第11話 ボス部屋

11.ボス部屋








「いやぁ、それにしてもホントに助かったよ。君のそれは凄いねぇスキルなのかい?」


「そうです、銃を取り扱うスキルを手に入れたので使っているんですよ」


「いいねぇ私もそういうのに憧れて探索者になったのだけれど、実際にはうまい事いかないね。けどまぁ今は満足しているけども、ムンちゃん可愛いし」


「可愛いですねその子、狐ですか?」


「そうだよ、響君もスキルオーブ取りに行ったんだろ?私はそこで手に入れたのが【召喚】スキルでね。呼び出してみたら出てきたのがこの子だったんだよ」


そう言って新井さんは腕に抱いている狐のムンちゃんを撫でている、正直羨ましいもふもふ。

撫でられているムンちゃんも満更でもないのか大人しくしている。


今は【骨骨の洞窟】ダンジョンから外へと帰る道にいる。時間もちょうどよかったのでついでだと新井さんと一緒に帰る事にしたのだ。


新井 修二さん、年齢は32歳。サラリーマンとして働いていたが学生の頃の憧れだった探索者の夢を捨てきれず退職してしまったらしい。

彼のスキルである【召喚】は人気はあるがPTを組む相手としては不人気だ。


なぜか。それには理由がある。


一般的にスキルとは自分自身を強化して戦えるようにする物が多い。【剣術】しかり【火魔法】などの魔法スキルしかり。自分で戦える力があるからこそ危険なダンジョンへと行ける。

その所、【召喚】スキルは自分が戦うのではなく【召喚】された存在、召喚獣が自分の代わりに戦う事になる。一見、楽が出来るしよさそうに聞こえるが実際はそうでもない。


【召喚】で呼び出された召喚獣が強くなるまで大して戦えないし、その間召喚主である自分はろくなスキルもないので戦えない。一応片手剣などの装備を使う事でそれなりにはいけるかもしれないが、そこもスキル持ちと比べると………って感じだ。


しかもレベルをあげるための経験値?的な物が召喚獣と召喚主で折半されるのか他の人に比べてレベルが上がるのが遅いと言われている。


PTで戦う場合、召喚主本人だけでなく召喚獣まで経験値が頭割りされるので避けられているのだ。


そんな【召喚】スキルにもいい所はある。まず、召喚獣が可愛い。犬だったり猫だったり基本的に人気がある所から新井さんの狐のようなものまで呼び出せる召喚獣は様々だ、その代わり何が出てくるかは選べないらしいが。


それに【召喚】スキルのレベルがあがると呼び出せる召喚獣の数が増えたりもするし、万が一呼び出した召喚獣が死んでしまった場合は時間はかかるが再度同じ召喚獣を呼び出せる。

悲しいお別れが無いのだ。


そういった理由で【召喚】スキルは、人気はあるが不人気でもある。難しいスキルになる。



「それにしても私にはどうやらまだここは早かったようだね。もう少しでムンちゃんを危ない目に合わせるところだったよ、せめて召喚獣をもう一匹呼び出せるようになってから来るべきだったかな」


「【召喚】スキルですか………調べたときにはいいスキルだなって思ってたんですけど難しいんですね」


「そうだねぇ、私も最初手に入れたときは喜んだものさ。だけれどそうおいしい話しでもなかったみたいだね。私が剣を使えればよかったんだろうけどこの歳までまともに運動をしていなくてね不甲斐ないばかりだよ」


32歳で突然動けって言われても難しい話しか。だけれど新井さんはEランクダンジョンまで来れてるしそれなりに戦えるはずだよな?ここまで召喚獣だけで来たんだろうか?


「講習にはいかないんですか?」


「講習?ってなんだい?」


「ダンジョン協会が主催している武器の扱いなどの訓練を行ってくれる講習ですよ。たしかホームページに詳細が書いてあったような」


ダンジョン協会が行っている講習、主に武器の取り扱いや体の動かし方や組手をしたりの訓練。他にはダンジョンの攻略の仕方などPTでの動き方なども教えてくれる。

ライセンスを取得したときにメールが来るはず。俺にも来ていたが何となくいくのがめんどくさくて行ってない。


「おぉ!こんなのがあるんだねぇ。知らなかったよ、教えてくれてありがとう!」


新井さんは早速携帯を開いて調べたようだ。



そうしていると、暗がりの向こうから犬スケルトンが2匹出てきた。


「あ、スケルトンが来たみたいですけど、どうしますか?」


「お願いしていいかい?」


「構わないですよ」


そう言って新井さんは一歩さがるので俺は〝ショットガン〟を構えて犬スケルトンを狙い撃つ。


「ふぅ、終わりましたよ」


1匹1発でうまい事2発だけで倒せた。【射撃】スキルの補正かレベルが上がった事による器用値の上昇か、最近外す事が無くなってきた。それに同じ魔物を何回も倒す事により効率よくどこを撃てば一発で倒すことが出来るのかもわかるようになってきた。


「いやぁ、凄いねぇ。私も銃を持ってみたかったんだけれど高くて手が出せないんだよね。この片手剣だって安くないし………」


「そうですねぇ、高いですよね武器も防具も」


俺が持ってる、使う機会のないこの片手剣。これは一般的な初心者装備の量産品だが、これでも一本15万ぐらいする。防具なんかもそろえると10万弱する。

それに比べて魔石などの売却額の安さよ………Eランクダンジョンのここの魔石だと一個3000円ぐらいで買い取ってくれる。


1個3000円………果たして武器と防具の元を取れるのはいつになる事やら。


しかもダンジョンで活動するには武器と防具だけじゃない、日々の食事や怪我したときのポーション代など他にもお金がかかる。


俺には親の遺産があるから平気だが、普通の人には厳しい問題なのかもなぁ。


「それじゃぁ、帰りましょうか」


「そうだね」


犬スケルトンから魔石を抜き取りポケットに入れる。GPに変えるのは後ででいい。




◇  ◇  ◇  ◇




「よし、今日こそはボス部屋までいくぞ」


新井さんとの出会いから次の日。昨日行けなかったボス部屋へと今日こそはと気合を入れる。


「お、早速きたか」


早速犬スケルトンが来たのかカタカタと音が聞こえる。少しして曲がり角から予想通り犬スケルトンが現れた。


「今日の〝ショットガン〟は一味違うぜ、食らえ!」


チャキンッと〝ショットガン〟とは思えない音が聞こえる。


「おぅ、めっちゃ静か」


〝ショットガン〟の薬莢を排出するわずかな音が聞こえるのみで昨日までの大きな破裂音が聞こえない。そう〝ショットガン〟用のサイレンサーを買って取り付けたのだ。


長方形のかたちをした少し大きいサイレンサー。大きいだけはある射撃音がめちゃくちゃ静かになった。

正直ここまで効果があるとは思ってなかった。〝ハンドガン〟や〝アサルトライフル〟は何となく映画などで何回かサイレンサーがついている映像を見たことがあるので想像がついていたが。

〝ショットガン〟にサイレンサーなんて調べて見つけるまでその存在を知らなかった。


「どんどんいこー」


犬スケルトンの魔石を拾い歩き出す。昨日帰ってからステータスを見て見るとレベルが上がって【射撃】スキルのレベルもあがっていたので調子がいい。

やっぱりスキルの補正が効いているのか思ったようにあてれる。



「お、またいた」


今度は立ち止まっている犬スケルトンを見つけたので早速撃つ。


「うむ、爽快」


チャキンッと音がなりまたもや一発で犬スケルトンを撃ち抜く。ショットシェルホルダーから弾を抜いて補充しておく。そして魔石を拾い歩き出す。

今は凄く楽に倒せているが、いつかこれが一発で倒せないような魔物が出てくるんだろうなぁ。果たしてそれがいつになることやら。


あ、階段だ。降りよう。




◇  ◇  ◇  ◇




「ボス部屋発見!やっとついたー」


あれから数時間かけて5階層にあるボス部屋前までやってきた。【骨骨の洞窟】ダンジョンはその不人気から地図も無かったので手探りだったがそれはそれで楽しい。

道中でそこそこの戦闘をこなしてきたので今では〝ショットガン〟の扱いもかなりうまくなっておりリロードなどもスムーズに行えるようになってきた。



ボス部屋の扉には犬スケルトンが大きく描かれている。恐らく大型の犬スケルトンがでるんだろうなぁって事は分かるけど問題は相手が複数の場合だ。その時は先手必勝で速攻で決めないとやばいかもな。


〝ショットガン〟は………うん、ちゃんと弾は全て込められている。ショットシェルホルダーにもポーチにも予備の弾がちゃんとある。

〝ハンドガン〟もちゃんと弾が込めてあるし予備のマガジンも腰にさしている。


一応〝アサルトライフル〟も確認しておくか。

【空間庫】からしまっておいた〝アサルトライフル〟を取り出し確認する。


しまうときにマガジンとかを取り外しているので何もついていない状態だ。


「万が一があるかもだし一応用意しておくか?」


〝ショットガン〟と〝ハンドガン〟だけで行けるような気もするが念のために〝アサルトライフル〟をいつでも使えるように弾を込めたマガジンを入れておく。

予備のマガジンも一応2つ用意しておこう。


「よし、こんだけ用意すればいいだろ」


〝アサルトライフル〟は用意だけしておいて【空間庫】へ入れておく。〝ハンドガン〟は太もものホルスターにさしておいて〝ショットガン〟は手に持つ。


準備が出来たのでボス部屋の扉を開ける。

ゴゴゴと音を立ててボス部屋の扉がゆっくりと開いていく。中は薄暗く壁際に光源が並んでいる。


ボス部屋の広さは一般的な体育館2個分ぐらいだろうか?狭くはないが広すぎない。いやな広さだ。


ボス部屋の中央に大きな犬スケルトンが見える、その周りには道中でも出た大きさの犬スケルトンが2匹いる。


ボス犬スケルトンは四つ足で立っているだけでその体高は俺よりも高い。かなり大きいみたいだ。


相手が複数いるので先手必勝とばかりに〝ショットガン〟を構えて撃つ、まずはお供の犬スケルトンからだ。

〝ショットガン〟をしっかり構えて犬スケルトンを狙って撃っていく。



よし、取り合えずお供の犬スケルトンは瞬殺できた。次はボスだ。ボス犬スケルトンはこちらに気づいたのかその骨の体をガタガタ言わせて走ってくる。骨が太くてでかいからかその音もでかくてすごい。


「でかいと迫力がすごいな!」


サイレンサーの効果で〝ショットガン〟の薬莢が飛び出る音だけが響く。ボス犬スケルトンは弾が当たってその骨の破片をいくつも飛ばすがこたえた様子はなくそのまま突っ込んでくる。


「くそっいってぇ!」


ドカッと音を立ててボス犬スケルトンの突進を〝ショットガン〟を盾にして受け流す。それでもかなりの衝撃がきて体が痛い。


すぐに体勢を立て直し何発も〝ショットガン〟を連射していく。ボス犬スケルトンの肋骨を吹き飛ばし、後ろ足を吹き飛ばし、顔面にいくつもの穴を作る。それでもボス犬スケルトンはこちらへ走ってくる。

もうちょっとで倒せそうなのになかなか最後の一撃が決まらない。


「痛覚がないってのも考え物だなっ!」


カチッ


「リロードッしてる暇ねぇ!」


〝ショットガン〟の弾が切れてリロードしようとするがボス犬スケルトンが体当たりしてきて噛みついてくるのでリロードする暇がない。

〝ショットガン〟をその辺に放り投げて、慌てて【空間庫】から〝アサルトライフル〟を取り出して撃つ。


「うおぉぉぉ!もう死んでるだろうけどしねぇい!」


用意してあった〝アサルトライフル〟でマガジン内の弾丸を全て撃ち尽くす。


「あー何とかなった………」


〝アサルトライフル〟の射撃がとどめになったのか頭が粉々になってボス犬スケルトンは倒れた。


「この大きさになると〝ショットガン〟でも破壊力が足りないのか………何か考えないとな」


対策は帰ってから考えるとして、お楽しみの宝箱だ。Fランクダンジョンでボス『一角兎』を倒した時も出てきていた箱がここでも出てきている。


箱の見た目に変化はないが中身は少しはいい物が入っているはずだ。

ボス犬スケルトンとそのお供の魔石と骨を拾って【空間庫】に入れておく。ついでに〝アサルトライフル〟も。


放り投げた〝ショットガン〟を拾い壊れてないかを見る。


「うん、問題なさそうだな」


〝ショットガン〟でボス犬スケルトンの攻撃を受けたので壊れてないかと思ったが案外頑丈だったみたいだ。


「さて、箱の中身は~って何だこれ?短剣?」


宝箱から出てきたのは骨で出来た短剣だ、持ち手には皮が巻かれているが刃から何から全て骨で出来ているのがわかる。


どうしようか?売る?ってかこれもGPに変えれるんだろうか?


試しに骨で出来た短剣をGP売却画面へと入れてみる。


「えっ?高い!」


骨の短剣の名前は『スケルトンダガー』そのまんまだ。売却価格は一つで300GPもする。めちゃくちゃうまい。


「これは周回決定だな………毎回短剣が出ればだけど」


ボス『一角兎』の時はついぞ最後までスタミナ回復のポーションだったからな……あまりにも出過ぎでまだ【空間庫】に何個も残っている。


「取り合えず今日はもう帰ろう、疲れたなー!」


大きく伸びをして息を吐く。帰ってご飯食べてお風呂はいって何かボス犬スケルトンにいい武器が無いか調べよう。






◇  ◇  ◇  ◇



名前:神薙 響   年齢:15


レベル:8 → 10


STR:15 → 18

VIT:10 

AGI:15 → 17

DEX:35 → 55

INT:8

MND:7


≪スキル≫

<ユニーク>【GunSHOP】Lv:2 ▽

<上級>【空間庫】Lv:1

<スキルリンク>【野営地】Lv:1

<初級>【射撃】Lv:1 → 5



◇  ◇  ◇  ◇



〝ショットガン〟 攻撃力:50 耐久値:250

実際にある銃をモデルに作られた散弾銃、モンスターを相手に使う事を想定されていて、人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっている。



〝実弾(ショットシェル)〟 攻撃力:20 耐久値:50

〝12ゲージ(Buckshot)〟

【GunSHOP】スキルで扱われる散弾銃に使える銃弾、モンスターを相手に使う事を想定されていて、人相手にはセーフティがかかり怪我をさせない安全な造りになっている。

発射された弾は暫くすると自然に消える設計になっている。











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