第46話 【フィルテイシア】 #4日目・5日目
46.【フィルテイシア】 #4日目・5日目
3日目は『ワイバーン』が【精霊の弾丸】を使うと楽に倒せることがわかってから夕方になって疲れるまで狩り続けた。
結果は全部で5匹、15万GPになった。
倒した数だけで言うとさらにプラス2匹なんだけれど、なぜGPになっていないかというと理由がある。
〝対物ライフル〟のせいだ。
せいだって言い方もおかしいかもしれないが今回〝対物ライフル〟を買って使用したのは今まで使っていたスナイパーライフルだと有効射程が足りなくて『ワイバーン』相手に使えなかったからだ。
そこで有効射程が2キロもある〝対物ライフル〟で【精霊の弾丸】を撃っていたのだが、せっかく買ったのに拘束弾撃つだけじゃもったいないかな?と思い普通に銃弾も撃ってみたのだ。
まぁGPになっていない事から結果はわかりきっていると思うが、『ワイバーン』が空中で〝スティンガーミサイルEcho〟を食らったときみたいに大きな穴をあけて死んだときはびっくりしたね。
流石〝対物ライフル〟だと思ったが逆に素材がとれないので簡単に使えなくなった。
火力があるって言うのも考え物なんだな。
それだとGPに換えれなかったのは1匹だけなんじゃないの?と思ったかもしれないが実はその後に今度は徹甲榴弾を〝対物ライフル〟に込めて撃ってみたのだ。
これは正直俺の好奇心からやっちゃった、普通の銃弾であそこまで威力出るんだったら弾を強くしたらどうなるんだ?って。
結果は『ワイバーン』が汚い花火になったよ。
胴体の横から当たったはずの弾丸がなぜか『ワイバーン』を綺麗に爆散してしまって血の雨が降る事になった。
明らかに過剰な威力だったが楽しかったのでよしとする。
そんなこんなで3日目が終わり、今日は4日目。
駿河さんから指定された『ワイバーン』の討伐数は既にクリアしてしまったのでこれからどうするか考えないといけない。
残り6日間ずっと【野営地】内でのんびりしつつたまに魔物を狩るのでもいいが折角なら何かしたい。
「と、言うわけで何かないですか?」
「何がというわけなのか知らないけれど、私はあくまでも教官の立場だからあまりあなたの行動を誘導するような事は言えないのよ?」
「そう言わずに、何かないですか?」
「そうねぇ、単純に下層を探索するのはどうかしら?上層よりも強い魔物が出てくるし楽しいんじゃない?後は下層には遺跡があってそこから宝箱が出るって聞いたわ」
「強い魔物に遺跡に宝箱ですか………確かに面白そう、行ってみようかな」
話しをしつつも朝ご飯のおにぎりとウィンナーと卵焼きを食べていく、お米については昨日の晩に炊いておいて残しておいたものだ。
駿河さんの方はホットサンドにしたみたいでそっちも美味しそうだ。
俺には【空間庫】があり、駿河さんには収納袋があるのでこういった食料をいくらでも持ち運べるのはかなり便利だ。
しかも最近では外で使える小型冷蔵庫まであるから生ものでも持ち運べるようになったのでこうやって持ち運べる手段があればさらに便利になった。
「んじゃ取り合えず下層に行ってみるかな」
そうと決まれば、ウィンナーをほおばりおにぎりを口に詰め込んで朝ご飯を終える。
◇ ◇ ◇ ◇
「あった、あれか下層にいく転移装置は」
下層へと行くと決めてから2時間ほど、やっと下層へと行く転移装置を見つけた。丸い魔法陣に四角の土台、四隅には灯篭みたいなのが立っていて何かの遺跡の一部みたいにも見える。
「え~っと確かここに魔石を入れていくんだったかな?」
四隅にある灯篭っぽいやつの空いた穴に道中で倒した魔物の魔石を入れていく。
下層を目指すと決めた後にここのダンジョンについて調べてわかったことだが下層へ行くにはこの灯篭の中に魔石を入れないと転移装置が動かないという事だ。
魔石のランク的にはDランクなら2個、Cランクなら1個、と数が変わってくるがもっと低ランクの物でも足りるまで入れればいいだけだから用意しやすいやつでいいみたいだ。
魔石が足りると灯篭に灯りがつくのでわかりやすい。
こういった細かいダンジョン情報とかは余程不人気で人が来ない所だったり、発見されたばかりだったりしなければそれなりの情報が出そろっている。
いつもはある程度だけざっと調べて本当に細かい所は必要になってから調べている。
もちろん下層で出てくる魔物が何かも調べ終わっているし注意する点も調べている、遺跡についても一応調べておいた。
先に何でもかんでも調べるとつまらなくなりそうだが、そのへんは本人の匙加減なのでなんともいえない。
俺の場合はネタバレを食らっていても楽しめる方だから問題ない。
っていうかそもそも自分の命にかかわる情報なんだからみんな少しでも調べてから行くべきなんだけど、これも人としてのさがなのか少しも調べずにダンジョンへ行く人が後を絶たない。
俺の場合はちゃんと危険な所だけは調べているので問題ない………と思う。自己判断だから確実とは言えない。
そんな事を考えながらも4つの灯篭へと魔石を入れ終わると魔法陣が光り出す、魔石を入れ終わってから3分間だけ転移が出来るようになるはずだ。
「それじゃぁ行きますか」
「はい」
転移装置を使う時だけははぐれないように駿河さんと同時に下層へ飛ぶことにする。一応転移装置は使う場所によって飛ぶ場所が決まっているのではぐれる事は無いのだが保険だ。
ちゃんと飛べる事が分かっていても突然何かがおきるのがダンジョンだ、こういったときも油断しないのが自分の命を守る事に繋がる。
光る魔法陣の上にのる、乗ってから数秒すると光がちょっと強くなって次の瞬間視界が切り替わる、これで転移完了だ。
わかりにくいがさっきまでいた場所と少し違う。
まず生えている木が上層と比べて大きい、それにさっきまで見なかった花も生えている。
さらには空を見上げるとごつごつとした岩肌が見える、あれが上層だった大地だ。
「ギャァウ!」
「いきなりか」
転移装置がある場所は広場の様になっているがその端の森の部分から魔物が顔を出した。
茶黒のでこぼこした肌にワニのような見た目で4つ足、口は奥行も多少あるが横にも広い。
大きさは10メートルぐらいだろうか?そんなに大きくは見えないが横幅があるのでとてつもなく威圧感がある。
現れたのはそんな魔物『グランドドラゴン』だ。
所謂、地竜と呼ばれる魔物でドラゴンと名が付いているがどちらかというと恐竜に近い。
『グランドドラゴン』との距離は40メートルほど近づかせる理由もないので〝アサルトライフルEcho〟を構えて撃つ、この距離なら十分射程距離内だ。
「ギャギャウ!」
「まじかっ」
〝アサルトライフルEcho〟から放たれた弾丸は『グランドドラゴン』に当たりチュンッと音を立てて弾かれた。
皮膚が硬くて〝アサルトライフルEcho〟じゃまともにダメージを与えられないみたいだ。
あたる角度が悪かったのか、正面から真っすぐ当たれば多少でもダメージが入るのか。一瞬動きが止まったが思いなおして武器を取り替える。
『グランドドラゴン』は攻撃されたことが分かったのか完全にこちらへと意識が向いているが〝アサルトライフルEcho〟の攻撃がまともなダメージにならない事に気づいたのかゆっくりと近づいてくる。
〝アサルトライフルEcho〟を背中へと回し【空間庫】から〝対物ライフルEcho〟を取り出し抱えるようにして持ってマガジンを手に持つ、弾は普通のでもいけそうだが弾かれたら怖いので徹甲榴弾をマガジンに込めていく。
マガジンへと徹甲榴弾を5発ほどこめ終わったら〝対物ライフルEcho〟へと差し込みボルトハンドルを動かし薬室へと弾を込める。
『グランドドラゴン』との距離は既に20メートルを切っている、ゆっくり動いているといってもそもそも相手がでかいので一歩が大きい。
今から寝転がって狙っている暇は無いので立った状態で狙う。
右足を後ろへと置いて衝撃を受け止めれるように備える。
手振れで狙いがずれるがここはステータスで何とかするのと、これだけ『グランドドラゴン』との距離が近ければ外す事は無い。
「ぐっ」
〝対物ライフルEcho〟を撃つと強い衝撃を肩に受けるがステータスに物を言わせて何とか耐える。
「ゴァッ」
放たれた弾丸は上顎にあたりそのまま顔の上半分を全部吹き飛ばした。『グランドドラゴン』は死んだ事で力が抜けたのか音を立てて崩れ落ちる、その際に俺が立っている所まで振動がきた。
「はぁ~あっぶなぁ」
〝対物ライフルEcho〟を【空間庫】内にしまって大きく息を吐く、転移直後で【気配感知】を使う前に『グランドドラゴン』が現れたので驚いたし〝アサルトライフルEcho〟がまともにダメージを与えられない事にびっくりした。
『グランドドラゴン』が特に皮膚が硬いからダメージが通らなかったと思いたい。
「苦戦してましたね」
「はい………もしかして『グランドドラゴン』って『ワイバーン』より強いですか?」
息を整えていると後ろから駿河さんが出てきた、武器を抜き身にしているので臨戦態勢ではいたようだ。
「ん~、相性によるんでしょうが基本的には『ワイバーン』の方が強いとされていますね」
「まじかぁ」
ネットでは出てくる魔物だけを調べて強いかどうかまでは調べてなかったが、これで『ワイバーン』より弱いのか………
相性か。
「『ワイバーン』に比べて『グランドドラゴン』は地上にいますし問題となるのは多少硬いというところぐらいでしょうか」
「そうなんだ………」
まぁ確かに今回は突発的な出会いだったというのと〝アサルトライフルEcho〟が効かなくて焦ったけど〝対物ライフルEcho〟なら余裕だったもんな。
そう考えると近づかなければ『ワイバーン』と一緒か、それよりも『グランドドラゴン』は硬いし〝対物ライフルEcho〟で丁度良く倒せる相手かもしれないな。
次は通常弾で試してみよう。
◇ ◇ ◇ ◇
「あ゛~疲れた」
今日はBランク試験の5日目の夜、一気に時間が飛んだなって?しょうがない特にこれといったことが無かったからな。
一応話しておくと下層に降り立って『グランドドラゴン』を倒してから駿河さんの話に出てきた遺跡を探していた。
ちなみに『グランドドラゴン』は損傷が激しく1万GPにしかならなかった。損傷が激しいのに1万GPにも?ともいえるかも?
まぁとにかく『グランドドラゴン』を倒した後探索を開始した、森の中なので【イーグルアイ】は役に立たず、基本は【気配感知】を常に発動しつつ移動していた。
出てくる魔物は上層とは違い厄介なのになってた、人を丸呑みにできそうな蛇に猿に植物系の魔物まで、明らかに上層より難易度が上がっていた。
必然的に慎重に進む事になり遺跡探しは難航した。
GP的には美味しかったからいいんだけどね、狡猾で厄介な魔物の相手をするのは疲れた。
たまに『グランドドラゴン』もでてきた、丁度いいと〝対物ライフルEcho〟の通常弾を試してみたが3発ほど頭に撃ちこまないと死ななかった。
ちゃんと威力はあるので肉がえぐれて見た目に大きなダメージを食らっているのが分かってはいたがスタミナがあるのか中々死ななかった。
もっとうまく脳みそだけを撃ち抜ければ1撃で倒せそうだがそうできるのはもうちょっと経験を積まないと無理そうだった。
頭だから3発で済んでいるがこれが胴体などにもあたっていれば倒すまでにもっと撃っていないといけなかっただろう。
『グランドドラゴン』が基本的にこちらに顔を向けて突っ込んでくるだけの魔物でよかった、じゃないと大変だったかも。
そんな感じで4日目を終えて、5日目である今日も動きに変化はなく同じことを繰り返していたって感じだ。
今も遺跡を探しつつ探索をしているのだが、これが全然見つからない。
ネットで場所を調べれば?って思うかもしれない。確かに情報はのっている、だがそれは在った場所であって今もある場所ではない。
遺跡は宝箱を入手するとなぜか消えるらしくまた別の場所に出現するとのことだ。なぜ消えるのかは知らない、システム的な事を考えれば宝箱の中身とかを一度リセットしてるんだろうと思うけど果たしてダンジョンがそんなシステマティックに動いているのか知らないので何とも言えない。
そろそろ遺跡を見つけたいけどこればっかりは運なのでどうしようもない、このまま試験終わりまで見つけれないかもしれないがそれもまた運だ。
見つかったらラッキーで行くしかないか。
今日はもう晩御飯を用意してお風呂はいって寝よう。
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