第47話 【フィルテイシア】遺跡発見 #6日目

47.【フィルテイシア】遺跡発見 #6日目








今日は6日目、Bランク試験も後半に入った。

10日の何時に終わりか知らないけれどきっと終了の時は教えてくれるだろう。


本日の朝ご飯は駿河さんに貸してもらったホットサンドメーカーでホットサンド作りだ、この前作ってるのを見て食べたくなったのでダメもとで聞いてみたら貸してくれた。

中身はチーズにハムに生卵をひとつとシンプルにしてある、それと飲み物は牛乳多めのコーヒー牛乳だ。


牛乳をあんまり飲み過ぎるとお腹を壊すのでこの一杯だけにして後は普通にお茶にする。


【フィルテイシア】の下層に入ってから『グランドドラゴン』に木に隠れて襲ってくる、人を丸呑みにできそうなほど大きい『影蛇』に。

群れで襲ってくる『ファミリーモンキー』や【世界樹の花園】でもみた植物型の魔物『マンイーター』などが出るようになった。


上層で『ワイバーン』を5匹ほど倒せたのでGP的にはその時点で30万に戻っておりさらに下層で色々倒す事50万GPにまでなった。

うはうは状態ではある。


このまま頑張れば夢の大台100万もいけるかもしれない。


そんな感じで今日も探索を頑張る。





◇  ◇  ◇  ◇





「ん?何だこれ」


魔物を適当に狩りながら探索を続けて、現在時刻はお昼過ぎの2時ぐらい、今日もこのまま遺跡見つからないだろうな~って思っていると明らかに人工物っぽい石で出来た瓦礫がでてきた。


もしかしてこれは遺跡が近いって事か?


瓦礫は木の根に埋もれるように絡まるように落ちていて周りを見ると似たような人工物がいくつもある。


「んん?動かないやつがいる?」


人工物を眺めていて気付くのが遅くなったが【気配探知】で動かない存在を見つけた、この先60メートルほどにいる。

動いているやつなら見つけやすいがこうやって止まっていられると気づきにくいとは新しい発見だった、今後使う時は動かないやつにも気をつけよう。


動かない魔物と言えば潜んで待っている『影蛇』や植物型である『マンイーター』なども動かなさそうだが、実はそうでもなく結構動いている。

動かない系の魔物は基本的に何かの気配を感じてから動きが止まる、それまでは普通に元気に動いている。

【気配探知】に動いている状態でまずは気づいて、それから動かなくなるからわかりやすい。

それに比べて今気づいたやつはまるで自分の意思がないかのようにまったく動く気配がない。


取り合えず見える範囲まで近づいてみよう。

このまったく動かない相手が何か分からないが気になるから見てみたい。


幸いな事に動かない相手以外は近くに何もいないので遺跡に一部っぽい人工物を時々見かけながらも進んでいく。


「あれが遺跡か?」


【気配探知】を頼りに進むと遺跡っぽい物を見つけた、苔の生えた建造物で所々が壊れて瓦礫になっている。

正面だけは頑丈なのか苔が生えているものの綺麗な形で残っている。


「動いていない気配が遺跡からする?」


【気配探知】で感じる動かない相手の気配が遺跡から発せられているがどこにも魔物が見当たらない。


「ん~【イーグルアイ】」


魔物の姿形や現在の状態を色で見れる【イーグルアイ】を発動する、わざわざスキル名を言う必要は無いが時々口に出して言ってみたくなる。


「なるほど、それで遺跡から気配がしてたのか」


遺跡には豪華な装飾がされている、フルプレートメイルを着た騎士っぽいやつに何かの花をあしらった装飾。

アーチ状の部分には英語っぽい文字が書かれている。


そんな装飾の一部、騎士から警戒状態の黄色が見える。

あれはきっと『ゴーレム』の一種だな。


『ゴーレム』と言えばその種類は様々だ、物語の中でも色んな種類が出てくる。

一番有名なのはあれだろうか、頭に文字が書いてあって一部を消すと死という意味になり倒せるっていうやつ。


あれは分かりやすい弱点だったから倒しやすかったのかもしれないが目の前に見える『ゴーレム』には頭に文字は無く倒す方法は粉々にするぐらいしか思いつかない。


さてそんな『ゴーレム』だが【イーグルアイ】で見る限り警戒状態という事だが動き出す気配はない。

動かないなら好都合だ、準備しよう。


用意するのはもちろん〝対物ライフルEcho〟一撃の火力と言えばこれになるだろう、遺跡にも被害が行きそうだが気にしない。

爆発物を使ってもよかったが相手は一体だけなのでそこまでしなくてもいいかなって感じだ。


丁度いい高さにある遺跡の瓦礫の一部に銃身を乗せて膝立ちになり〝対物ライフルEcho〟を構える。

『ゴーレム』が埋め込まれている遺跡の壁までの距離は30メートルほど、スコープを軽く調整して狙いやすくする。


【イーグルアイ】で見える『ゴーレム』は1体だけ、恐らくあれが門番代わりなんだろう。

ああやって隠れているという事は、慎重に近づいてきた誰かさんをいきなり攻撃したりするのかな。


『ゴーレム』の上半身あたりを狙い〝対物ライフルEcho〟を撃つ。


「お~流石、対物」


放たれた弾丸が狙い通り『ゴーレム』の上半身に当たるとそのまま粉砕していき向こう側にある遺跡の壁も破壊していった。

ちょっと予想以上に破壊しすぎだがその辺はさすが対物ライフルというところか。


『ゴーレム』も今の一撃で倒せたのか【気配探知】にも【イーグルアイ】にも反応が無い。

息を整えてから〝対物ライフルEcho〟を【空間庫】へとしまっておく。


一応【気配探知】と【イーグルアイ】を使いつつ遺跡へと近づいていくが音で寄ってきた追加の敵はいなさそうだ。

粉砕された『ゴーレム』をGPに変換する、8000GP。バラバラだったから仕方ない。


『ゴーレム』についていた苔ごとGPにしたのだが、これって苔も多少売値に関係しているんだろうか?

そんな事を考えつつも〝アサルトライフルEcho〟を構えゆっくりと遺跡内に入っていく、魔物がいない事は確定しているが念のためだ。


遺跡内は暗くてよく見えないが見た目的には何かの台っぽい物がいくつもあった、どれも石で出来ていて苔が生えている。


「あれを使うか」


【空間庫】内から細長い袋を取り出し開けていく、中から出てきたのは中に液体の入った細長い棒。


みなさんご存じ〝ケミカルライト〟だ。


1つ10GPと【GunSHOP】の消耗品の欄にずっと前からあったが使う機会が無くて今まで死蔵していた。

パキッと折って何個も投げていい感じに光源にしていく。


「結構明るいんだなぁ」


夏のお祭りなどでみるちゃっちい感じではなくしっかりとした〝ケミカルライト〟なのでかなり明るい。

そして安心して欲しいのだが効果時間が終わればこの〝ケミカルライト〟は自然消滅する安心設計だ。


明るくなった遺跡内を改めて見まわすとここがそこまで大きくない部屋の中だという事がわかる。

そして一番奥にはお目当ての宝箱。


「さて、どうするか」


ここにきてあまり出番の無かった【罠感知の指輪】がびんびんに反応している、正直ここにくるまでまともに罠を見てこなかったのでどうするべきか迷っている。


鑑定とかできればどんな罠の種類かとか分かるんだろうけど。


宝箱の罠の種類は豊富でぱっと見で分かる事は少ない、だけれどもそれでもわかる事はある。

まず宝箱の周囲に穴だったり余計な建造物が無いので、箱を開けた瞬間に槍がふってきたりそういった類の罠ではない事が分かる。


これで宝箱の罠が箱から何かが飛び出してくる系の物という事が確定した。

毒針か煙系か。


宝箱の中には開けた瞬間に転移が発動するタイプがあるが、ここではでない。

ああいったタイプの罠はもっとダンジョンの階層数が多い所でないとでない罠タイプだ。


ではどうするかというと、一度遺跡外に出て入口から〝ショットガンEcho〟を構える。弾丸はSlug弾だ。


宝箱の中身を傷つけないように蓋の部分を狙って………


「よし、いい感じ」


Slug弾が宝箱の上蓋の部分を吹き飛ばし箱から黄色い煙がボワッと溢れる。

どうやら煙系の罠だったようだ、なんの毒かは分からないけれど色的には非致死性の麻痺系っぽい。


煙が風に流されていくのを少しの間眺め完全に消えてから宝箱へと近づく。


「これは布?」


宝箱に入っていたのは黒い布だ、多分これは魔布と言われるやつだと思う。

防具を作る時に一緒に織り込む事で性能を上げるとかなんとか、詳しい事は知らないが需要の無くならない素材なので安定して売れる物だ。


これはダンジョン協会へ売りに出そう、GPは魔物素材だけで間に合ってるし何でもかんでもGPにする必要もないだろう。


魔布を【空間庫】へと入れて遺跡を出ようと歩き出す。


「風の音?」


それは微かに聞こえてくる音だった、ひゅーっという隙間風の小さな音にたまたま気づいた。


「【風読み】」


スキルを使うと視界に風の流れが見えるようになる、風の流れを辿ってどこに隙間風が発生しているのかを見ていく。


「ふむふむ、ここか」


宝箱が置いてあった台座の奥の地面に風が流れて行ってるのが【風読み】で分かる。


「遺跡で隙間風の流れる地面………隠し部屋だな!爆破だ!」


なぜ爆破なのか、もちろん理由はある。

地面にある隠し部屋の開け方なんて知らないから壊した方が早い、中がどうなっているかしらないから何とも言えないがまぁ物は試しだ。


取り出したるはC4爆弾、これまたあまり登場場面の無かった物だ。魔物相手なら投げ込める手榴弾のが手軽なのでそればっかりだった。

粘土みたいなやつを隙間風が入りこんでいる地面へと設置していく、取り合えず1つにしておいて信管を差し込む。


今度は遺跡の入り口ではなくそこからさらに離れる、C4は【ドワーフ鉱山】でミスリル採掘以来使っていないので爆発がどれだけの被害を及ぼすかが正確にはわからない。


「え~っと、確かこれをこうして………」


使用したC4に対応している発火装置を持ち、後はボタンをポチっとするだけの状態にする。


「よし、爆破!」


装置をポチっと押すと遺跡内から爆発音が聞こえてきて、続いてガラガラと建物の崩れる音が聞こえてくる。


「これちょっとやばいか?」


思ったより爆発音が大きくびっくりして少し冷静になった、それにこの音で魔物が寄ってくるかもしれない暫く【気配探知】で用心しておこう。


5分………10分……30分と茂みで隠れていたが魔物がくることは無かった。

ちょっとテンションが上がっちゃって爆発物を使っちゃったが今後は気をつけないと。


改めて遺跡内に入りC4で爆破した場所を見に行く、爆発の影響であちこちにおいた〝ケミカルライト〟が飛んで行ってしまったのでもう一度置きなおしていく。


「やっぱり地下があったのか」


爆破跡にいくとそこには地下へと続く階段が出てきていた、〝ケミカルライト〟を数本投げ込んで明かりを確保する。


地下は狭く上から覗くと宝箱が見える。


「隠し部屋に宝箱、これは期待できるな」


地下に降りていき宝箱の前にたつが【罠感知の指輪】には何の反応もない、どうやらこの宝箱に罠はないようだ。

罠がないなら何も気にする必要が無いそのまま宝箱を開けていく。


「これはダガー?投げナイフっぽいな」


宝箱に入っていたのは小さ目のナイフ、短剣と呼ぶには小さくペーパーナイフと言うには大きい。


「これも売るか」


魔布と一緒にこれもダンジョン協会へと売ろう。宝箱からでた武器だしもしかしたらいい効果が付いていて高く売れるかも?


投げナイフを【空間庫】内へと仕舞って今度こそ遺跡探索を終える、今度は隙間風の音も聞こえない。


「隠し部屋が他の遺跡にもあるのか調べてみたいな」


残りの日数で見つけれたらラッキーで行くか。






◇  ◇  ◇  ◇






「お~下層でもいい景色」


あっち行ったりこっち行ったり、道中魔物を狩りつつも進む事数刻。

今いるのは森の中の崖になっている場所、視線をおろせば森が広がっており遠くを見れば海が見える。


今日はここをキャンプ地とするか。


「何か揺れてる?ダンジョンで地震?」


景色をボーっと眺めていると、足元が揺れている感じがする。


「神薙さん!」


「駿河さん?どうかしたんですか?」


日中は基本姿を見せない駿河さんが慌てた様子でやってきた。


「注意してください、出てきますよ」


「出てくる?何が?」


「あれです」


慌てた様子でやってきた駿河さんが指さす方を見るがそこには海しかみえないが………


「ん?んー?なんだあれ!?」


指さされた海を眺めていると木々がざわざわとしだし魔物が何かから逃げる様ように走り出していく。

暫く見ていると海が割れ、何かが出てきた。


茶黒の肌に4つ足でその姿はワニのようにも見える、大きな角に小さな翼。現れたのは見た目的には『グランドドラゴン』だ。

だが、その大きさと形がおかしい。


俺の目がおかしくなったのでなければあの『グランドドラゴン』はビルの様にでかいし今まで見てきたやつにはない角や翼がある。

足元に見える木が物凄く小さい。


あまりの大きさに遠近感が狂いそうだ。


「駿河さん、あれは………?」


「あれは【ダンジョンウォーカー】です」


「あれが【ダンジョンウォーカー】?」


【ダンジョンウォーカー】ってあんなのもいるのか?


「えぇ、あれはネームドが付いている【ダンジョンウォーカー】の『踏み均す者』というやつよ」


「ネームド?って何ですか?」


「魔物が異常進化して強くなり討伐する事が出来ず、その強さからダンジョン協会で危険な魔物として名前が付けられたものよ」


「異常進化………」


「さらにあの『踏み均す者』は厄介な事に【ダンジョンウォーカー】でもあるわ、その強さは普通のネームドよりもさらに強いとされているわ」


「へぇ、誰か倒そうとしたりしないんですか?」


「したけど成功してないわね」


「誰も倒せないの?」


「いいえ、Aランクが数十人もいれば倒せるでしょうね。だけれど無理に倒す必要もないから倒されていないだけね」


「倒す必要が無いんですか?」


「えぇ、【ダンジョンウォーカー】といってもここは広いエリアだし、あの『踏み均す者』もわざわざ小さい人間なんて狙わないからね。積極的に倒す理由がないだけよ」


「ふぅん、でもああいった魔物ってなんかレアな素材っぽそうだし倒す人出てきそうだけど」


「そうねぇ、レアな魔物と言ってもBランクダンジョンの魔物だから高ランク探索者がわざわざ倒しには来ないし、あの素材を欲しがるランク帯だと倒すのはほぼ無理だし。まぁそんな感じね」


「なるほど?」


ネームドで【ダンジョンウォーカー】である『グランドドラゴン』の『踏み均す者』は倒したい人達はレベル的にまだ倒せなくて、倒せるレベルになる頃にはあのランクの素材が欲しい訳でもなく。

なんとも微妙なのか。


そんな会話をしている中でも『踏み均す者』はずしんずしんと大きな音を立てて地面を揺らし森を歩いていく。


「誰も倒さないなら倒してもいいんだよね?」


「えっ?」


駿河さんが「話し聞いてました?」って顔をしているが知らない。

遺跡を見つけたし試験内容である『ワイバーン』も倒した。なら残りの日数であのネームドを倒すのをチャレンジしてみよう。


使ってみたいのもあるしね。






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