になっており外縁部がダンジョンの入り口、そこから真ん中に向かって進む事になる。

さっきまで俺とヘレナは中間あたりを円を描くように回っていたって感じだ。


【不壊】の上へと乗り込みどう進むかはヘレナに任せる事にする。


「この辺は綺麗に整備されてるんだな」


数分進んだところで街並みの変化に気づく、何やら綺麗に整備されていて普通に生活できそうなレベルになっている。


『どうやら中心に近づくほどきちんと整備されているようですね』


ダンジョンの入り口がある外縁部などは一応綺麗ではあったが瓦礫が多かったり雑草が生えていたり木が地面から生えてきたしていて結構な廃墟感があった、それに比べると中間あたりと過ぎたこの辺は雑草も無く、木はあるが等間隔に生えており整えられているのがはっきりとわかる。


『マスター、敵です』


「お?また部隊のやつか?」


『いえ、どうやら一体だけのようですが今まで見たことないタイプのやつですね』


新しいタイプの敵か。


「見た目や大きさは?」


『人型ですね、大きさは2メートルほどですが装備を見た感じ警備ロボットのような印象をうけます』


「警備ロボット?」


『はい、統一された色見に武器もアサルトライフルが一丁とシンプルです。そして何よりパトランプっぽいのが肩についています』


「なるほど?確かにそれはぽいな」


『メガネ型ディスプレイに映像を表示できますが、見ますか?』


「いや、一体だけなら倒しちゃおう。相手が機械なら【魔法転換:銃弾(雷)】で一撃だろうし」


『了解、それでは狙撃可能な位置へと移動します』


【不壊】が移動している間に〝スナイパーライフルFoxtrot〟を取り出して用意しておく。少しして先ほど言っていた警備ロボットっぽいやつが見えてきた。


「確かにあれは警備ロボットっぽいな」


『はい』


何て言えばいいのか、この辺は感覚というかそういった印象を受けるって言うしかないのだが。

白で統一された見た目でごつごつとしたロボット、両肩に薄く切れ込みが入っておりそこがパトランプになっているのか赤色のフィルムが貼られている。

見た目から明らかにきちっとした作りで荘厳な感じをうけるのだ。


「取り合えず撃つか」


【不壊】の機体の上で射撃体勢にはいり息を整えてそのまま撃つ。


「やっぱこれここの敵には必殺になるな」


『楽でいいですね』


【魔法転換:銃弾(雷)】を受けた警備ロボットはバチバチと音を立ててから機能を停止したのかガクッとなって動きを止めた。


「最初の一体だけどこの先もいるだろうしGPにしてみよう、いくらになるのかな」


回収用ドローンだけ呼び出して手元まで持って来てもらう、目の前に置かれた警備ロボットはでかくていかつい。


「おぉ?これが25万GP?」


もしかしたらコアがあってそれが高いのかもしれないが一体で25万GPは美味しい。


「奥に進みつつ見つけたら積極的に狩ろう」


『索敵範囲を広げますか?』


「んー。無理のない範囲でお願い」


『了解』






◇  ◇  ◇  ◇






「あれは………ボスか?」


『門番ですかね?』


夕方の6時過ぎ、そろそろ今日は探索を終えて寝ようかなってタイミングでダンジョンの最奥である中心部の一歩手前の所まで来た。

中心部は一つの都市と言っていいほどの広さがあるがそこをぐるっと囲むように高い壁が建っている。

高さは300メートルで綺麗に揃えられていて上を見上げれば首が痛くなりそうだ。


そんな壁に大きな門が付いておりその前にこれまた大きな『機械種マギア』がドスンと待ち構えているのだ。

その大きな『機械種マギア』の足元に見えるのは中間あたりでいっぱい倒した隊長格の奴に見える、それがかなり小さく見える事からあの門番っぽいやつの大きさが際立っている。


高さだけで70メートルはあるし横幅なんて200メートルほどもある。


『どうやらあれは機体そのものが基地のようになっているみたいですね、その証拠あそこにドックの様な物が見えます』


「ほんとだ………」


『機械種マギア(基地)』とでも言えばいいのか眺めている短い時間の間にもその体から他の今まで戦ってきた『機械種マギア』が出入りしている。


「どうやって倒すかが問題だな」


見える範囲だけでも『機械種マギア(基地)』に隊長格の『機械種マギア』が30体ほど人型のとか戦車っぽいのとか色々いる。他にも子機もうじゃうじゃいるしさっきまで倒してた警備ロボットも沢山いるのが見える。


数が多すぎる。


『一応手が無い事もないですよ』


「まじ?」


『はい、取り合えず作戦会議する必要がありますし今日はこの辺にしましょう』


「確かにもういい時間だし何かするにしても明日にするか」


ヘレナに何やら考えがあるみたいだしまずはそれを聞いてみよう。

楽しみだな、あの先には何があるのか。あんなやばそうなのが守っているんだかなり気になる。


【野営地】の入り口を開き中へと入っていく、取り合えず今日はお疲れ様だな。







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