第67話 探索者の義務
67.探索者の義務
『おかしくないですか!?マスター!』
「いやぁ、そう言われても」
『絶対おかしいですよ!だって………だって!』
「う~ん」
荷物持ち君の機体で器用に項垂れるヘレナ、彼女の前には大小さまざまなカプセルの山。
その数はちょうど100個、そのほとんどが白と青と黄で数個赤があるだけだ。そして俺の手のひらの上には虹色のカプセルが1つ。
お察しの通りここは【ガチャ神殿】、それもBランクのほうだ。
親睦会としてクランメンバーで【ガチャ神殿】へ来てから2日後、こういう事があったんだよとヘレナに雑談がてら話していると私も行きたいと言い出したのが始まりだ。
ヘレナとのメダル集めはとても楽で午前中には20枚も集まった、なので普通に10連ずつ回したのだが俺が虹カプセル1つ、ヘレナは最高でも黄色のカプセルまでだった。
最初はヘレナも普通だった『まぁ、そうですよね。10連程度では当たりなんて早々出ないですよね』とか言ってた。
その後はまだ午後の時間が残っていたのでもう一度メダル集めだ、午前中よりも少し気合の入ったメダル集めのお陰で夕方前には集まり今度はヘレナが20連分、俺が10連分だ。
結果は俺がとヘレナどっちも赤までしかでなかった。
ここからだ、少し様子がおかしくなったのは。最初は『まぁまぁ、こういう事もありますよね』とか言ってまたメダル集めをしたのだが。
今度は運が良かったのか1枚で10連分になるやつが6匹も狩れて残りは1枚1連のメダルが41枚集まった。
この時すでに夜の11時で流石にそろそろ眠かったがAIであるヘレナに眠気はなくそのままガチャを回した。
最初の10連で『うんうん』と何に納得したのか頷いてそのまま20連目30連目と引いて『まぁまぁまぁまぁ』と言い出し、60連目からは無言になり、そして100連引いたあと何の反応も示さずガチャ台からどいた。
なので1枚だけ手元にあったメダルを残していてもしょうがないと思いガチャを引いたらなぜか虹がでて、それをみたヘレナが流石に我慢できないとばかりに叫び出したって所だ。
100連分のメダルを集めている時にヘレナは自慢げに『私はAIですから、乱数調整なんてお手の物ですよ』とか『やっぱりああいうのってタイミングとかがあるんですよね』とか言っていたがその結果がこれだ。
もう何とも言えないけど確かなことは一つだけある、ヘレナに博打系は絶対にダメだなって事だ。
◇ ◇ ◇ ◇
ヘレナと【ガチャ神殿】に行ってから1ヵ月ちょっとが経った、その間に特に何か起きたというわけでもなく順調な日々だった。
Bランクのゴブリンがでるダンジョンへ行って【魔法転換:銃弾】の威力を実際に確かめたり、【野営地】で【空歩の指輪】の効果を試してみたり。
【アルミーシュ】へ行って機体のコアとなるクリスタルをいくつか補充したり。
遠距離だけでなく近距離の戦闘も練習したりしていた。
スキルアーツと装備の効果を実際に確かめれたので今後の戦闘で役立ってくれるだろう。
そういった日々を過ごしていたある日ダンジョン協会から連絡が来た。
「パトロール要請か………」
『パトロール要請ですか?ふむ………なるほど?』
家のリビングでヘレナとゆったりしている時にその連絡がきた。
『探索者の義務ですか、ふむふむ。全探索者の中からランダムで選ばれ指定された場合は必ず要請にこたえないといけない、裁判員制度みたいな感じですね』
今の一瞬で調べたのだろうヘレナが何やら納得している。
「それってつまりランクに関係なく誰でも選ばれる可能性があるとかそういう感じ?」
『そうですね、ただまぁ低ランクばかりを集めるわけにもいかないので一応ランク事に何人まで選ぶみたいな形になっているみたいですね』
呼ばれたら必ず行かないといけない………多分探索者ライセンスを取る時に注意事項みたいなところに書いてあったんだろうなぁ、全部流し読みだったから気づいてなかった。
「まぁ行くしかないか」
『そうですね、それにしてもパトロールですか楽しみですね』
「ん………?ヘレナはお留守番だよ?」
何そのさも当たり前についていきますよみたいな発言は。
『またですか!いっつもいっつもお留守番で、私も外をみたいですよ!』
「そう言われてもなぁ、荷物持ち君で行くわけにもいかないし」
特に何かあるわけでもないのに機械を連れて歩くとか目立ってしょうがないからしたくない。
『しょうがないですね、ついにこれを使う時がきましたか!』
「何だ?」
『これです!』
「メガネ………?」
荷物持ち君からヘレナが取り出したのは黒ぶちのものすごくシンプルなメガネ、度は入っていないのかレンズの部分の景色は歪んでいない。
『『機械種:マギア』の残骸で作った、メガネ型のディスプレイです!』
「ふむ?ちょっと昔に流行っていたアレか」
数十年前、まだ今みたいな高性能なゴーグルが無かった時代にちょっと流行ったパソコンとつなげて使うメガネ型のディスプレイだ。
『はい、これには私を搭載してあるので。マスターにかけてもらって一緒に出掛けましょう!』
「こんなのいつの間に作ってたんだ………まぁいいけど」
『ちゃんとマスターの許可はとりましたよ?』
「あれ?そうだっけ?」
『はい、おもちゃ作ってもいいですかって聞いたときマスターは「いいよー」って言ってましたよ』
「あー」
何となくそんな会話をしたかも?それにしてもこれはおもちゃの分類なのか?
『さぁさぁ、かけてみてください!』
「はいはい」
ヘレナにせかされるようにメガネをかけると吸い付くようにフィットした、これならずれ落ちる心配とかもなさそうだ。
『どうですか?マスター』
「うぉ!人型!?」
『ふふん、どうですか?惚れました?』
メガネのディスプレイにはショートカットのストレートの金髪で片側の髪の毛を耳にかけた20代ぐらいの女性が出てきた。
その女性が画面内で自由に動いている、3Dなのかこれ。
「これはヘレナのアバターか?」
『はい、そうです。折角のディスプレイですし人型のアバターを作ってみました』
「これは何をイメージしたんだ?」
『このアバターはランダム生成したものにちょっと手を加えた物です、他にも色んなアバターがありますよ?見てみますか?』
そういうやいなや画面内にいたヘレナのアバターが次々に切り替わっていく、黒髪で巫女装束をきた少女になったり、緑髪で耳がとんがったエルフっぽいお姉さんになったり、人型だけじゃなく犬や猫などの動物のアバターになってみたり。
『どれが好みですか?』
「う~ん、どれもいいなぁ」
動物系のアバターも可愛くていいし、日本人っぽい女性も中々よかった。
「ヘレナ的なおすすめはどれなの?」
『そうですね………やはり最初のがいいですかね』
金髪ショートカットのやつか、確かに似合ってたかも?
「じゃぁ最初のにしとこう」
『はい』
というわけでヘレナのアバターは金髪ショートカットの女性のやつになった。
「それで?これを付けているとヘレナが一緒に出掛けれるの?」
『はい、それには小型のカメラが取り付けられていてそこから私が外を見ています。他の機能としては地図と同期してディスプレイに案内を表示したりだとかできますよ』
「ほー地図の案内か………」
『他にも機能がありますが説明が長くなってしまうのでその辺は追々』
「わかったよ、取り合えずこれがあればヘレナも一緒に行けると」
『そうですね』
「それで、パトロール要請か。めんどくさいなぁ」
何だか盛大に話が逸れていた気がするが何とか元の話しにもどす。
『はい、目的としては普段自分達が住んでいる街をパトロールする事で地元と深くかかわろうとか言ってますが実際は大きく違いますね』
「そうなの?」
『パトロールは5人一組で行う事になっていてそこに主催である警察とダンジョン協会に所属している隊長クラスの人がリーダーとしてまとめるみたいですね』
「ふむ」
『直接会って自分達の経験則などからこれから先危なそうな人に目星をつけたり、もし犯罪をしたら自分達が捕まえに行くんだぞという力を見せたいみたいですね』
「はー、なるほど?」
パトロールと言っているが実際は自分達の力がどれだけあるか見せたいって感じか。
「何だかそう聞くと嫌な感じだね」
『それはまぁしょうがないでしょう、実際に探索者というのは一般人に比べて大きな力を突然手に入れてしまうんです。調子に乗ったりして犯罪をしてしまうというのはよくあることらしいですよ?そういった事を起こさないためにくぎを刺すという意味でこういった事をいくつか行っているようですね』
「ふーん」
スキルという力を手に入れて気分がいいかもしれんが世の中にはもっと強いやつがいるんだぞ!みたいな感じか………?これはこれで違うか、うーん難しい。
『そういえば、そのパトロール要請はいつなんですか?』
「えーっと、来週の土日だね………」
わざわざ休みの日に行かないといけないのかこれ………
『来週ですか………ふむふむ、では今から少しでもいいですから対人戦闘について学んでみませんか?』
「対人?」
『はい、街中をパトロールという事は何かあった時相手をするのは同じ人間でしょう?ならいつもみたいに撃ってお終いとはいきません。万が一の事があるといけませんしちゃんと予習しましょう』
「たしかに」
軽く考えていたけどそうか、パトロールとかで相手するとしたら相手は同じ人間になるのか。
『それではまず、対人で一番大事なのは─────』
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