第18話 【ダンジョンウォーカー】
4/22 【不屈】スキルが作者の意図に合っていなかったので【堅忍不抜】に変更しました。
18.【ダンジョンウォーカー】
「【ダンジョンウォーカー】ですか?」
確か【ダンジョンウォーカー】ってダンジョン内を自由に歩き回る特殊な魔物だったっけ?ネットではそう書いていたはず。
「あぁ、【ダンジョンウォーカー】はダンジョン内を自由に移動する特殊な魔物でな、そのほとんどが最下層の魔物なんだが………通常ならこんな浅い階層にくるまでに発見されてもっと早くに情報が出るはずなんだが、どうなっているんだ?ここは1階層だぞ!?」
ダンジョン内に生えている木はそのほとんどが5~6メートルほどの大きさの木だ。それより大きいあの【ダンジョンウォーカー】は多分10メートルぐらいあるんじゃないか?
「しかも面倒な事にあの【ダンジョンウォーカー】はトロールだぞ………通常、再生能力が厄介なトロールは倒すのにCランクパーティーかBランクが二人は必要だ、それだけでもめんどくさいのに【ダンジョンウォーカー】となった魔物は通常より強い傾向がある。恐らくあのトロールを倒すにはBランクパーティーでないと無理だろう」
パーティーを組む際の人数には上限が無いが平均的には5人ぐらいで組むのが普通だ。なので佐々野さんが言うには、あのトロールを倒すにはBランクが5人は必要となる。
トロールの見た目はぶよぶよとした大きな体に緑色の肌、頭は禿げ上がっていて小さな角が生えている。
「取り合えず先にダンジョン協会へ連絡を済ませる、お前たちは先に避難するんだ。ここに居ては危ない」
そう言って佐々野さんは指輪型ライセンスの画面を表示させ、ダンジョン協会へと連絡をとっている。
ぴぴぴっぴぴぴっ『緊急連絡、緊急連絡!【週末の夜】ダンジョンで【ダンジョンウォーカー】が確認されました。該当地域にいるCランク以下の探索者は避難してください』
「うおっ、びっくりした。緊急連絡?」
突然指輪型ライセンスから音がなり画面が表示される。恐らく佐々野さんがダンジョン協会へ連絡した結果これが鳴ったんだと思うが、突然音がなるとびっくりする。
「これで後は救援が来るまであいつをここで引き付けておくだけだ。早くお前たちは避難しろ」
「香奈行くわよ」
「う、うん」
雪白姉妹は大人しく避難する事に決めたのかダンジョンの出口へと歩き出した。
「新井と神薙も早く避難しろよ!【獣化】!!」
佐々野さんが【獣化】と叫ぶと体の筋肉がもりあがり、灰色の毛が生えてきて見た目が完全に獣になっていった。頭からは耳が生えてきて、腰あたりから尻尾も生えてきた。顔はそのまま人間なのでファンタジーなどでよくある獣人っぽい見た目になっている。
見た感じ狼か……?人狼って感じだな、彼女が武器を持たず無手だったのは【獣化】スキルを持っていたからなのか。
変身し終わった佐々野さんは返事も聞かずにトロールを倒しに行ってしまった。ネット情報しか知らないのでわからなかったが、あれだけ慌てているって事は【ダンジョンウォーカー】はそれだけ放置できないやつって事なのかな?
「どうしましょうか?」
「言われた通りに避難するしかなさそうですね、ここに残ってもやれることは無さそうですし」
トロールの【ダンジョンウォーカー】と戦っている佐々野さんの方から工事現場並みの大きな音が聞こえてくる。およそ人が戦っている音には聞こえない、ドカーンやらガガガガガといったどうやったらそんな音が鳴るんだ?って感じの音が聞こえる。
「あっ、やばくないか?あれ」
トロールの一撃を避け損ねた佐々野さんが大きく吹き飛ばされるのが見えた。木を何本もなぎ倒しながらトロールから数メートル離れた所でぐったりとして動かない。
まだ戦闘が始まって数分しかたっていない、救援が来るにはまだ時間がかかるだろう。
「助けましょう、さすがに見殺しにはできないです」
「そうだね………せめて佐々野さんを引きずって逃げようか」
今持っている武器は〝アサルトライフル〟に〝ハンドガン〟のみだからちょっと火力に自信がない、あの大きさのトロールを倒すには最低でも〝ショットガン〟が必要だになると思う。最悪【空間庫】から取り出すしかないか?
「俺が銃で注意をひくので新井さん、佐々野さんをお願いできますか?」
「わかりました」
やる事だけを端的に伝えて〝アサルトライフル〟でトロールを狙う。
「ダメか………」
試しに数発撃ってみる、しかし当たっているはずだがトロールは気にした様子もない。ちょっと「ん?」って感じで何か当たったか?みたいな様子は見せるがそれ以上は何も起きない。
新井さんは横から大きくまわっているので〝ショットガン〟を取り出すなら見えていない今のうちだな。
【空間庫】から〝ショットガン〟を取り出し急いでSlug弾に入れ替えていく。
「ガァァァァァァァ!!」
〝ショットガン〟の射撃音が響く、Slug弾を使ってやっと普通のダメ―ジになったのかトロールが痛がっている。
取り合えずこちらに注意を引く事には成功したが、今度は俺が危ないな、トロールがめっちゃこっちに来ている。
ドシンドシンと地響きを立てながらスピードは速くないが少しづつ近づいてきている。
「使うか、【マハト】」
ここのところあまり出番のなかった【銃術】のアーツスキルである【マハト】を使う、これで2分間だが銃の威力が劇的に上がる。
「ガァッ!」
「おぅ、流石に強いけれどそれでも、か」
Slug弾に【マハト】まで使ったが、トロールにはこれでやっと少し大きめの傷跡が出来たぐらいのダメージしか与えられていない。
それでも痛みによってかトロールが足を止めたので、1発2発3発と立て続けに撃っていく。
「ガァッガッ!」
「倒しきれないか……!」
頭を狙って撃ってみるが頭蓋骨が硬いのか倒すにまでは至らない。
「弾がねぇ!買っておくんだったっ!」
Slug弾はあまり使わないので使う時だけ随時買っていたがそれが裏目にでて弾切れを起こした。
慌てて【GunSHOP】スキルでSlug弾を3パックほど買う。目の前に光が収束していき弾が入った箱が現れるので急いで取り出して腰につけているポーチへとSlug弾を入れていく。
そのついでに〝ショットガン〟にもSlug弾を込めていく。
「あぁっ!忙しい!!」
トロールは痛みに耐えながら少しづつこっちに近づいてきているので、俺も少しづつ後退しながら作業を進めていく。こうしている間にもトロールの傷が治っていっている。
新井さんはうまい事佐々野さんの所まで行けたみたいで引きずっているのが遠目に見える。なので後は救援がくるまで耐えるぐらいだが………はたしてうまい事耐えれるか。
「よし、リロード終わり!【マハト】!」
リロードを素早く済ませてからバフスキルをかけなおし、再度撃ち始める。
「ガァッグルルルル」
今度は倒す事では無くて足止めを優先して、トロールの足を狙って撃つ。そのおかげかトロールは完全に動きを止めた。
「神薙君!」
「俺の事はいいですから、先に逃げて下さい!」
「でもっ!」
「大丈夫ですから!足止めだけなら、何とか!」
「くっ、わかった。けど無理はしないようにね!」
「はい!」
「ガッ!」
「俺のGPが先に尽きるか、救援が先か。勝負だな」
◇ ◇ ◇ ◇
「ガッグァァァ!」
戦い始めて10分ほどだろうか、〝ショットガン〟の射撃音と【ダンジョンウォーカー】であるトロールの叫び声だけが響いてまだ救援はこない。
ずっと撃ち続けているのでかなりイライラしているのが分かる。
「また弾がなくなったか………」
Slug弾が無くなったので【GunSHOP】スキルを開いて購入する。この動作もだいぶスムーズになってきた。8000ちょっとあったGPがもうすぐ7000を切りそうだ。
Slug弾は10発で30GPなので既に300発近く撃っている事になる。
ぴっ『経験値が一定に達しました、【GunSHOP】スキルがレベル3になりました』
Slug弾を補充した瞬間、ちょうどよく【GunSHOP】スキルのレベルが上がった。トロールの足止めはもはや作業になっているので暇つぶしに何が増えたのか見る為に【GunSHOP】スキルを開く。
「これは………タイミングがいいと言えばいいのか都合がいいと言えばいいのか」
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:3 ▼
LV:1 <GunSHOPを開いて売買が出来る> ▼
武器:▼
〝ハンドガン〟50GP~▽
〝サブマシンガン〟75GP~▽
〝ショットガン〟80GP~▽
〝アサルトライフル〟100GP~▽
〝スナイパーライフル〟200GP~▽
<New>〝グレネードランチャー〟3000GP~▽
<New>〝ロケットランチャー〟5000GP~▽
・
・
・
外装:▽
防具:▽
消耗品:▽
ここにきて爆発物の登場である、まさにトロール相手にうってつけではあるが消費するGPがすごい。
「でも、このままじゃ埒が明かないしな。一発に賭けるか?」
〝ロケットランチャー〟の弾は1000GP、〝グレネードランチャー〟は500GPだが、恐らくどちらも一発の値段だと思われる。確かめるには買うしかないがそのためだけに買う余裕はない。
なのでどちらかに賭けるしかないんだが。う~む、どちらにするべきか。
悩みながらも〝ショットガン〟を撃つ手は止めない。
「グラァッグラァッ!」
【マハト】をかけたSlug弾を膝に撃ってぐちゃぐちゃにしているが少しすると治っているのでまた撃つ、その繰り返しだ。
かなりイラついているのか動く腕で地面をどんどん殴っている。
今は【マハト】を6回ほど使った状態、後使えても6回ほどなのでその前に逃げるか買うか決めないといけない。
「う~む、こうしててもいつ救援が来るか分からないし買うか」
〝ショットガン〟のリロードをしながら開いていた【GunSHOP】スキルの画面から〝ロケットランチャー〟とその弾を買っていく。
いつもと同じように光が集まって武器の形になっていく。
「これはよく見る形のやつだな」
光がおさまるとそこにはゲームなどでよく〝ロケットランチャー〟といえば、みたいな代表のRPG7の形をしている武器が出てきた。
茶色の木の部分と鉄の黒い部分、さらに弾頭となる弾が緑色。みんなが想像する〝ロケットランチャー〟が出てきた。
使い方は一応動画で念のためにと見ていたのでわかるが、まさか本当に使う日が来るとは思っていなかった。
トロールが動き出さないように多めに膝に撃ちこんでおいて動きを止める。
その間に〝ロケットランチャー〟の弾を込めて、安全装置を外す。
「ふぅ、【マハト】!」
バフスキルをかけなおして有って無いような照準器を使い狙いを定める。
カチッボンッブシュー
想像していたよりも軽い衝撃を肩に受けて、〝ロケットランチャー〟の弾が飛んで行く。
「グラァァァァァァァァァッ!!!!」
ボボンッと爆発する音が大きく響く。
「うおぅ、すごい威力だ」
外さないように胴体ど真ん中を狙ったが少しずれて左肩に当たったのか、トロールの左上半身が消滅していた。
それでも死んでいないトロールには驚きだが、〝ロケットランチャー〟の威力にも驚きだ。
「これならいけそうだな。再生する前に倒しきろう」
残っていた1000GPちょっとを使い〝ロケットランチャー〟の弾を買い足す。
出てきた弾を速攻でRPG7に込めてトロールが再生する前に撃つ。
カチッボンッブシュー
ボボンッ
「グガッ………ガッァァァ」
今度は狙い通りに残っていた右上半身にうまい事あてれた。〝ロケットランチャー〟が当たったトロールは体が上下に千切れて別れて断末魔を上げてから死んでいった。
流石に、あそこまで体が無くなると再生せずに死ぬみたいだ。
「はぁ………疲れた」
途切れる事無く〝ショットガン〟を撃ち続けて、しかも出来るだけ外さないように。弾も足りなくなったら随時買っていって。
トロールの動きが遅くて余裕があったとはいえ精神的に物凄く疲れた。
ぴっ『経験値が一定に達しました、レベルが15から22に上がりました。新しいスキルを習得しました』
「ぬおっ一気に7もレベル上がった。流石格上のトロール、しかも新しいスキルまで。終わってみればおいしい戦いだったな」
名前:神薙 響 年齢:15
レベル:15 → 22
STR:25 → 38
VIT:10
AGI:30 → 40
DEX:167 → 258
INT:8
MND:7
≪スキル≫
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:2 → 3 ▽
<上級>【空間庫】Lv:3
<スキルリンク>【野営地】Lv:1
<中級>【射撃】Lv:3 → 5
<初級>【銃術】Lv:2 → 3
New<上級>【堅忍不抜】Lv:─
「おぉー?相変わらず意味不明なレベルで伸びるDEXに一切伸びる気のないINTとMNDだ………なんだこの変なステータス、そして新しく覚えたのはレベル無しの【堅忍不抜】スキルか」
確か【堅忍不抜】スキルはパッシブスキルで持っているだけで発動するスキルでしかもレベルによる効果上昇の無い少し変わったスキルだ。その代わり効果はなかなかにすごい。
【堅忍不抜】
ありとあらゆる状況で、焦る事なく落ち着いて行動することが出来る。その心は揺らがず耐え忍ぶだろう。
スキル効果の説明はこんな感じだ、どんな状況でも精神的に動揺する事がないのはでかい。しかもパッシブスキルなので発動に何かを消費するって事もないし。
「神薙!大丈夫か!?」
「あれ?佐々野さん?そっちこそ大丈夫ですか?」
ステータスの確認をしていると、やられていたはずの佐々野さんが【獣化】状態でやって来た。トロールに殴り飛ばされていたはずだが平気なのだろうか?
「私の事はいい!トロールはどうしたっ………!?あれはまさか!!倒したのか!?」
「トロールと相性のいい武器だったので何とか倒せました」
「いくら相性がいいとは言ってもお前はまだ新人だろう。ん?それはロケットランチャーか?それで倒せたのか?」
「えぇ、まぁ。それよりトロールの遺体を確認していいですか?何か落ちているかも」
「あ、あぁ。そうだな、私も一緒にいこう」
まだ納得いってなさそうだったが取り合えずごり押してトロールの確認にいく。レアな魔物とか特殊な魔物は、その遺体以外にも何か特別なドロップを落とす事があると聞いたことがあるから確認したい。
「うっこれはひどいな」
トロールの遺体に近づくと肉の焼け焦げた臭いがする、正直かなりくさい。後トロールの肉片と血が飛び散っていてかなりショッキングな映像だ。
「お?これは?」
「見せてみろ。ふむ………レアドロップだなよかったじゃないか」
トロールの横にきらりと光る腕輪が落ちていたので拾ってみたがどうやらレアドロップらしい。やったぜ。
「初めて見ました」
「そらな、滅多にない物だからな。鑑定に出す前に装備するなよ?一応何があるか分からないからな」
「はい」
こうしたドロップ品はダンジョン協会が鑑定してくれる、この間のスケルトン将軍の鉄の鎧とかみたいな感じだな。
「トロールは私が収納袋に入れて持って行ってやろう」
「ありがとうございます」
トロールの体が何に使えて売れるのか知らないが、売れるならお言葉に甘えよう。
あー、疲れたなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます