第17話 探索者交流会 #3
17.探索者交流会 #3
探索者交流会2日目。昨日と同じ時間ぐらいにダンジョン協会の会議室までやってきた、昨日と同じように新井さんが先に待っていたので挨拶をして。少し雑談をしていると雪白姉妹がきて、さらに少しすると教官役である佐々野さんがやってきた。
集まってからすぐに【週末の夜】ダンジョンへと行くことになった。更衣室で装備を整えてダンジョンへ入ると教官役の佐々野さんはやる事がないのか「今日は新井がリーダーだ」とだけ言って後ろへと下がっていった。
どうやら毎日別の人をリーダーにして様子を見るようだ。
リーダーに指名された新井さんは困惑しながらも了承をして、それからは昨日と変わらない。雪白玲奈さんを先頭に新井さん雪白香奈さん俺の順番で並んで歩くだけだ。
昨日の打ち上げだが、新井さんが連れて行ってくれたのは個人でやっているちょっとしたおしゃれなお店だった、新井さんはたまに来る常連らしい。
カウンター席が5つに二人掛けのテーブル席が4つほどのこじんまりとしたお店だったが雰囲気はよかった。
普段食べないようなパスタにちょっとした一品もの。後はよく食べる唐揚げなど、どの料理もおいしかった。話しを聞いたところシェフとして修業をしていた経験があるらしく料理がおいしいのも納得の理由だった。
ちなみに全員もちろんジュースで乾杯だ。新井さんは飲める年齢だが俺達が高校生だからと配慮して自分もジュースを飲んでいた。
「ムンちゃん!」
「きゅ!」
「はぁっ!」
パシュパシュ
「【アイスニードル】!!」
「グァッガッ……」
何て言うか………うん、みんなはさそれぞれ戦う時に気合を入れて声を出してるんだけれど、俺って銃を撃つだけじゃん?声が出ようもないからなんかちょっと疎外感を感じるって言うか。逆に恥ずかしい。
まぁそんな感じで今日も無事にオークを倒せた。
少しづつみんなの動きがよくなってきている気がするのは気のせいではないと思う。連携の事を理解し始めたってのもあるだろうけど、一番はレベルが上がった事によるステータスの伸びだと思う。
やっぱりというか何というか本当なら俺達の適正ランクはDランクよりも一つか二つしたぐらいがちょうどいいはずだ、だけれど今は4人いて教官役という保険のBランクもいる事による心の余裕があり、かなり戦いやすい。
そして格上と戦っている訳だからその分レベルも上がりやすい。
ダンジョン内での魔物を倒した際の経験値配分だが、基本的には戦闘に参加している人達全員にそれぞれ振り分けられる。なので戦闘に参加していない佐々野さんには経験値が振り分けられていないと思われる。
誰がどれだけ頑張ったか?や、誰がどれだけ魔物の体力を削ったか?や、味方をサポートしたなど、数値化する事は出来ないが多分そういった戦闘評価項目?みたいな物がありそれによって経験値配分が変わると思われる。
思われるって言うのは確かめようがない事なので誰も気にしていないから多分そうだろうけど知ったこっちゃないって感じだからだ。
それによっぽどサボりがひどくなければPT内で同じ魔物を同じだけ倒しているのにレベル差が出来ちゃったって事は起こらない。
そしてそのよっぽどな事が起きたことがあるから逆説的に多分そうなんだろうって話しになっている。
そして、そんな格上との戦闘をしている現在の俺のレベルはこんな感じだ。
名前:神薙 響 年齢:15
レベル:11 → 15
STR:20 → 25
VIT:10
AGI:20 → 30
DEX:95 → 167
INT:8
MND:7
≪スキル≫
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:2 ▽
<上級>【空間庫】Lv:2 → 3
<スキルリンク>【野営地】Lv:1
<初級>【射撃】Lv:9 → <中級>【射撃】Lv:3
<初級>【銃術】Lv:1 → 2
まずは、レベルが15になった。【骨骨の洞窟】でスケルトン将軍を周回したのが大きいのかもしれない。GPもあそこで結構溜まったしね。
そしてDEX器用値のステータスがめちゃくちゃ伸びた。こんだけステータス伸びてどれだけ器用になっちゃうんだろうって感じだが………
器用値が伸びたことで今のところ一番感じるのは戦闘面で、射撃を外す事が無くなった。今でも訓練用の銃を使って毎日練習しているのでわかるのだが〝訓練用非殺傷ハンドガン〟で25メートル先に置いた的の10点に全てあてれるぐらいには器用になった。
ただ、それは動いていない的って注釈がつくが。
次に【空間庫】がレベル3になった。この間2になったところだけれど使う事が多いからかレベルが上がりやすいみたいだ。
大きさは調べた所によると15畳程になった。けれども………今でもいっぱいになった事がないので多分この先もいっぱいになることは無いだろう、それでも便利だからレベルを上げていくつもりだが。
そして次に、<初級>【射撃】スキルがレベル10になってそのまま<中級>【射撃】スキルへと進化した。進化する条件があるのか分からないが、多分だけれど器用値のステータスが一定値以上あるとかそんなんだろう多分。
調べてる人がいないかな?ってネットで調べてみたがそれっぽい検証をしている人はいたが検証数が少なすぎて特定には至っていなかった。なのでまぁ多分そうだろうって感じだ。
次に【銃術】スキルがレベル2になった事により【マハト】のバフ時間が2分に延びた。これは素直にうれしかったが2分に延びた所で戦闘自体はもっと短い時間で終わってしまうので効果時間いっぱい使う事はない。
スキルをそれなりに覚えてレベルも上がってきて、出来る事が増えてきて楽しい。この探索者交流会が終わったらソロでDランク行ってみようかな?
「神薙くん?どうかしましたか?」
「あ、いや。何でもないです。ちょっと考えてました」
ちょっと考え込み過ぎてたか、新井さんがこちらを気遣って声をかけてきてくれた。
「何を考えていたんです?」
「あー、今日も打ち上げに行くのかな?って。昨日行ったところが美味しかったので」
「はははっ、みんなが良ければ今日もあそこへ行きましょうか」
おもには別の事を考えていたが、打ち上げでいったお店の事を頭の片隅で考えていたのも本当なのでちょっとごまかしてしまった。
そんな感じで2日目は特に何もなく普通に過ぎていった。
倒したオークは合計15匹、昨日より10匹も多く倒せた。連携がよくなってきて一匹にかかる時間が少なくなったのとオークを釣りだす事をし始めたからだ。
釣り、海でやるアレでは無くてゲームをする人ならわかるかもしれないが遠くにいる敵に攻撃を加えてPTの位置まで持ってくる行為を釣りという。
昨日も言ったがそもそもオークは草食だ、何もしなければ向こうから襲ってはこないので俺が銃でちょっかいをかけて釣りだすってわけだ。そのおかげで狩り効率が良くなった。
「お疲れ様、これが今日の分だ」
佐々野さんがそう言って昨日と同じ様に封筒に入ったお金を渡してきた。今日の売却額はオーク15体で36万、4人で割って一人9万だ。
活動時間も昨日と同じで昼から夕方までの5時間なのでそれで9万ならめちゃくちゃおいしい、佐々野さんの収納袋で全部持ち帰れてるからこそのこれだけの売り上げだがおいしい。
そういえば収納袋は個人の持ち物なの?って佐々野さんに聞いてみたが、どうやら収納袋はクランの持ち物らしい、佐々野さんの所属する【朧月】クランではいくつかの収納袋を所有しておりその中の一つを今回の探索者交流会の為に持って来てくれたらしい。
なんでも、PTで活動しているとおのずと収納袋なりなんなりで倒した魔物を持ち帰る事になるだろうからその予習というか、収納袋があったらこれだけ稼げるんですよって事を教えてくれているらしい。
確かに半日で9万はおいしいし、しかもこれが上限って訳でもない。まだまだ稼げそうな感じがする。
これはますます【空間庫】を人前で使えなくなってきた。
◇ ◇ ◇ ◇
そして3日目も特に何もなく過ぎていき、今日は4日目。このPTでの探索者交流会も今日を含めて後二日でお終いだ。
昨日倒したオークは全部で23体、かなり多くなってきた。みんなのレベルが日に日に上がっていきどんどん楽に倒せるようになってきている。
しかも雪白玲奈さんは新しい【剣術】アーツに【体術】アーツを覚えたみたいでそれもあってさらに戦闘が楽になった。
雪白香奈さんの方も新しい魔法を覚えたみたいだし、新井さんも【棒術】のアーツを覚えて、召喚獣であるムンちゃんも新しい【狐魔法】を覚えたみたいだ。
みんな強くなってきてどんどん楽に倒せるようになっていく。今日あたり30匹ぐらい倒せるようになるんじゃないかな?と思っている。
「【バイタリティアップセカンド】!くらえっ!」
「ガァッ!」
「【アイスランス】!」
「ガガッ………」
雪白玲奈さんの新しいアーツ【バイタリティアップセカンド】で動きを止められ、雪白香奈さんの新しい魔法【アイスランス】で頭を貫かれオークが倒れた。
新しい技を使う事により二人でオークを倒せるようにまでなった。
【バイタリティアップセカンド】はその名前の通り【バイタリティアップ】の上位版だ、強化率が違うみたいで【バイタリティアップ】では止められていなかったオークの動きを完全に止める事が出来ている。
【アイスランス】は氷で出来た太い槍を飛ばす魔法でその威力は凄まじい、オークの頭がはじけ飛ぶぐらいだったからな。【アイスニードル】の時も十分威力があってオークを倒せていたが、時々決めきれずに追加で魔法を撃っていたし。それが魔法一発で済むようになってかなり楽になったと思う。
「ムンちゃん!」
「きゅきゅ!」
次のオークを釣りだして持っていくと、今度は新井さんとムンちゃんの出番だ。ムンちゃんの新しい【狐魔法】の【狐雷】をオークに使う、するとオークは雷の副次効果で体がしびれて動けなくなってしまう。
その隙をすかさず新井さんが【棒術】のアーツスキルである【ヘヴィアタック】を使いオークの頭を潰す。
武器による攻撃の重量を上げるという、効果としてはシンプルだがその分強い。
「いい感じですね」
「そうだね、戦闘も随分と楽になったもんだ」
戦闘が終わりムンちゃんを抱き上げて撫でている新井さんに近づき話しかける。今はちょうど15時ぐらい、倒したオークは現時点で20匹を超えている。このままいけば今日は30匹ぐらいは倒せそうだ。
因みに今日は俺がリーダーだ、まぁだからと言ってすることに変わりはないんだけれども。
「お二人は大丈夫ですか?」
リーダーとしての役割があるとすればPTメンバーに注意を払い、休憩するタイミングを見極めたりするぐらいだ。特にPT内に女性がいるのでより注意深くする必要があるかもしれない。
おもにトイレ問題を気を付けないといけない、男なら言っちゃ悪いけどその辺で出来てしまう。
だけれど女性はそうはいかない、そこで登場するのが【ダンジョン内用簡易トイレ】だ、キャンプで使うテントの様に骨組みを組み立てて布を取り付け目隠しを作り、そこに使い捨ての袋を置いてトイレをする。
布で囲われて周りが見えなくて危なそうに見えるが、そういう時は【近づくと叫ぶワン】を使う。これは防犯ブザーみたいな物でトイレの周りにセットして誰かが近づいたら大きな音を立てて知らせてくれるって品物だ。トイレで使う他、ダンジョン内での野営時にも使える便利な道具だ。
使い捨ての袋はそのままさらに専用の袋に入れて持ち帰る事になるが、袋事体が外へと臭いを漏らさないとか破れる事は無いなどの安全設計になっているが、一応さらに専用の袋にいれて持ち帰る。
ダンジョン協会支部には持ち帰ったその袋を捨てる専用のごみ箱があるので、持ち帰ると言ってもそこまでだ。
「大丈夫よ」
「だ、大丈夫です」
「わかりました、それじゃぁ次に行きましょう………ん?何だあれ」
次のオークを釣りに行こうと視線を森の方に向けると何かでかいのが見える。明らかにサイズがおかしいダンジョン内の森の木より上に顔が見える。
「あれはっ………【ダンジョンウォーカー】かっ!」
佐々野さんが後ろでそう叫ぶ声が聞こえた。
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