第29話 ただの門番、爆乳も魔術と知る

 町はずれの廃材置き場。

 そこがハミィの魔術工房、兼、訓練場だった。


 地平線に埋もれかかった太陽が壊れた椅子や机を照らし、長い影をつくっている。探窟家の多いダビン共和国だからか、冒険用の装備類が山のように捨てられていた。


 ハミィがここで訓練するのは、廃材をスクラップにするためもあるようだ。


 ぎゅうぎゅうに丸められた剣の束や、古い鎧が散らばっている。

 ハミィの魔術跡だ。


 もしや圧縮魔術か?

 圧縮魔術はかなり高度な魔術と聞いている。

 独特でも、ハミィはやはり魔術の才にあふれているんだな。


 そのハミィは頑丈そうな大盾を、伸ばしてー、叩いてー、くるくるーっと丸めていた。


 魔術訓練の一つらしい。

 魔術すごい。大盾が飴細工のようだ。


 さてと、俺も魔術を使いこなせるよう訓練しよう。

 門番として、みんなの日常を守れるように。


 そして、サクラノの師匠であるならば、俺は強くなりたかった。


「せいっ!」


 ロングソードを鞘から抜く。

 鋭い風圧が飛んでいき、50数歩ほど離れた先の鎧を、真っ二つに割った。


 ハミィがパチパチとたどたどしく拍手する。


「す、すごいわ……。先輩の魔術は、ハミィより威力があるのね……。

 魔術師として優れている証拠よ……」

「でも俺、他の魔術を使えそうにないんだよな」

「だ、だったら、風魔術の適性が高いのかも……」


 ……そうなのだろうか。

 やっていることはただ素早く剣をふっているだけで、魔術らしきことはしていない。


 いまさらだが、純粋に俺の技術でないかと考え改めていたのだが……。


「ハ、ハミィはこれぐらいかな……風拳エアーハンド


 ハミィは正拳突きをかます。

 ボンッ、と空気が弾ける音がして、10数歩ほど離れた場所にある本棚が壊れた。


「ハ、ハミィは土魔術の適性が高いから……。風魔術はてんでなの」


 ハミィはいたって真剣だ。

 拳圧で本棚を壊したなんてこれっぽっちも思っていない表情。


 やはり、俺たちのコレは魔術なのだ。


「うーん、俺に合った魔術か。

 今まで魔術を意識して使ってこなかったから、自分にはなにが使えるのかわからないな」


 この魔術はかなり独特だ。

 ハミィも俺以外に使える者は今まで見たことないと言っていた。


「だ、だったら……。ハミィが先輩に合った魔術を手取り足取りで教えてあげるわ……。

 わ、わたしに触れられて、気持ち悪くなければだけれど……」

「そ、そんなことないない! ぜひお願いするよ!」

「…………ホント?」

「ホントホント!」


 ハミィはちょっぴり明るい表情になり、俺の側までテテテと歩みよる。


 そして、牛柄ビキニの爆乳ごと、俺の腕にぐにゅりっと押しあててきた。


「⁉⁉⁉」

「えっとね、先輩に合った魔術は――」


 なにこの弾力⁉⁉⁉

 上質なミノ肉か⁉⁉ 


 吸いこまれるような柔らかさ、それでいてハリのある弾力!

 これが獣人の胸なのか!

 この弾力でいったいどれだけの者が救われるのか!


 腕から伝わる超ド級の破壊力に頭がバグりかける。


「先輩? 先輩? き、聞いているの……?」

「ああ……」


 な、なにも考えられん。

 いや、乳の感触ばかり頭に思い浮かぶ。


 このままではいかん。

 正直に伝えよう。


「ハ、ハミィ……む、胸……」

「? ⁉ っっっっっ⁉⁉⁉」


 ハミィは真っ赤になって俺から離れて、その爆乳を両腕で隠した。

 ビキニからはみだした爆乳はむにょりと形を変えていて、その柔らかさを俺にまた思い起させる。


 ――コシのあるプリンッ‼


 そうやって気が動転しそうな俺に、ハミィが涙目で謝ってくる。


「ごめんね……ごめんね……」

「え?」

「ビックリしたよね……。ハ、ハミィの胸は小さい頃から大きくて……『ハミ乳ハミィ』の胸は人をダメにする、なんてからかわれたり……。

 先輩には……む、胸だけの女だなんて思われたくないのに……」


 ……大きな胸にコンプレックスがあるみたいだ。


 たしかに目立つし、視線を独占するだろう。

 小さな頃、同年代の子にからかわれても仕方ないかもしれない。

 今だって、熟女好きの俺の意識が乳一色になる破壊力があった。


 いや……まてよ?


「なあハミィ。もしかしてさ、?」

「へっ……?」


 ハミィは何度かまばたいたあと、理解しづらそうに首をかたげた。

 しかし冗談じゃないとわかったのか、俺の言葉を待っている。


「俺たちの魔術系統は……どうも、体術と密接にかかわっているように思える。

 身体能力が直接魔術の威力に左右しているのならば、肉体的な特徴もなんらかの魔術が働いている可能性があるかもしれないぞ?」

「つまり、ハミィの胸が大きいのは……魔術のせい?」


 俺はその通りだと大真面目にうなずいた。


「ああ。俺……さ。

 ハミィに胸を押しあてられて、意識がふっとびかけた。

 今だって視線が胸に誘導されそうになっている」

「っ~~~~~」


 ハミィは恥ずかしそうに唇を結ぶ。


「だけど、それは金縛りの魔術……。あるいは、束縛の魔術だとしたら?」


 ハミィはハッと気づいた表情になり、腕をほどいた。

 大きな胸がバルンッと揺れる。


「……あ、ありえるかも。

 ハ、ハミィの魔術は、自分でもわかっていない部分が多いから」


 ハミィはぶつぶつと小声になる。

 しばらく考えこんでいるようだったが、なにかを決心した顔になった。


「せ、せ、先輩……っ」


 ハミィは爆乳を押しあげるように、両手をそっと添えてきた。

 乳はさらに二つの大きな山となり、綺麗な稜線を描いている。


「⁉⁉⁉」


 俺の視界は、乳一色に染まってしまう。


 そこには乳しかない。

 乳しか見えんのだ。


 ガン見しつづけるのは失礼だとどうにか視線を外せば、顔面真っ赤のハミィが上目遣いでたずねてきた。


「ど、どう……? 先輩? ハミィの魔術に……かかった?」

「あ、ああっ……!」


 俺は興奮しながら叫ぶ。


「視界が乳一色になったよ! ハミィの爆乳が頭を支配した……!

 ハミィ! これはすごい魔術だよっ!」

「……ホント?」

「ホントのホントだ!」

「だ、だったら……! せ、戦闘系以外にも、補助魔術の素質があるのかも……!」


 気を良くしたのか、ハミィは嬉しそうに微笑む。

 赤面もしているのでかなり色っぽいが、これも魔術の一つなのだろう。


 するとハミィは、今度はおもむろに爆乳を掴む。

 そして上目遣いのまま、上下左右に乳を揉みしだいてきた。


「⁉⁉⁉⁉⁉⁉」

「せ、先輩……どう? ハミィの魔術、効いている……?」

「――――――」

「せ、先輩、こ、声もでないんだ……。この新しい魔術すごい……!」


 ハミィはさらにぐにょぐにょと爆乳を操った。


 揉みしだかれるたび、爆乳が変幻自在に蠢いている。

 ハミィの細い指が、どっぷりと乳に埋もれていた。

 どれだけ柔らかくて弾力があるのか教えるように、ハミィの指先が艶めかしく動く。俺は触ってもいないのに、あの乳の感触が伝わってくるようだった。


 ハミィはハァハァと息が荒くなっている

 魔術の副作用か?


 うっとりと熱っぽい瞳を送ってくる彼女の痴態……否、魔術はもはや禁術だ。


「先輩……先輩……先輩……っ」 

「―――」


 乳。乳。乳。

 ちーちちち。


 なにも……考えられなくなってしまう……。


 そして、ハミィは乳を大きくはずませると、ぶるりと身体を震わした。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 ハミィは荒くなった息を気持ちよさそうに整えている。

 ゆっくりと爆乳から指を離して、甘ったるい声でたずねてきた。


「どう、だったかな……? せんぱい……」

「す、すごい、良かったよ……」

「え、えへへ……この魔術、効果はすごいけれど、恥ずかしすぎるから……。

 ひ、人前では使えないわね……」


 ハミィは両手でパタパタと顔を煽いでいた。

 魔術を酷使しすぎたようだ。

 火照ったのか、ほんのりと汗をかいている。

 垂れた汗がハミィの爆乳をテカテカと光らせて、俺はまたも爆乳に釘付けになってしまう。


 魔術を解いてもなお、まだ効果があるとは……。

 さすが稀代の魔術師ハミィ=ガイロード……。

 おそろしい術だ。


 俺もふううと熱い息を吐く。

 全身がポカポカだ。


 それはハミィも同じようで、目が合うなりなんだかこそばいゆい空気が流れる。


「せ、せ、先輩……。きょ、今日はもうこれで特訓は終わりにしよっか……」

「そ、そうだな……これで解散……ああ、いや」


 魔術特訓も大事だが、俺は一番大事なことを聞かなければいけなかった。


「……ハミィ、超古代の兵器が町に迫っていると聞いたんだが」

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