第13話 探索者交流会に向けて

13.探索者交流会に向けて








「あ、新井さん。久しぶりですね」


「やぁ神薙君、久しぶりだね。調子はどうだい?」


「まぁぼちぼちって所です、新井さんの方はどうですか?」


「私の方はやっと5層のボスを倒せるようになったところだよ、ムンちゃんがね新しいスキルを覚えてくれてね。随分楽になったよ」


「そうですか、それはよかったですね」


少し照れくさそうに、その腕に抱くムンちゃんを撫でる新井さんはその表情から探索者として順調にいっていることがうかがえた。


「それじゃぁ私は行くよ、神薙君も頑張ってね」


「はい、お互いに頑張りましょう」


少し世間話をしてから新井さんと別れて【骨骨の洞窟】へ入っていく。


今日はボス犬スケルトンでSlug弾を使って楽に倒せるようになってから2週間ほどがたった日、探索者交流会まで残り1週間と少しそろそろちゃんと準備しなくちゃいけない。


探索者交流会ではDランクダンジョンに潜る事になる。今いる【骨骨の洞窟】よりランクの高いダンジョンだ。

ここでは今のところ苦戦することなく戦闘を行えているのでDランクダンジョンへ行っても問題はないとは思うが何が起きるかわからないし備えておきたい。


考えるべきことはどこまでスキルを見せるか、何だよなぁ。銃を使っている以上そういったスキルを持っているのは明確にわかるし、とはいっても銃が買えるという部分を見せる事はないが。あくまでも銃を攻撃手段にしているスキルって事に見せるようにする。


問題はスキルリンクである【野営地】と上級スキルの【空間庫】だ。


どちらも有用性が高く持っている事がばれたらクラン勧誘が殺到するだろう、自慢とかではなく確実にそうなる。

上級スキルである【空間庫】はまだ他にも持っている人がいるし、いないわけではないのでそこまで騒がれないかもしれないが【野営地】スキルはやばい。メリットがありすぎて怖いぐらいだ。


そもそも別空間に行って安全に過ごせるってのがチート過ぎる。その上GPはかかるが家とかまで作れるのだ、その価値は計り知れない。


逆に、あえて【野営地】スキルを見せて有名なクランへ入れてもらって安全に稼ぐってのもあるが。俺は自分自身でダンジョンを攻略して楽しみたいんだ。飼い殺しは望んでいない。


だから【野営地】スキルは絶対に誰にもばれないようにしないといけない。もし話すとしても身内だけだな。

そうすると【空間庫】内に緊急時に使えそうなものを全部入れておくか、もし本当にどうしようもなくなったら【野営地】スキルに逃げ込むが、それまでは【空間庫】スキルで何とかしよう。

その【空間庫】も、よっぽどの事が無ければ人前では使わないつもりだけれど。



「よっ、ほっ、しゃっここ!」


考え事をしながらもダンジョンを進み、犬スケルトンを〝ショットガン〟で倒していく。

最近ではどんどん倒すのもうまくなっていき、今では突進してきた犬スケルトンの攻撃をかわし首筋に撃ちこむ事で倒した後の骨の損傷を少なくすることができるようになった。


一応〝ハンドガン〟や〝アサルトライフル〟でも同じ事が出来るが〝ショットガン〟が楽で何となくこのままやってる。


因みに、損傷を少なくして倒したところで12GPと売却額に変化は無かったがこうやってスタイリッシュに倒すとかっこいい気がして気分があがる。他の人には見せられないが………ここでは他に人がいないしちょとぐらいはしゃいでもいいだろう。



「お、もう着いたか」


ここ2週間ずっと5層まで通っているからか1時間ぐらいでボスまで来れるようになった。

この調子なら10層まで目指してもいいかもしれない。


さて………と〝ショットガン〟の弾をSlugに変えて。ボス部屋の扉を開けていく。


「はい、瞬殺っと」


扉を開けた瞬間〝ショットガン〟を構え数発、連続で撃っていく。

今ではこの通り5層のボス犬スケルトンとそのお供は瞬殺できてしまう。これだけ余裕ならさっさと10層行けよって感じだが。

ここでGPを貯めておきたかった。


「箱の中身は………よっしゃ当たりだ!」


宝箱の中身は『スケルトンダガー』だったこれでちょうど10本目になる。毎日ボス犬スケルトンを何回も倒して2週間かけてやっと10本、これが多いと考えるか少ないと思うか。


「帰って早速【野営地】内に家を買おう!」


今日はまだ昼を過ぎたばかりだ、すぐに家に帰れば十分遊ぶ時間はある。




◇  ◇  ◇  ◇




「まずはこれまでの骨と魔石と『スケルトンダガー』を【空間庫】から出してっと。このまま【GunSHOP】スキルの売却画面へどばどばーっと………合計で4630かいい感じだな」


どうしてわざわざ【空間庫】へ入れておいて置いたかというと。スキルは使わないとレベルが上がっていかないからだ。

普段から出来るだけ使うようにすることで熟練度的な物を貯めていっているのだ。


そのおかげでいまでは【空間庫】のスキルレベルは2になった。レベルが上がる事で入る物量が増えたらしいがレベル1の時でもいっぱいになるまでつかった事がないので正直違いはわからない。

けれどまぁレベル上げれるなら上げたいよね?って感じで上げている。



さて、本命の家だけれど………



Lv:1【野営地】▼

 環境:▽

  家:▼

   〝指定された場所へプレハブ小屋を建てる〟500GP~▽

   〝指定された場所へ木造の家を建てる〟750GP~▽

   〝指定された場所へ鉄筋の家を建てる〟900GP~▽

              ・

              ・

              ・



やっぱり建てるなら木造かなぁ?鉄筋よりなぜか安いし。取り合えず選択してどんな感じになるか見てみよう。


「あー、なるほど。こうなるのか………これは家ってより小屋だな」


視界にうつるのは小さい山小屋のような物、外見から見てわかるのは中はおよそ6畳か8畳ぐらいしか無いだろうという事。ほんとに小さな小屋だ。

ただまぁ【野営地】内には似合っている、木の丸太を積み上げて作られた壁に木の屋根。全体的に茶色で玄関の横には窓もついているし。ちょっと高床式になっているのか地面から浮いていて階段もついている。


他の木造の家を見てみるがデザインが違うだけで大きさは一緒だった。


「もっと大きなのは………ん?何だこの+の記号は」


見逃していたが購入画面の木造の家と書いてある横に+記号が書いてある。

見ていても仕方がないので取り合えず押してみる。


「おぉ、なるほど。これで拡張するのか」


どうやらこの+のボタンは家を大きくする記号だったらしい、おしたら目の前に見える緑色に点滅している家が大きくなった。


一回+押して大きさはおよそ倍ほどになった、消費するGPは合計1000GP、元の木造が750だから一つ拡張すると250追加されたことになる。


そのまま+のボタンを2回押してみる、するとやはり家がどんどんと大きくなっていく。

1500GPの消費でおよそ普通の一軒家の一階部分ぐらいの広さになったようだ。


「これ2階建てとかにできるんだろうか?っていうかこれ内装はどうなっているんだ?」


見た感じだと部屋しか増えていないように見える。普通の家といえばお風呂場があったりキッチンがあったりトイレがあったりと他にも必要な機能がある。


「ふむ、まだどこか+ボタンのような物があるかも?色々押してみるか」


【野営地】スキルのこのタッチパネルは未だにどんな機能があるのかわからなくてずっと手探り状態だ。


「これは購入のキャンセル………これはマップの移動と拡大収縮。うーむ、これか?」


マップには購入予定である家の敷地範囲が枠で囲われている、そこをタッチしてみる。


「よしっ正解だな」


マップの家建設予定の枠をタッチすると画面が切り替わり、家の図面が出てきた。横には新しい記号がいくつも増えている、見た感じ家の図面の寸法を伸ばしたりお風呂を作ったりと家の設計ができるゲームのような感じになっている。


試しに家の部屋の図面を引き延ばし20畳ほどにしてみる。


「ふむ」


+ボタンを押した場合は6畳ほどの部屋が別で追加されるだけだったが、この機能では部屋そのままの大きさを変えれるようだ。

-のボタンを押して追加していた部屋を消して20畳だけの部屋がひとつある状態にする、すると消費GPが減って丁度1000になった。

どうやら部屋の広さを変える方が追加するより消費するGPが少ないみたいだ。


後は家のエディット画面に増えた記号を押してお風呂とトイレとキッチンを追加してみる。

操作方法はゲームみたいで直観的にわかりやすかった。あと普通にここでも部屋の追加ができるみたいで+のボタンが何のために存在しているのか謎になってしまった。

むしろこの+ボタンは罠では………


20畳の部屋がある木造の家にお風呂とトイレとキッチンを追加して全部で1750GPになった。それぞれ250GPづつで追加できるみたいだ。


「これで一度建ててみよう」


最悪気に入らなければまたGPを貯めればいいんだし。

木造の家を【野営地】内の中心に持っていきそのまま購入決定ボタンを押す。すると一瞬光ってすぐに【野営地】のど真ん中に木造の家が出来上がった。


20畳の部屋にトイレとお風呂を追加したのでそれなりに大きいがいい感じの平屋だ。


玄関は一般的なドアなので開けて中にはいる。


「何もない………」


家には玄関に靴を脱ぐ場所があり、そのまますぐに20畳の部屋になっていた。長方形の20畳の部屋なのでそこにキッチンが壁際にポツンとある寂しい部屋になっている。


玄関から入って横へと長方形の形になっていて正面に扉が二つ見える、恐らくあそこがお風呂とトイレだろう。一応別々に作ったので一緒になっていないはずだ。


確かめるために玄関で靴を脱ぎ部屋にはいりそのまま予想している扉を開ける。うん、中は予想通りトイレとお風呂だ。玄関から入って正面右がトイレ、左がお風呂。

どちらも一般的なトイレとお風呂なので特に使い方などを考える必要はなさそうだ。


改めて部屋の中を見回してみる。明かりを取るためかいくつか窓があるのと部屋の明かりのスイッチも壁にある。キッチンの横にはお風呂を沸かす端末もある。それに電源をとれる場所も何個かあるようだ。


キッチンは壁に向かって使う形になっており、流し台と包丁とまな板を使う場所にコンロは3口になっている。


「家具がいるなぁ、ベッドにソファに絨毯に………」


色々と買いそろえる必要がありそうだ。っていうか家具もGPで買えたりしないかな?見てみるか。


一度外にでてタッチパネルのある場所までいってから調べてみる………が家具などはないようだ。もしかしたらこの先【野営地】スキルのレベルがあがると増えるかもしれないが。少なくとも今はない。


取り合えず今日はこんなもんかな?後はドローン宅配で家具を頼んでおこう。

【野営地】内の渦を通りリビングへ戻る。すると携帯に連絡がきていたので見てみる。


「お祖父ちゃんからか、何々?明日様子を見に来る………か」


連絡はお祖父ちゃんからで明日ちゃんと生活できているか様子を見に来るとのことだった。

一応2~3日に一回ぐらいは連絡をしてちゃんと生きてるよーって送っていたのだけれど、やっぱりちゃんと顔を合わせて確認したいみたいだ。


両親が亡くなってからおじいちゃんとおばあちゃんにはお世話になりっぱなしだ。

何か恩返しをしたいが………


そうだ、ダンジョン探索であまったポーションを渡すか。今のところスタミナ回復だけだがないよりかはいいだろう。

それにポーションは飲み過ぎても中毒になったり病気になったりしないのでお年寄りでも安心して飲める。


二人には長生きしてほしいからね。









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