第6話 レベルアップ

6.レベルアップ








「どうしよう、これ」


現在地は変わらずFランクダンジョン【静寂の森】の草原部分。順調に『一角兎』を倒していき2体同時に倒せたりもした。

そうやって順調に倒せたのが災いしたのか、目の前には一角兎が7匹横たわっている。もちろん背中には既にこれまでに倒してきた4匹の『一角兎』が入っている。


冷却ジップロックは50枚入りのを買っているので数は十分なのだが、問題はこの数を背負って帰れるのか?という事だ。

一応7匹全て血抜きを済ませてあるので冷却ジップロックに一応入れて背負ってみる。


「うぐっ……これは無理だな。腰がやられそう」


合計11匹の『一角兎』を背負ってみるが、案の定かなり重たい。何とか持てるレベルだが、このまま帰るのは厳しそうだ。


一旦背負っていた袋を降ろす。


「どうしよう」


そして、冒頭に戻る。

取り合えず持てる事が確定している5匹分を持ち上げてみる。


「うん、いけるな」


持ってみた感じは2Lのペットボトルを入れた袋を片手でもっているぐらいの感覚だ。明らかにそれ以上の重さがあるはずなのにこれだけ軽く感じるのはレベルアップによるステータスアップの恩恵だと思われる。無理すれば6~7匹ぐらい持てるだろうけど、どうしようか?


このままレベルアップしてステータスが上がれば10匹でも20匹でも、それこそ100匹でも持てるだろうが、今度は物理的に手が足りなくなる。

そうなるとやっぱり【アイテムボックス】系のスキルか拡張されたカバンが欲しくなってくるなぁ。


「取り合えず魔石だけはとっておこうかな?」


【GunSHOP】スキルで使うGPの為に『一角兎』の魔石を取り出す。Gランクダンジョンにいた『ふわぽん』のクズ魔石とは違いFランクダンジョンでは一応売れる魔石がとれる。

見た目は『ふわぽん』の魔石より少し大きいぐらいのビー玉で色は茶色だ。


『ふわぽん』の魔石が白色の透明で、『一角兎』が茶色。ご想像の通り、魔石は色が分かれておりそれぞれ属性がある。

赤なら火、青なら水、緑は風と言う感じでゲームっぽく属性がいろいろある。


魔石に属性があるとどうなるんだって事なんだけど、正直よくわからない。魔石を使った道具を作る時に色々あるらしいが。そういったものはそれ専門の仕事の人じゃないと理解できないものだ。


知識のない俺みたいな一般人は精々が「あーこれあの属性の魔石が使われてるんだー」ぐらいの感覚しかない。そんな知識がなくても一応コンロみたいな道具には火の魔石がいいんだろうな~ぐらいの想像力はある。まぁ……その程度だ。


取り出した『一角兎』の魔石を【GunSHOP】スキルで売却する。


「3GPか」


多いのか少ないのかわかんないけど、まぁこんなもんかなって感じだな。


「あれ?そういえば……」


魔石ばっかり売却しているがそもそもこれって魔石だけ売れる感じではなくて、何でも売れるんだよな?多分。


『一角兎』そのまま一匹丸々売れたりしちゃう……?


恐る恐る表示してある画面を魔石を抜いた『一角兎』に押し付けてみる。


「おお!?」


【GunSHOP】スキルで表示されている売却画面に『一角兎』が吸い込まれていった。にゅるっと吸い込まれる不思議な感じがするが【アイテムボックス】とか拡張カバンとかもこんな感じで物が吸い込まれていくんだろうか?


売却画面を見て見ると『一角兎(魔石無し)5GP』と表示されていた。


魔石を抜いていないのを入れると完全な状態ボーナスみたいなのあったりしないかな?

そう思い魔石を抜く前の『一角兎』を売却画面に入れてみる。


「ボーナスとか無いか」


売却額は8GPとなっていた。魔石分の3GPを含めると魔石があろうがなかろうが売却額に変わりはないようだ。

もしかしたら血抜きをしているのがダメなのかな?次に倒した『一角兎』は倒したらそのまま入れてみよう。


そう思い持てない分の残りの6匹分の『一角兎』を売却していくと全部で48GPになった。

弾は100発で10GPだし銃自体もそこまで高くないし。このままいくと結構GPが溜まっていきそうだな?むしろこの先もっと高い銃が出てきたりするのかな?ちょっと楽しみだ。





その後、血抜き前の『一角兎』をGPに変えてみたが。売却額が変わらなかったことをここに記す。





◇  ◇  ◇  ◇




名前:神薙 響 年齢:15


レベル:3 → 4


STR:11 → 12

VIT:7 

AGI:9 → 10

DEX:14 → 18

INT:8

MND:7


≪スキル≫

<ユニーク>【GunSHOP】Lv:1 ▽




◇  ◇  ◇  ◇



あの後も順調に『一角兎』を倒していき今日は二日目。昨日はそこそこの数を倒してGPに変えたので221GPあった、そこから弾とマガジン、それに今回の為に買ったものを含めて今は191GPになっている。


昨日は草原にいる『一角兎』を倒していたが。今日は巣を攻略してみようと思う。


巣とは何か。それは文字通り魔物の巣となった場所で沢山の魔物がいるが攻略することが出来ればお宝が期待できる。


そんなに沢山の魔物と戦うなんて危険じゃないのかと思われるが、もちろん危険だ。だけどFランクダンジョンぐらいならソロでも行けない事もない。どうやって攻略するかの動画まで上がっていた。

そんな今日の為に買ってきた秘密兵器がある。


ライオットシールドだ!



〝ライオットシールド〟 攻撃力:0 耐久値:500

身を守るための盾。

透明で軽く作られているが硬く、装備する者を守ってくれるだろう。



暴動が起きた際などに警察官が装備しているあの盾を想像してくれるとわかりやすいかもしれない。

もし『一角兎』が突撃してきてもこの盾で防御する。しかも何とこの盾、透明になっているので視界良好だ。透明な盾だと強度に不安を覚えるが何とこの盾やたらと強度がすごい。

家で買ってからちょっと試してみたのだが蹴ろうがなにしようが一切へこみもしなかった。謎素材だ。


そんなわけで購入した盾で身を隠しつつ横から手をだして銃を撃つスタイルになる。


因みに攻略できた場合、お宝が手に入るといったが。それは高ランクのダンジョンでの場合で、ここみたいな低ランクだと精々何かの素材だったりするぐらいで当たりなんて滅多に出ない。

それでも一応当たりがでた報告はあるので多少は期待している。


報告されている当たりの宝物の中で一番欲しいのはスキルオーブだ。

スキルは使わなくてもあるだけで助かるものも多い【身体強化】や耐性系のスキルなど。いわゆるパッシブスキルと呼ばれる物もある。

それにもし使わないスキルだとしても別にスキルの取得数に上限があるわけじゃないしスキルは取得できればそれだけ得をしていく。何のスキルだったとしてもだ。


たしか一番スキル持っているのはどこかの大富豪で、スキルの数は3桁は超えてたはずだ。趣味かなんかで集めているとニュースで言っていたな。


まぁそんなわけで今日は『一角兎』の巣を攻略する。草原を歩き、木々が覆い茂っている森の手前で一旦止まりマガジンや銃の確認をする。

ダンジョンの巣は攻略されると場所が移り変わっていくので毎回探す必要があるがある程度場所は決まっていて視界の開けた場所には基本的に、巣はできないようになっている。とくに小型の魔物の場合は森の中や洞窟の中など、狭く視界の悪い場所に巣がある。

その例でいくともちろん【静寂の森】ダンジョンにいる『一角兎』は、森の中のどこかに巣があるはずだ。


ライオットシールドを腕に固定するように持ち、銃を構えながら森の中へと入っていく。

森の中は【静寂の森】というダンジョン名にふさわしく、静かでどこか不気味だ。

ただ、慣れればここも素敵なデートスポットになる。


キラキラと輝く陽の光が木々の間から降ってきて、見ようによってはどこか幻想的で。ダンジョンの外の森と違い、ダンジョン内の森は虫などの害虫がいないのでレベルが高い探索者からすれば外よりも過ごしやすいかもしれない。


「お?あれは鶏肉か」


森を歩く事数分、木々の間から姿を見せたのは探索者から鶏肉の愛称で知られている『レッサーバード』と言う名前の鶏だ。

大きさも、その肉質も。外にいる鶏と何ら変わらないのでよく狩られて食卓に上がる事から探索者には鶏肉と呼ばれている。

上位種になればお肉がおいしくなるので高級食材としても人気がある。


誰が言い出したかわからないが酷いあだ名だとは思う。


今日は『一角兎』の巣を攻略するつもりなので鶏肉は無視して通り過ぎていく。『レッサーバード』はこちらから攻撃しなければ向こうも攻撃してこないので安心して横を通り過ぎれる。

それでも一応ライオットシールドを構えて油断はしないようにしておくが。



森の中を順調に進み、時々『レッサーバード』や『一角兎』に出会うも無視して通り過ぎていく。


「あっ!」


視線の先、数十メートルぐらい離れた所に木の枝が組み合わさった小さな山みたいなのが出来ているのが見える。あれが『一角兎』の巣だ。

見える範囲だけで巣が5つはあるのが分かる。一つの巣に大体2~3匹いるはずなので10~15匹いる事になる。


巣がある場所は森の中の少し開けた所にあるので見えている範囲の巣で全てのようだ。


予備のマガジンがちゃんと腰にささっているのを確認して〝ハンドガン〟の安全装置を外しライオットシールドを構える。


透明な盾のライオットシールドで身を隠しながら横から〝ハンドガン〟を出して巣の一つを狙って撃つ。


「ぎゅ!?」


初弾はうまい事、巣に当たったみたいで『一角兎』が声を上げて外に出てくる。他の巣の『一角兎』も異常事態に気が付いたのか続いて外に出てくる。


落ち着いて狙い続けて射撃していく『一角兎』が倒れるのが見えると次の『一角兎』それもまた倒れると次と焦らず冷静に、だけど遅くならないように打ち続ける。


弾が切れスライドストップが起きる、一瞬ライオットシールドから手を放しすぐにマガジンを入れ替える。この辺の動作は何回も練習したので慌てることなくスムーズにマガジンを交換できた。


「きゅー!」


「くっ!」


数匹『一角兎』を倒せたが流石に全てを倒す事はできず、残りの『一角兎』が目の前まできてライオットシールドに突撃してきた。

『一角兎』はその名前の通り角が生えており突進されるとかなり危険だ、だがライオットシールドを構えていたので少し衝撃はあったが怪我の一つもなく『一角兎』を跳ね返せた。


突進してくる『一角兎』をいなしつつ撃ち続ける。


「リロード!」


ライオットシールドに当たる『一角兎』の衝撃を受け止めつつも〝ハンドガン〟を横に振りマガジンを飛ばしてリロードを素早く済ませる。

こういったリロード方法も動画を見て練習しておいたのだ。


それから5分か10分か体感ではそれぐらいだったが、なんとか全ての『一角兎』を倒す事に成功したようだ。


「はぁ、思ったよりきつかった……盾があってよかったな」


ライオットシールドを見てみるといくつものへこみと穴が空いてあった。生身で受けていたらと思うとぞっとする。


『レベルが上がりました、【GunSHOP】スキルのレベルが1から2になりました』


『一角兎』を倒し終わってほっと一息入れていると目の前にポップ画面が表示された。


「あ、スキルレベルが上がったか。まぁ確認する前に『一角兎』の血抜きを先にしよう」


スキルレベルが上がった事が気になるが先に『一角兎』の処理をする。ダンジョン協会に売るつもりでも、スキルでGPに変えるつもりでも。どっちでも行けるように先に血抜きを済ませる。



「こんなもんかな?よし、確認しよう」


倒して血抜きした『一角兎』を一か所に纏めてレベルアップを確認するためにステータス画面を開く。











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