第10話 Eランクダンジョン

10.Eランクダンジョン








「ここがEランクダンジョンか」


目の前に広がるのは茶色い壁が続く薄暗い洞窟。ここはEランクダンジョンの【骨骨の洞窟】名前の通りここで出てくるのはスケルトンだ。全20階層ありすべての階層にスケルトンが出てくる。


奥に進むほどスケルトンが強くなっていくダンジョンで得られるのはスケルトンの骨と魔石のみなので人気の全くないダンジョンだ。


ドロップ品の骨はスケルトンが強ければそれ相応の骨が手に入り少し使い道が出てくるが、ここEランクダンジョン程度のスケルトンの骨では肥料にするぐらいしか使い道が無い。売っても二束三文だ。


なのでここでの主な収入源は魔石になるが、その魔石もEランクの魔石なのでそれ相応の買取値段だ。


更にさらに、ここは洞窟型のダンジョンで薄暗く、出てくる魔物もスケルトンのみというホラーが苦手な人からすれば最悪に近いダンジョンだ。しかも【骨骨の洞窟】は階層を進むほどに同時に出てくるスケルトンの数が増えていく。


そういった色々な理由からここのダンジョンは人気が無く閑古鳥が鳴いている。


「実際ダンジョンに入るまで、誰一人いなかったもんな………」


ダンジョン協会の建物も小さく職員も覇気が無くしかも数人しかいないという不人気ぶりだ。


さて、そんな超絶不人気のダンジョンへわざわざ来た理由だが。まずはこの間まで行っていたFランクダンジョンの魔石とかと比べてEランクダンジョンの魔石だとGPの売却価格に変化はあるのか?ってのを調べたいのと。


Fランクダンジョンでは一対一ばっかりだったのでここで複数を相手にした場合の戦いを経験したかった。


そしてさらに【骨骨の洞窟】に出てくるスケルトンは階層を進むと人型が出てくる。この先ランクの高いダンジョンへ行こうとした場合必ず人型の魔物がいずれでてくる。その時に躊躇しないようにここで練習したい。



「まずは何が出てくるかな」


【骨骨の洞窟】1階層では色んな動物のスケルトンが出てくる。今の所確認されているのは犬のスケルトン、Fランクダンジョンでも倒した『一角兎』のスケルトン、蝙蝠のスケルトンの3種類だ。他にも別の種類のスケルトンがいるかもしれない、ここはそこまでしっかりと調査されているダンジョンではないのだ。





「お?来たか」


薄暗い洞窟の先、曲がり角の向こうからカタカタと骨が擦れる音が聞こえる。どうやらスケルトンが来たようだ。


「犬スケルトンか」


曲がり角から現れたのは骨だけになった犬だった。スケルトンハウンド、スケルトンドック、スケルトン(犬)とその呼び方は様々だが、取り合えず犬の形をした骨の魔物だ。

果たして魔物に犬種があるのか定かではないが現れた犬スケルトンは大型とまではいかない中型ぐらいの大きさの骨の犬だ。


取り合えずはいつも通りに。ゆるく持っていた〝アサルトライフル〟を構えて安全装置を外し狙い撃つ。


「えっ?えぇっ!?」


恐らく撃った弾は当たっているはずだ、銃本体からも射撃音が数回なっているのが確実に耳に届いている。それに犬スケルトンから白い破片が飛ぶのが見えたからそれは確実なはずだ。

それなのに犬スケルトンは気にした様子もなくその骨の体をカタカタ鳴らしながら走って近づいてくる。


慌てて追加で射撃するが中々倒れない。



「っしゃおらぁっ!」


結局どれだけ撃っても犬スケルトンは死なず目の前までやってきてしまったので思いっきり蹴り飛ばして倒した。

探索者用装備の靴は足先に鉄板か硬い樹脂製の物が入っており、安全靴になっているのでこうやって攻撃にも使える。まぁ今回初めて使ったが……


「はぁ、ふぅ。危なかった………それにしてもスケルトンに対して〝アサルトライフル〟はダメなのか……」


〝アサルトライフル〟の弾が小さいのか破壊力がないのか犬スケルトンに対して数発では倒せそうにもない。骨をいくつかの破片にして飛ばすぐらいの威力はあるのだが頭を吹っ飛ばしたりして一撃で、とは難しいみたいだ。


そもそもの話しスケルトンを倒すには頭を吹っ飛ばすか心臓付近にある魔石を壊すと倒す事が出来る。

しかし、スケルトンの頭を吹っ飛ばすにはそれなりの力とそもそも近づかないといけないという危険がありあまりしたくない。かといって魔石を壊してしまうと売却できる部分が無くなってしまう。


一番きれいに倒す方法は首と胴体を切り離す方法、だけれどこれは現実的ではないので頭を吹き飛ばして破壊した方が早い。少なくとも魔石を売る事はできる。


「破壊力なぁ~あっ、あれがいいんじゃないか?」


思い付いたので【GunSHOP】スキルを開こう………とする前にここはダンジョン内だ、一応敵が来た時にスケルトンは大きな音が出るのでわかりやすいと言っても危険は危険なので【野営地】スキルに避難しよう。


ダンジョン内の壁際に寄り【野営地】スキルに入る黒い渦を出す、最近分かった事なのだがこの黒い渦を出す場所はある程度こっちで決めれるみたいなのだ。足元にも壁にも、入れはしないけれど天井にも出せる。



【野営地】内に入り【GunSHOP】スキルを開いて早速思い付いた物を買っていく。【野営地】を充実させるのに結構使ったが500ちょいほどGPが残っているので足りない事はなさそうだ。


「これがいいかな?ストックがついていて扱いやすそうだ」


買った商品が光となって目の前に出現していく。

うむ、かっこいいな。

さっきまで使っていた〝アサルトライフル〟は使わないから【空間庫】へ入れておこう。



ガチャガチャと触って動かしながら質感を確かめる。


今回、買ったのは〝ショットガン〟だ。

一撃の破壊力と言えば色々あると思うが今回使えそうなのはこれだ。


上から下まで全て真っ黒な見た目、ずっしりとしたちょうどいい重さ。弾も買って詰めていく。

取り扱いは以前に練習用のを買って行っていたので問題ない。


カチャカチャと一発ずつ弾を込めていく。ショットシェルと呼ばれる弾を込める作業は楽しい。


「あ、ポーチとかホルダーも買うか」


〝ショットガン〟の予備の弾を入れておくためのポーチとホルダーを【GunSHOP】スキルを開いて買う。ホルダーは〝ショットガン〟の横へ取り付けて、ポーチは腰の後ろへつける。これでかなりの予備の弾を用意できたはずだ。


「よし、試してみるか」


【野営地】内にある黒い渦を通り【骨骨の洞窟】内へと戻る。渦から出る瞬間は無防備なので警戒しつつ慎重に外へと出る。

ダンジョン内に変化は無くさっき倒した犬スケルトンの死体?がそのまま残っていた。


「あ、忘れてた。拾っておかないと」


ドロップ品の事を完全に忘れていたので慌てて拾っておく。落ちているのは頭の無い犬の骨と小さな魔石がひとつだけ。

犬スケルトンの頭は蹴り飛ばしたので壁際でバラバラになっているので頭以外の部分を拾って【GunSHOP】スキルの売却画面へと入れていく。


「12GPか微妙だなぁ」


骨が6GP、魔石も同じ6GPと安い。

ボスに期待かな?


「さてと、〝ショットガン〟でどれだけ戦えるか」


〝ショットガン〟をガチャコンっと音を鳴らしてダンジョン内を歩き出す。





「早速来たか」


ちょうどいい具合に洞窟の暗がりの先から犬スケルトンがやってきた。距離は20メートルほどだろうか。

〝ショットガン〟のストックを肩でしっかりと抑えて狙う。


ガァンッ!


「うおっ!思ったより衝撃が凄いな………」


〝アサルトライフル〟ではサイレンサーを付けていたしそんなに大きな音は出なかったが〝ショットガン〟は音も大きいし反動も凄い。

その代わり破壊力は比べ物にもならない。


〝ショットガン〟の弾が当たった犬スケルトンはその頭が粉々になり一撃で倒せたようだ。20メートル先で倒れている。


ショットガンと言えばその弾がばらけて面で攻撃を出来てその代わりあまり遠くまで届かないイメージがあるかもしれないが、実際のショットガンはその射程距離は50メートルは届くとされている。


ゲームなどでは超至近距離武器として出てくるが実際はハンドガンなどと同じぐらいの射程距離がある。




「これなら十分戦える」


〝ショットガン〟の弾であるショットシェルは【GunSHOP】スキルで買うと1箱20発入りで10GPだった。なのでスケルトン一匹たおせば十分元が取れる。外しまくらなければだが。


「よし、この調子でボスまで一気にいこー!」


気合を一つ入れてダンジョンを歩き出す、もちろん今倒した犬スケルトンのドロップはきちんと拾いました。





◇  ◇  ◇  ◇





「お?なんだこの音は………戦闘音?誰かいるのか?」


あれから順調にスケルトンを倒していき、今いるのは3層。道中出てきたのは犬スケルトンに『一角兎』のスケルトン蝙蝠型のスケルトンと色々倒してきた。

ウサギ型と蝙蝠型は〝ショットガン〟で倒すと威力がありすぎるのか魔物が小さすぎるのか魔石まで壊してしまいGPにする事が出来なかった。

なので小さいスケルトンが出たら〝ハンドガン〟で倒してきた。3発ほどあてると〝ハンドガン〟でも普通に倒せることが分かったので今は〝ショットガン〟と〝ハンドガン〟を切り替えて戦っている。


そうしてダンジョン内を進んでいると遠くから誰かが戦っている戦闘音が聞こえてきた。

こういったダンジョン内で他の探索者と出会った場合は出来るだけ関わる事の無いように通り過ぎるのがマナーだ。


探索者同士手を取り合い助け合うって言うのはダンジョン外での事で、ダンジョン内では同じ魔物を倒すいわばライバルだ。なのでダンジョン内では人によってはかなり神経質になっている人もいると聞く。



同じPTだとか知り合いだとかなら気にしなくていいんだろうけど、少なくとも今ここに居るのは知り合いではないだろうしなぁ。



そういった理由は色々あるが一番はトラブルにならないようにするためのマナーだ。探索者同士お互いにステータスがあり、力が強いしスキルもある。だけどその力を使うのは人間だ。

そんな力を持った人間が喧嘩をして暴れたらどれだけの被害がでるかわかったもんじゃない。


ダンジョン内で探索者同士の争いが起きた場合、その事件って証明できないんじゃないか?と思われるかもしれないが実はダンジョン入場許可書であるこの指輪には録音と録画機能がついている。それを起動する事により自分の身を守るのだ。


だけど相手もその機能がある事は知ってるし指輪を取られたらお終いじゃ?って思うかもしれないが。この録音と録画機能は起動するとそのデータはダンジョン協会のサーバーへ一時的に保存される。そしてもしその記録した本人が何かしらの理由で戻ってこなかった場合その映像がダンジョン協会の手によって確認される。


そうやってもし争いが起きて相手を害した場合後から必ず捕まってしまうという事実を作る事で争いを起こさない予防にしている。


因みにこの映像を記録する機能をもう少し豪華にしたバージョンを使ってダンジョン内を生配信している探索者兼配信者とかもいる。魔物を倒して収益にするだけじゃなくて生放送でもお金を稼げるのだ。

人気の配信者になるとそれだけで生活できるほど稼げるらしい。詳しい話しはまた今度にして。


「戦っているのが一人なのかPTなのかが気になるな。ちょっとだけ様子を伺うか?」


ここはEランクダンジョンだし滅多な事で危険に陥ることは無いが、わざわざこんな不人気なダンジョンにいるんだ。同士として気になる。


「ちょっとだけ、ちょっとだけ覗こう」


戦闘音はまだ続いているので抜き足差し足忍び足で近づいていく。そのまま戦闘音がする曲がり角まで来たのでゆっくりと顔を覗く。


「いけ!ムンちゃん!」


曲がり角から顔を出して覗いた先にいたのは犬スケルトンと戦う、あれは狐か?動物が魔物と戦っている。


狐のムンちゃんは素早く動いて犬スケルトンに噛みついていくが横から別の蝙蝠スケルトンが邪魔をして中々決め手に欠けているようだ。さっきから戦闘音が続いているのはそうやって戦いが長引いているからだろう。テイマーか召喚士か分からないがあの狐の主人である人も苦しい表情をしている。


手を貸すべきだろうか?一応聞くだけ聞くか。


「あの!助けはいりますか!?」


「あ、あぁ!助けてくれ!」


どうやら助けていいらしいので〝ショットガン〟を構えて走って近づいていく。見えている範囲にいる魔物は犬スケルトンが2匹に蝙蝠スケルトンが一匹だ。



「少し下がってください!」


「分かった!」


魔物に対してかなり近い位置で戦っていたので少し下がってもらう。もし誤射なんてしたら最悪すぎる。


「どりゃっ!」


〝ショットガン〟を立て続けに2発撃っていき、そのまま〝ハンドガン〟を素早く抜いて蝙蝠スケルトンを撃ち落とす。

時間にして数秒で決着がついた。


「大丈夫ですか?」


「あ、あぁ………ありがとう、助かったよ。すごかったね」


腰を抜かして倒れていたので手を引いて立ち上がらせる。服についた埃を払っている間に出しっぱなしだった〝ハンドガン〟に安全装置をかけて〝ショットガン〟を肩にかける。


「怪我はないですか?」


「あぁ、大丈夫だ。助けてくれてありがとう。私の名前は新井 修二という、よろしく」


「神薙 響です。よろしくお願いします」


正直ちょっとここでヒロイン登場か!?とか思ってました。けど目の前にいるのは20代後半から30代前半の男性。


ちょっとがっかりしたのは内緒です。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る