第21話 【悲愴の洋館】

21.【悲愴の洋館】









っといわけでやってきました【悲愴の洋館】ダンジョンのある河合支部へ、ここのダンジョンは入り方が特殊で中へ入るには転移陣を使う必要がある。


転移陣、ご想像の通りファンタジー物語でよくあるアレだ。魔法陣が書かれた二つの場所をつなげて転移してくれる夢みたいな装置だ。


この転移陣を研究して作る事が出来ないのかってやっているらしいが今のところ出来ていないみたいだ。

収納袋みたいな不思議な物も作れているし時間の問題だとは思うが、もし転移陣が作れるようになったら楽しみだ。


因みにこの転移陣、SF物でよくあるどのタイプのワープかテレポートかって話しだが、研究によるとこれは空間事入れ替えて転移しているタイプらしい。

つまり転移中に転移陣からはみ出ると………



そんな事を考えながら支部内に入っていき、活動記録の登録をして転移陣のある方へ向かう。

周りには同じ【悲愴の洋館】ダンジョンへ向かうと思われる探索者のパーティーが何組もいる、中には俺と同じソロの人もいるにはいるが数人だけだ。

俺もパーティーを組みたいが持っているスキルを考えると信用出来る人じゃないと怖い。

信用とか信頼って少しずつ培っていくものだろう?って意見には賛成だが、そんな人間性ガチャはしたくない。



「次の方どうぞー」


気が付くと俺の前にいたパーティーが転移していったので順番がまわってきた、ここの転移陣は使う際に注意が必要だからダンジョン協会の職員が見張りとして立っている。


「お一人ですか?」


「はい」


「それでは転移陣までお進みください」


転移陣のある部屋へ入ると中には地面いっぱいに魔法陣が広がっており、10人ぐらいまでなら同時に乗れそうだ。

魔法陣にはそれっぽい文字や線などが描かれており、まさにそれっぽい感じ。


「それでは転移陣を起動します、お気をつけていってらっしゃーい」


遊園地のキャストのような掛け声を聞きながら転移陣が光り出し一瞬視界が白く染まる。


「まぶしっ!っていうまについたか」


一瞬何も見えなくなったがすぐに視界は晴れて【悲愴の洋館】ダンジョンの中へとついていた。


「ここが【悲愴の洋館】か………ちょっと怖いな」


目の前に広がるのは歩くと体重をふわっと受け止めてくれそうなふかふかの赤い絨毯にキラキラと輝くシャンデリア、正面には大きな階段が見える。

その全てが通常よりも少し大き目に作られていて知らない人が見れば巨人の住処かと思うほどだ。


【悲愴の洋館】ダンジョンが大き目に作られているのはここに出てくる魔物の為だ。


「早速きたか」


ふかふかの絨毯でも消せない程の大きな足音に鎧の擦れる音。通路の向こう側から見えてきたのは大きなフルプレートメイルの鎧を着た騎士だ、その大きさは2メートルか3メートルか、縦にも大きいが横にも大きい。


あれは【悲愴の洋館】ダンジョンの通路を徘徊している魔物『彷徨う騎士』だ。


まずはどんなものかいつもの〝ショットガン〟にSlug弾を込めた物で撃ってみる。


「───っ!?」


〝ショットガン〟を撃つ音が響き、表現のしにくい声を出して『彷徨う騎士』が大きくよろめく。

フルプレートメイルの鎧が大きくへこんでいるが倒すまでには至らない。


「流石にDランクになってくると一撃で倒すのは無理か、そして血がきもい」


鎧のへこんでひび割れた部分から青色の血が流れている。


追加で2~3発Slug弾を撃ちこむ、べこっべこっと音を立てて『彷徨う騎士』の鎧がへこんでいき5発目でやっとフルプレートメイルの鎧を弾が貫通した。


「硬いなぁ」


〝ショットガン〟に弾を込めつつ倒れて動かない『彷徨う騎士』に近づいていく。

Slug弾が貫通した『彷徨う騎士』は流石に生きていられないのか微動だにせず死んでいるようだ。


青い血を流して死んでいる魔物である『彷徨う騎士』。一体どんな見た目をしているのか気になって見てみたいが、ある種この魔物は都市伝説を持っており。その中身を見た者はSAN値が削られて発狂してしまうとかなんとか、ネットでここの場所を調べたときにでてきた情報だ。


「ゴクッ………大人しくGPに変えよ……」


都市伝説だとは分かっているし、これをダンジョン協会に売却するんだから必然的に中身は調べられているはずだ。

それでも見なくていい物は見ない方がいい。


【GunSHOP】スキルのGP売却画面を開き『彷徨う騎士』をにゅるんと入れていく。


「おぉ?85GP?高くないか?」


Eランクダンジョン【骨骨の洞窟】のスケルトンは骨と魔石合わせて12GPとかだったはずだ。

それがDランクダンジョンになるといきなりほぼ7倍になるとか美味しい。


「これはボスとかにも期待できそうだなってもう次が来た、立ち止まるのはよくない感じか?」


遠くからさっきと同じ足音が聞こえてくる。


『彷徨う騎士』はその性質上ダンジョン内を徘徊している、そう考えると一匹倒した後もゆっくりしてられない。

油断しないようにしないと。


「【マハト】」


次は【銃術】のスキルアーツを使って試してみる。〝ショットガン〟が淡く光りバフ効果がかかったことが分かる。


「───!!」


『彷徨う騎士』がこちらに気づきその鎧をがっしゃんがっしゃん音を立てて走ってくる。


まずは一発。


「───………」


「やっぱり強い」


【マハト】を使った〝ショットガン〟の一発は、一撃で『彷徨う騎士』の体を貫通してそのまま倒した。


倒した『彷徨う騎士』を【GunSHOP】スキルでGPに変えて止まらないように進む、歩きながらも〝ショットガン〟にSlug弾をリロードしておく。


「じゃんじゃんいこー」






◇  ◇  ◇  ◇






「ここは炊事場か?それにしては机とか椅子がいっぱいあるな」


【悲愴の洋館】の中を歩き回り『彷徨う騎士』を【マハト】を使い倒していく。その道中で部屋を見つけたので中へ入ってみる。


一応入るまえに【気配感知】で中に何もいない事を確認しているので、扉をあけたら魔物がドーンとはならない。


「何かないかな~あっ宝箱だ」


今までボスを倒した時しかみなかった宝箱が普通の部屋に落ちている、怪しさ満点だ。

無言で〝ショットガン〟を宝箱に撃つ、バコォンと派手な音を立てて宝箱の上蓋がはじけ飛んだのが見える。


突然奇行に走ったように見えるかもしれないが、これは以前から考えていた罠があるかもしれない宝箱を見つけた場合の開け方だ。


基本的にボス部屋で出るご褒美的な宝箱は罠なんてついていないが、こういった普通に置いてある宝箱は罠がついている事がたまにある。

そんな宝箱のために【罠感知】や【罠解除】などのスキルがあるにはあるが使わなくても宝箱を開ける事はできる、今俺がしたように何かしらの遠距離攻撃で破壊してしまう事だ。


もちろん宝箱に対して攻撃を行う以上、中身が壊れない保証は出来ないが専用のスキルを持っていない以上これが最適解だ。


あと単純に〝ショットガン〟で撃って壊すのがめんどくさくなくて楽しそうだから一度やってみたかったてのもある。


「中身はー銀のナイフ?」


宝箱の中身は食事の際にステーキとかを切る時に使う食器のナイフの形をした物だった。これってテーブルナイフって言うんだっけ?


「武器でもないし、防具でもないし、薬でもないし。なんで食器?」


なぜ食器のナイフなのか分からないが特殊な効果でもついているんだろうか?

取り合えず【GunSHOP】スキルでGPに変えてみる。


「450GP!?たかいな!」


もしかしてこのナイフ大当たりか!?めちゃくちゃ高く売れるんだけど!

もっと欲しいなこれ。


「何だこれ?日記?ってこれもしかして」


他に宝箱がないか探していると机の上に一冊の日記が置いてあるのを見つけた。

【悲愴の洋館】ダンジョンを調べた際ここの特徴の一つにこんなものがあった。



【悲愴の洋館】では日記にあるストーリーによって出てくるボスが違うという物。



そもそもここの【悲愴の洋館】ダンジョンはいくつか特殊で特徴的な部分がある。


一つはここがパーティー毎に生成されるダンジョンだという事。

つまりここのダンジョンには今現在俺しかいない、だから派手に〝ショットガン〟を撃ちまくれる。


二つ目は、このダンジョンから帰るには入る時と同じ様に転移陣を探す必要がある事。


三つ目はこのダンジョンが【悲愴の洋館】と呼ばれるようになった原因。

それが今手の中にある日記の中身にある。



<とあるメイドの日記>


〇月××日


ご主人様のご子息と奥様が亡くなってから半年が経ちました、あれだけ賑やかだった屋敷が今では見る影もありません。

ご主人様はあの事件から気力を無くしてしまい、今では食事の際にそのお姿を見かけるぐらいでほとんど姿を見せません。

しかしそれも無理はありません、あのような悲惨な事件があったのですから。



〇月×△日


突然ご主人様がお元気になられ、なにやら精力的に物事に取り込んでおります。

しかしその様子が………とても言いづらいのですが何かにとり憑かれているように見えて不気味なのです。

夜中に時々ご主人様の笑い声も聞こえますし、何やら不穏な空気が流れております。



〇〇月△日


ある日ご主人様が屋敷の全員を呼び出し何やら薬を配り始めました。

いつもよく働いてくれているみんなへの労いとのことですが、正直ちょっと怖いです。しかしご主人様のご厚意です、断る事はできません。みんな不穏な空気を感じながらもそれぞれ薬を飲み込んでいきました。



〇〇月×△日


最近とても気分がいいです!暗かった屋敷も賑やかになり一緒に働いている同僚にも笑顔がいっぱいです!これもご主人様がくれた薬のおかげでしょうか?今は何でも楽しい気分です!



〇〇月△×日


きょ、きょうは。ごしゅじじじじんさまが、あたらしい、い、い、いくすりをくださrrrrr







「こわっ」


日記はまだ続いているようだったが気持ち悪くなってパタンと閉じた、とてもじゃないが最後までみる勇気はない。


これが【悲愴の洋館】と呼ばれるようになった原因で、どこかの部屋に日記がありそのストーリーによってボスが何か決まるという物。


今回のは子供と奥さんを無くした屋敷の主人が狂ってマッドサイエンティストになるストーリー。


他にも息子が狂うパターンとか奥さんがーとか、息子と奥さんが死ぬ理由にも色々あったりバリエーションがあるらしい。


そのストーリーの中身がどれも悲しく悲惨で見ていられない事から【悲愴の洋館】という名前がついた。



「気を取り直していくか………」


ちょっと気分が落ち込んじゃったが気を取り直してダンジョン攻略を進める事にする。


「銀のテーブルナイフもっとないかなー」





◇  ◇  ◇  ◇





「あっ………」


『彷徨う騎士』を【マハト】を使い倒しながら進んでいるとここで別の魔物が現れた。

クラシカルなメイド服を身にまとい、その手には給仕の際に使うのかおぼんを持っている。肌の色は紫で明らかに人間の肌ではないがその姿形は人その者だ。

一応事前に出る事は知っていたがあれは『狂人メイド』か。


「さっきの日記見た後だと倒しにくいよ………」


あれは明らかにさっきの日記を書いていた張本人のメイドかその同僚だろう、あんなものを見た後だと物凄く倒しづらい。


「ぎゅわぉぉぉぉっぉぉ!」


「こわー!」


「ぎゅううううう!」


咄嗟に撃った〝ショットガン〟の一撃が『狂人メイド』の頭にあたり上半分を吹き飛ばしていく。

それでも気にした様子もなくちょっとよろめいた程度ですぐに体勢を立て直し再び走ってきた。


一発二発と追加で〝ショットガン〟を撃つ、今度は動きを止める為に足狙いだ。


「ぎゅぉう!」


一体どこからそんな声が出ているのか、不思議な叫び声を出しつつ足を無くしても這って近寄ってくる。


「うーん、これはホラーだな」


トドメに残っていた頭を吹き飛ばしたら静かになった。


「消えるのか………」


しゅわぁぁぁっと音を立てて『狂人メイド』の体が泡になって消えていった、残ったのはクラシカルなメイド服とおぼんと魔石だけだ。


このメイド服が死体の代わりなのかな?

服とおぼんと魔石を【GunSHOP】スキルでGPに変えていく。


「60GPか『彷徨う騎士』のが美味しいな」


全部で60GPなので一匹で85GPになる『彷徨う騎士』を倒すのが美味しい。

気分的にも『彷徨う騎士』のが倒しやすい。


「まぁ気にしすぎるのもダメか」


『狂人メイド』も同じ魔物だ、気にしすぎないようにした方がいいのかもしれない。


「おっしゃーもっとGP稼ぐぞー!」


GP稼いでボスも倒そう!









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