第66話 【ガチャ神殿】
66.【ガチャ神殿】
「あ、早速来ましたよ」
ダンジョン内の草原で片山さんが指さす先には【ガチャ神殿】でのシンボルになっている敵、60センチほどの身長にまん丸とした体から小さな手足が生えている、見た目はハムスターとかそういう感じのモフッとしたやつで細長い尻尾が生えておりその先に銀色の硬貨が付いている。
名前は『メダロン』って言ったかな?【ガチャ神殿】は娯楽の要素が強いからか出てくる敵も全体的に可愛らしい見た目をしている。
このダンジョンでは敵を倒すと煙となって消えて、素材となる体の代わりにメダルか魔石がドロップする。
ガチャをするために必要になるメダルは1回転で1枚、ドロップ率は平均10匹倒して1つなのでおおよそ100匹たおせば10連ガチャできるって感じだ。
ただ、このメダルが出る確率も運が悪いと中々でないこともあって1日頑張っても5連ぐらいしかひけないってこともあるらしい、片山さんがそう言ってた。
「では、さっき決めた通り陸さん前衛お願いしますね」
「あぁ」
片山さんの合図で前へとでる山城陸さん、彼のスキル構成はタンクよりらしく左手には大きな盾を持っていてもう片方の右手には槍を持っている。
この場に山城という名前の人が二人いるので便宜上、下の名前で呼ぶことになった彼だが見た目がいかつい。
身長192センチもあり引き締まった体に髪の毛の右側をコーンロウにしておりそれが剃りこみのようにも見える、ちょっと目つきが悪いので初見ではお近づきになりたくない感じの人だ。
「陸、いつものいくよ【守護】【俊敏】【剛力】」
姉の山城聖さん、身長140センチで黒髪ストレート、まだあまり話したことは無いから人物像などが定まっていないが端的に必要な事だけを話す感じ。
彼女のスキルは【支援魔法】、つまりバッファーらしい。
バッファーというのは身体能力などを一時的に向上させる魔法をかける事の出来るスキルをもった人達の事だ。
どのぐらい身体能力が向上するのかとかは正確な数値としては出せないが体感では1.5倍から2倍ほどらしい、これは単純にステータスがその分数値として伸びるとかじゃなくて本来持っている力だが普段は使用していない領域まで力を振り絞る事が出来るみたいな感じだ。
もちろんそんな火事場のばか力みたいなのを使えば筋肉が裂けたりしそうだが、バフ魔法はその辺も強化していて大きく力を出しても平気な体にしてくれているみたいだ。
バフ魔法が切れた際などに脱力感などがあって慣れていないと気分が悪くなるらしいが、何回も使用して慣れているとその辺の力の入れぐらいなどがわかるようになりバフ魔法が切れた後でも平気になるみたいだ。
慣れれば強いが慣れるまでが大変、そのせいか今までは姉弟二人でやって来た。
「私には【俊敏】だけお願いします」
「【俊敏】」
さて、刻一刻と戦闘準備が進んでいくのだが。俺は何もしないのかって?今回の戦闘は何もしない。
理由はいくつかあるが俺がBランクというのがでかい、片山さんはソロではDランクが行けてパーティだとCランク、山城姉弟は二人でDランクに安全に通える感じの実力だ。
それだけ聞くとCランクダンジョンは危なくない?って聞こえるかもしれないが俺の実力的に3人を抱えていても安全にCランクに通えるだろうという新井さんの判断だ。
俺的にはそんな、誰かの安全を考えつつダンジョンに潜るとかは考えたことが無かったので、まぁこれも経験かと思いここに来た。
もしどうしようもなくなりそうならヘレナも呼び出して手伝ってもらうつもりだ、それまでは寂しいかもだが【格納庫】でお留守番だ。
「よいしょっ【不意打ち】!」
『メダロン』の注意を陸さんがひいてその隙に片山さんが後ろへと回り込み【アサシン】のスキルアーツである【不意打ち】を当てる。
攻撃する前に声にだして果たしてそれは【不意打ち】になっているのか?という疑問はさておき、あの技は敵の背後から攻撃する事で効果を発揮するらしいのであれでいいみたい。
背後からの一撃で一瞬気が剃れたのを見逃さず陸さんが攻撃を加え、片山さんがさらに追撃して、そうこうしているうちに『メダロン』は煙になって消えた。
「あ!メダルですよ!幸先がいいですね」
片山さんが素早く拾ったのはガチャをひくためのメダルだ、1匹目からでるとは運がいいのかも?
それにしても戦闘に関しては平気そうだな、陸さんは結構どっしりとした盾役に徹してくれていて隙を見つければ鋭い一突きが刺さるし聖さんの支援魔法もでかい。片山さんは遊撃ポジションで適切なタイミングで攻撃できている。
「陸、【ヒール】」
「ありがとう、ねえちゃん」
戦闘後のケアまで出来るのか、この3人とプラス1~2人いれば安定してCランクのダンジョンとかでもいけそうだな。
「じゃぁ次は俺がやるね」
3人の戦闘の次は俺の番だ、今回ダンジョンで戦闘を行う以上スキルを色々と見せる事になる。その為にクランへ入る時は契約を交わす、クラン内で手に入れた情報を他に流さないってやつだ。
企業とかでは普通にある守秘義務ってやつだが今は魔法契約書があるのでどう頑張っても情報を流す事なんて出来ない。
俺もクランへ入った際に契約を交わしているのでここでは好きにスキルを使える。
「あっちにいるね」
「えぇ、でもあれ2グループもいますよ?」
「まぁ見ててよ」
暫く歩いて次に見つけたのは『メダロン』の群れのグループが2つ、どちらも5匹ずついて距離は45メートルほど。
あれぐらいなら瞬殺できるだろう。
【空間庫】から手榴弾を取り出し片方の群れへと投げ込み、もう片方にはアサルトライフルで掃射する、それでお終いだ。
「これがBランクなのかぁ強いね」
そう言葉をこぼしながらも片山さんがドロップ品を拾っていく、このパーティでの荷物管理は片山さんに任せている。
荷物持ちにしているように見えるかもしれないが、新井さんがクラン共有物として収納袋をいくつか買ったらしくそのうちの一つを借りてきている。
『メダロン』からドロップする魔石もメダルも片手におさまるサイズなので拾うのに苦労しないのと片山さんが最年長なので荷物管理っていう感じだ。
最年長といっても正確な年齢は聞いていないから知らないが………
収納袋は容量が低いのでも結構な値段がするはずだがそれを複数買ったと聞いて新井さんに大丈夫なの?って聞いたが平気らしい。
自分でダンジョンへ通った際の収益と俺がギルド依頼をいくつかやっていたのでその報酬がクランへいくらか入っておりそこからお金を出したと言っていた。
「それで、どうしようか?」
「んー………基本的にさっきと同じ様に戦ってもらって、俺も遊撃に回りますよ。それぞれどんな風にスキルを扱うか見れたと思うので戦闘をしながら修正していきましょう」
「そうね、それがいい」
お互いにそれぞれどんな風に戦闘をするのが得意か見せていき今後どう戦闘を進めるか話し合う。
ただ、問題としては俺がソロで余裕なのでやろうと思えば全ての戦闘をソロで行える。しかしそれだとパーティでの意味がないし片山さんに山城姉弟のレベルが上がらなくなる。
やっぱりパーティって難しいな………
◇ ◇ ◇ ◇
「【急所突き】!」
「【挑発】」
「奥のは俺がやるよ!」
あれから何度か戦闘をして何となく形になってきた。
陸さんが敵のタゲを集めて片山さんが近くの敵を攻撃していき俺が離れている敵を射撃で倒していく。
聖さんは敵の数を見て必要そうなら戦闘前にバフ掛けをして戦闘後にも必要なら【ヒール】などでケアをしていく。
俺が今使っているのは〝ハンドガンFoxtrot〟だ、長物じゃないのには理由があって最初は陸さんの後ろから撃っていたのだが何度か射線が被りそうになって怖かった。
一応スキルの銃なので人に対しては殺傷能力が無く安全だと事前に説明していても気分的によくないので途中で後ろから撃つのをやめた。
なので片山さんと同じ様に戦闘が始まったら敵の後方へと移動してそこからハンドガンで盾役の陸さんから遠いやつを順番に倒していっている。
「え~っとこれで28枚目だね、調子いい感じだ」
平均10匹で1枚出るぐらいのメダルがまだ100匹ほどしか倒していないのにすでに28枚もメダルが出ている。
「思ったより結構でるんですね」
「いやいやいや、普通はこんなに出ないから。10枚集めるのにだって何日か通うのが普通だよ?」
「そうなんだ?」
「パーティでもソロでも10連ひこうとおもったら大変だからねえ」
ふむ、パーティだと人数にもよるだろうけど各自が10連ずつ引こうと思ったらそれだけメダルがいる、俺たちの場合なら4人だし40枚か。
平均的にメダルが出たとしても400匹は倒さないといけない計算か、そう考えると結構大変だな。
「あ!『金メダロン』いるよ!!絶対に倒そう!」
「『金メダロン』?」
突然片山さんが大きな声を出したかと思うと『金メダロン』がいるという。
指さした方を見るとそこには『メダロン』の尻尾の先にあるメダルが金色になっているのがいた。
「あいつが落とす金メダルは1つで10連分になるの!しかも高確率でメダル落とすから見つけたら絶対倒さないと!」
そう言いながらも片山さんはもはや倒す事しか考えていないのか一人で突っ込んでいってしまった。
「まじか、追いかけるよ!」
一人で走り出してしまった片山さんを追いかけるために俺達も走り出す。
「って追いかける必要ないわ」
走り出してすぐに立ち止まる、片山さんがアレに夢中になって追いかけてしまうならここから先に倒してしまえばいい。
距離は130メートルほどしか離れていないから十分射程圏内だ、アサルトライフルを取り出し撃つ。
「っ!?」
「はぁ………」
『金メダロン』が煙となって消えてやっと片山さんが立ち止まった。
「片山さん、流石にダメです」
「ご、ごめんなさい」
「ちょっと休憩にしましょうか」
◇ ◇ ◇ ◇
休憩しつつさっきの行動の反省会をしてからその後『メダロン』狩りを再開して一人10連ずつひけるだけのメダルを手に入れてダンジョン外へと帰ってきた。
片山さんの行動についてはパーティでの戦闘がうまくいっていてテンションがあがり自分でもどうして走り出したのか分からないといっていた。
初めての事だったしちゃんと反省しているみたいだったのでこの話はそこでお終いにした。
「これって金メダルの10連のほうがいいのでやすいとかあるのかな?」
「オカルト的な話ではたまに聞くね、祈ってからの方がいいとか魔法陣作るとかそういうの」
「なるほど………」
「私も聞いたことがある、ご飯を食べてからひくといいとか」
「色んなのがあるんだなぁ」
最初はぎこちなかった空気もダンジョンが終わる頃にはそこそこいい感じになってみんな普通に話すようになっていた。
聖さんも最初は寡黙な方なのかなって思ってたけど意外と話してくれる。本当に寡黙だったのは弟の陸さんのほうだ、ほぼ喋らない。
「んじゃ早速ひいていってみようか」
「はい」
「うん」
【ガチャ神殿】の目玉ともいえるガチャの部分、部屋の中にある台はゲームセンターなどにあるUFOキャッチャーを3~4つ重ねたぐらいでかい。
上の部分には横に長い電光掲示板に装飾品ピックアップの文字が流れていて、台の真ん中の部分には目玉であるであろう商品が一定時間で切り替わり色々流れていってる。
「メダルをこうやってここに入れて、それでこれを回すの。行くよ!」
トップバッターは片山さん、ガチャ台のメダル投入口に10連分メダルを入れていき真ん中にあるまわすやつを気合を入れてから回す。
「おぉ、これは演出?」
片山さんがガチャを回すとガチャ台が光りだし黄色→赤→虹色と色が変わっていく。
「やった!虹色確定だ!」
やっぱり虹色だと確定なのか、分かりやすくていいな。
ガチャ台の下の部分、大きな受け皿となっている所に大小さまざまな10個のカプセルがごろごろと出てくる。
白に青に黄に虹に4種類に分かれた色のカプセルが出てきた、その中でも虹色のやつは片手で収まるほど小さい。
「白から青、黄、赤、虹っていう順番でレア度が上がっていくの。今回は白が7個に青と黄と虹がそれぞれ1個ずつだね。虹色のやつだけ何が当たったか見て行こうか」
「大きさ的にそれがピックアップされていた装飾品なのかな?」
「そうだろうね」
虹色以外のをひとまず横へどけて本命のだけを開けていく。
「これは………【影踏みの指輪】?効果は、100メートルの距離で影から影へと転移できて一回使うとクールタイムが30分と、中々いいじゃない」
虹色の中から出てきたのは真っ黒な指輪と効果の説明が書いてある紙、このガチャのいい所は鑑定に持っていかなくてもこうやってすぐに効果が分かる所だ。
「かなりいい効果だね」
「そうね、私の戦闘スタイルにもあっているしこれは大当たりだわ!」
ニマニマとした顔を隠そうともせず片山さんは嬉しそうだ。
【ガチャ神殿】のガチャはランクによってでる装備の品質が変わる、Cランクでこれほどいい物ならBランクかAランクならもっとすごいのが出そうだな。
「じゃ、次どうぞ!私は他のも一応確認しておく」
「陸」
「あぁ」
どうやら次は陸さんがやるらしい。その間に片山さんは残り9個が何が出たのか見ていくみたいだ。
場所をかわった陸さんはメダルを入れていきそのまま流れでガチャを回していく。
台が光り色が変わっていくが黄色で止まってしまった。
「陸………」
「………」
つらい………
陸さんは出てきたカプセルをパパっと開けていきある程度確認するとカプセルに戻しそのまま横にあるボックスへと放り込んでいく。
あれは所謂不用品回収箱でダンジョン協会へと繋がっておりあの箱に入れた物は即売却されていく、箱ごとに番号がふってあるのでどこから来たものかが分かり口座登録してあればあとで売却したお金を振り込んでくれるというシステムだ。
これはここの特徴の一つでみんなガチャを結構回す、その中でどうしても不用品が多くなる、そのたびにいちいち受付に持ってこられては業務に支障がでるのでこういった形になったそうだ。
「あたり」
考え事をしている間に聖さんが既にガチャを済ませてしまった、ただ台は虹色に光っているのでどうやら当たりをひいたようだ。
色んな色のカプセルがぽこぽこでてきてその中でも虹色のだけを先に確認するようだ。
「それは………」
「むぅ」
虹色のカプセルが出たのだが大きさ的に明らかに装飾品ではない、防具か武器かが入っているような大きさだ。
「【リフレクションシールド】………うけた攻撃を魔法にしてたまに跳ね返す、発動率は15%」
カプセルから出てきたのは少し大きめの盾、聖さんが持つには大きく扱えそうにもない。
彼女もそれを理解したのだろう無言で陸さんに渡していた、どうやら彼に使わせるみたいだ。
まぁ役割を考えるならそれが自然か。
「んじゃ最後行くよ」
最後は俺の番だ、何となくみんな銀色のメダルの方からつかっていったので自然と最後の俺が金メダルを使う事になってしまった。
メダルを投入口へと入れてガチャを回す。
「おぉ!いいね」
ガチャ台の色が白から青、黄と変わっていき最後には虹色になった。確定演出だ。
「この大きさは装飾品だな」
色んな大きさのカプセルが出てきたが虹色のは手のひらに収まるサイズなのでこれだと装飾品だろう。
取り合えず虹色のだけ拾って開けていく。
「指輪か。ふむ、なになに?【空歩の指輪】空中で踏み込むと力場を作り、それを足場として使うことが出来る。チャージ式で最大10歩まで可能、1チャージに10分………めちゃくちゃいいじゃんこれ」
指輪にはひし形の小さな宝石が10個ついておりそれが淡く光っている、これが恐らく使用可能状態って事なんだろう、使うとこの光りが消えていきチャージされるとまた光ると。
「スキル【空歩】と同じことができる装飾品ですね、かなり人気のあるやつだったはず」
そりゃこんな効果なら人気出るだろうなぁ。やったぜ。
陸さんが外した分こっちに寄った気がしないでもないが気にしない。
「んじゃ残りのも確認して終わったら帰るか」
「はい」
「了解」
たまにはパーティで行動するのも楽しいかもな、ガチャも楽しかったしまたきてもいいかも?
Bランクの行ってみるとか………
はまりすぎないようにだけ気をつけよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます