第12話 Slug弾
12.Slug
『やほー。今日はここ【モーモーダンジョン】へやって来たよ!目的はもちろん………えへへ、それじゃぁ本日も元気にやっていこー!っと早速目的の魔物が来たみたいだね、あれがここの代表的な魔物である牛のモーモンカウだよ。みんなもよく食べてるよね?うん、そうそう。スーパーとかによく並んでるあれだよ!安くておいしい!私も好きなんだよね~それじゃぁ早速狩っていくよ~!』
ディスプレイに映るのは軽装の革鎧に槍を構えた大学生ぐらいの女の子。相対するのは一般的な牛よりも気持ち大きいかな?ぐらいの牛である『モーモウカウ』よくスーパーに並んでるお買い得な国産?牛肉だ。
今見ているのはダンジョン探索を生配信している放送で彼女の名前は赤嶺 茜と言う。視聴者数は1300人くらい、これがどれぐらい人気あるのか分からないが多いとは思う。
この配信はダンジョンの入場許可書である指輪を持っていないと閲覧する事の出来ない制限された生配信だ。
そりゃ魔物とはいえ生物をぶった切って血がぶしゃっと飛び出てその後物によっては解体までするような配信だ、一般的な配信サイトではまず、まともに放送できないレベルの物だろう。
なので同じ探索者である資格を持ったものしか見ることが出来ない。とはいってもほとんどの人が高校生になればその資格を取るのでほとんど制限らしい制限とも言えないけど。
なぜ今配信を見ているのかというと息抜きってのもあるけど他の人がどんなダンジョン探索をしているのか気になったってのもある、後は戦い方とかも参考にしたい。
彼女の場合食料になるダンジョンばかりに行っているみたいで過去の配信であるアーカイブを見て見るとそれ系統のサムネイルと題名ばかりついている。
『っしゃああああ!くたばりやがれくそったれが!!死ね!!!』
おおぅ………他の人の配信に切り替えた瞬間、タイミングが良かったのか悪かったのかいきなり罵倒から始まった。戦っている相手はサイクロプス、一つ目の巨人でその大きさは数十メートルにもなると思う。
彼の配信者名は………何だこれ、【最強の爆炎使い我雲様!】ってまず読みにくい。そしてこの人の名前はガウン?でいいのか?
名前にある通り配信画面に映るのは炎が爆発する様子、彼は【爆炎】スキルの持ち主らしい。
いいなぁ~魔法スキル、ちょっと憧れる。銃をどかどか撃つのも楽しいけれどやっぱり魔法を使えるなら一度は使ってみたいと思ってしまうのは仕方ないと思う。
『さっさと死ね!【極炎魔弾】!』
「うわぁ、派手だなぁ」
音がでかすぎてちょっと音割れ起こしてるし………音量下げるか。
彼が今使ったのは【爆炎】スキルのレベルを上げる事で覚える事のできるアーツスキルだろう。
アーツスキルとは、【爆炎】スキルの魔法系や【剣術】【槍術】などの物理系のスキルのレベルを上げる事で覚える必殺技?みたいな物だ。
例えば技名は人それぞれで、同じ【爆炎】スキルでも彼が使った【極炎魔弾】や【エクスプロージョン】など、名前が違ったり効果が微妙に違ったりと千差万別だ。
中にはもちろん同じスキルの名前で同じ効果の人もいるがそういうのはかなり有名な物ばかりだ。
探索者はみんなそれぞれ自分だけの技を手に入れるのが一種の憧れになっていて夢みたいになっている。
アーツスキルを使うにはゲーム的に言うならMPと言った感じの物を使う。MPの数値はステータスに表示が無い事から分からないが、その総量は個人差がありレベルを上げるとその総量も上がっていく。
ステータスに表示が無いんだったらそんなMPなんてもの無いんじゃないか?って思われそうだが実際にはアーツスキルを使う際何かよくわからない物が体から抜けていくのをはっきりと感じるそうだ。
その感覚を頼りにこのアーツスキルは何回使えてこれは何回って感じで自分で感覚で掴んでいくものらしい。
俺も早くアーツスキルを使いたい、そのためにはまずはアーツスキルの使う事のできるスキルを覚える必要がある。
銃を使っていればその内覚える事が出来るとは思うがいつになる事やら。
「あー休憩終わり!【骨骨の洞窟】ダンジョンどうするか考えよう」
配信サイトのタブを閉じて検索画面を表示させる。これから調べるのは銃の事だ。俺が持っているのは【GunSHOP】スキル、銃を取り扱うスキルだし現実の物をある程度元にしているはずだ。
ゲームや映画などで銃を使うシーンを見る事はあるが銃自体についてはそんなに詳しくない、なのでこれを機に色々調べてみようと思ったのだ。
取り合えず今欲しいのは破壊力のある銃。今のままでも戦えないことは無いが出来る事ならもっと安全に戦いたい。
欲を言えばボス犬スケルトンを一撃で倒せるぐらい?
そうなるとやっぱりロケットランチャーとかなのかなぁ?でも【GunSHOP】スキルにロケランないしな………
検索窓に色々条件をかいて調べてみる、銃の威力を上げる方法はっと。
ふむふむふむ?
なるほど?銃の威力を上げるには単純に弾がでかいのを使えばいいのか………単純だが道理だな。
弾が大きくなればそれだけ使う火薬の量が増えるし弾自体の大きさも変わってくるだろう。だけれど問題は【GunSHOP】スキルはスキルだって所だな。
現実にある銃は弾が大きくなればそれだけで威力が上がっていく。だけれどそれはスキルで取り出したこの銃にも適用されるのか?ってのが気になる。
「見てみるか」
考えていても仕方ないので【GunSHOP】スキルを立ち上げる。
<ユニーク>【GunSHOP】Lv:2 ▼
LV:1 <GunSHOPを開いて売買が出来る> ▼
武器:▽
外装:▽
防具:▽
消耗品:▼
〝食料〟5GP~▽
〝実弾〟10GP~▼
〝実弾(ハンドガン)〟10GP~▽
〝実弾(サブマシンガン)〟10GP~▽
〝実弾(アサルトライフル)〟10GP~▽
〝実弾(ショットガン)〟10GP~▽
〝実弾(スナイパー)〟15GP~▽
・
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消耗品欄の実弾を見ていく、いつも買っているのはこの一番やすい10GPの弾だ。これが1箱100発入っている。
一番やすいやつの下にも名前の違う弾が売っていたのだがよくわからなかったので取り合えず一番上の安いのを買っていたのが現状だ。
けど今日はちゃんと弾の種類も調べたので何となくわかる。いつも〝ハンドガン〟で使っているのが9mmパラベラム弾ってやつだ。見た目も大きさもそのままだから多分これだろう。
〝アサルトライフル〟で使っているのはこの5.56mmの弾か。〝ハンドガン〟より小さい弾なのに威力があるように見えたのは多分連射性の違いだろう。
〝ショットガン〟で使っている弾にはなぜか〝12ゲージ(Buckshot)〟の表記があるのでわかりやすい。
そして調べていった結果、威力を求めるなら〝ショットガン〟の〝12ゲージ(Slug)〟というのがいいらしいってのが分かった。
〝実弾(ショットシェル)〟 攻撃力:80 耐久値:50
〝12ゲージ(Slug)〟
【GunSHOP】スキルで扱われる散弾銃に使える銃弾、モンスターを相手に使う事を想定されていて、人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっている。
発射された弾は暫くすると自然に消える設計になっている。
昨日使っていた弾が〝12ゲージ(Buckshot)〟という物で攻撃力が20だったがこのスラグ?弾は80も攻撃力がある。かなりつよい。
ただ問題はこの〝12ゲージ(Slug)〟だが30GPもする。消耗品にしては高い、1箱何発入ってるんだろうか?試しに買ってみるか。【骨骨の洞窟】で手に入れたGPのおかげで少し余裕があるからな。
〝12ゲージ(Slug)〟を選択して購入を押すと目の前に光が集まり箱の形になって現れる。
「えっ………ちっっっさ!えっ!?」
現れた箱は物凄く小さかった。今まで買っていた〝アサルトライフル〟や〝ハンドガン〟の弾の箱に比べるとめちゃくちゃ小さい。
恐る恐る箱を手に取り開けて入っている弾を数える。
「1、2……10発………か」
10発で30GPか~高いなぁ物凄く高い。今までは100発で10GPだったから余計高く感じる。
「これは気軽に使えないな」
弾の数が少なすぎて気軽には使えないが、逆にいえばこれだけ高いんだもしかしたら物凄く強いかもしれない試したいな。
今日は取り合えずもう少し色々調べて、明日【骨骨の洞窟】のボス犬スケルトンに使ってみよう。
◇ ◇ ◇ ◇
「よしっいい感じだな」
調べものをした日から翌日、俺は朝から【骨骨の洞窟】まで来ている。道中に出てくる犬スケルトンはもはや相手にはならず発見して速攻倒せるようになった。
今使っているのは〝ショットガン〟に〝12ゲージ(Buckshot)〟の弾だ。犬スケルトンにはこれでちょうどいいみたいで一撃で倒せる。
後〝アサルトライフル〟でもう一度犬スケルトンを倒してみたが、前回と違い倒すのが上手になったのか苦戦する事なく倒せるようになっていた。
まぁそれでもやっぱり倒すのに数発から数十発は使う事になるので微妙な所だったが。これも撃つ弾が大きくなれば変わってくるのだろうか?
「お、ついたー」
そうこうしている間にボス部屋までついた。ここに来るまでにかかった時間は3時間ほどだ。洞窟型ダンジョンは狭いと言っても結構はやく5層までこれたと思う。
さて、ボス部屋に着いたのでついに〝12ゲージ(Slug)〟の弾を試す時がきた。まずは〝ショットガン〟に装填してあったショットシェルをガチャガチャとリロードするときと同じ動作を繰り返すだけを何回もして取り出していく。
この動作って何て言うんだろう?後で調べてみるか。
「全部取り出せたかな?それじゃ入れていくか」
〝ショットガン〟内に残っていた弾を全て取り出せたので本命の〝12ゲージ(Slug)〟を入れていく。
ひとつひとつカチャカチャと入れていくのは時間がかかるが、この時間が意外と楽しい。意味もなく何回もしたくなる。
「よし、いくぞ!」
弾を装填し終わったのでボス部屋の扉を開いて中へ入る。
「うおっ!いきなりだな!」
ボス部屋へ入った瞬間ボス犬スケルトンがこちらに気づいて突進してきた。迎え撃つように早速〝ショットガン〟を構える。
「くらえっ!」
今回の為に用意した〝ショットガン〟〝12ゲージ(Slug)〟弾を撃つ。
「ぐっ!!衝撃が凄い!」
〝ショットガン〟用のサイレンサーを付けていても大きく感じる音にストックを抑えていた右肩に大きな衝撃が走る。今までの中で一番つよい衝撃だ、目の前から人が走ってきて肩にタックルされたような、そんな感じの衝撃をうける。
だが、衝撃がそれだけ強いという事は威力も凄いという事で。ボス犬スケルトンを見て見ると頭蓋骨の7割ほどを吹き飛ばし、そのまま射線上にあった左の前足まで吹き飛ばしてボス犬スケルトンは死んでいた。
「最強!めっちゃ強いじゃん!」
と余韻に浸る間もなく雑魚スケルトンが突撃してくるのが見える。
「あ、やべ。雑魚忘れてた」
〝12ゲージ(Slug)〟の威力が強くて忘れていたがお供の犬スケルトンの存在を忘れていた、2匹はボス犬スケルトンがやられたことなんて気にせず突っ込んでくる。
「っしょうがないこのまま撃つ!」
一瞬弾の値段が頭をよぎってもったいないかな?って思ってしまったが、その考えを振り払いそのまま〝ショットガン〟を撃つ。
「わ~お」
〝12ゲージ(Slug)〟が当たったお供の犬スケルトンはその骨の体のほぼ全てがバラバラになり飛び散っていった。どうやらこれは威力がありすぎたようだ、あの様子だと魔石もバラバラだろうし骨もGPに変えれないだろうもったいない事をしてしまった。
「はぁ、まぁいいや箱あけよ」
ボス犬スケルトンの骨と魔石を【GunSHOP】を開いて売却していく、売却額が50GPだ中々に高い。そのままボス部屋に出現した宝箱を開けていく。
これはポーションか?
「はずれだなぁ」
色は黄色だし数字は0、ボス『一角兎』でもよくみたスタミナ回復のポーションだ。
そのまま封をあけて飲む。
「ゴクッはぁー、これ味は美味しいけどはずれなんだよなぁつらい」
骨の短剣が欲しかった………あれ300GPで売れるし。
「ちょっと周回してみるかぁ」
〝ショットガン〟を構えなおし外へと歩き出す、暫くここに通う事になりそうだ。
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