KAC20233 ぐちゃぐちゃ

@wizard-T

万年二位男

「今度も新人すげえっすよね」


 ああ、聞き飽きた。本当聞き飽きた。

 定位置に座りながら酒をあおる俺の側で、俺の一つ下の後輩が新人の自慢をしやがる。


「なんでも絶対に攻撃が当たらねえとか、ウソかと思ってたけどマジっすからねえ。本当おごり高ぶらねえ姿勢もいいし」


 うちのギルドはまるで学校みてえだ。まあ学校かもしれねえけどな、冒険者学校とかって言うお仕着せの代物を出て来たような連中が真っ先に所属するっつーもんで。そこからやって来た坊ちゃん嬢ちゃんが冒険者の空気に慣れるために俺らのとこに来てるっつー話だけどよ、本当やたらすげえね。


「あなたのおかげでオーク30匹討伐に成功しました。お酒を控えて長生きして下さい」

「ゾンビ狩りに有効な魔法教えてくれてありがとうございます。これからも後輩たちを頼みます」

「何べんでも相手してくれたおかげで実戦の怖さを知りました」

 で、どいつもこいつも優等生なコメントばっかし。本当困ったガキんちょたちだよ。

 あー、ゴブリンを25匹狩って飲む酒がうめえ。

「で、ランキング発表も終わりましたしついに」

「ならねえよ、今度また来るんだろ。ものすげえ速度で動ける奴ってのが」


 炎魔法をとんでもねえ火力で使いこなせる奴。

 とんでもねえ握力を持ってる奴。

 モンスターをあっという間に懐かせられる奴。

 そんでついさっき言った、攻撃の絶対当たらない奴。


 本当とんでもねえ才能だね、すげえね。


「もしそんな才能が俺にあったら今頃女侍らせて酒飲んで金貨に埋もれて暮らしてるね」

 とかぶっこいてやったら「そうなれるように頑張ります」だってよ。いくら絡んでもあの連中、同じ事しか言わねえんだから。


「でも先輩って実際頼りになりますからね。

 冒険は往復だって、復路の事も考えなきゃダメだって。

 それから荷物は多いぐらいでいい、足りねえより余る方がまし。

 逃げるのは不名誉じゃねえ、生き恥はいくらでも取り返せる。

 みーんな素直に聞いてますよ」

「一人ぐらいへそ曲がりがいてもいいのによ……」

 俺が先輩風を吹かせてくどくど言ったとしても同じ。


 そのせいで、俺は永遠に二位。


 二位のまま、俺は冒険者として終わるのかもしれねえ。


 一位にとんでもねえのが出てきて、三位以下がどんなにぐちゃぐちゃになっても、俺は変わらねえ。


 ああ、今日も二位として飲む酒はうめえ。

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