好きな人とぐちゃぐちゃと【KAC20233参加短編】

うり北 うりこ

好きな人とぐちゃぐちゃと


 まぜるな危険!


 そんな感情をぐちゃぐちゃに煮詰めて垂れ流している幼馴染を見るのは何度目だろうか。


「今度は何があったんだ?」

「フラれた」

「あーー」


 だよなぁ、フラれるよな。と心のなかで激しく同意する。幼馴染のリコは見た目は可愛いのですぐに彼氏ができるのだが長続きはしない。


「理由は?」

「気持ち悪いって」

「あーー」

「否定してよ!」

「いや、リコが気持ち悪いのは事実だし」


 そう、リコは気持ち悪い。数分以内に返信がなければ着信の嵐。30分折り返しがなければ相手の場所まで突撃する。どうして場所が分かるかって? こっそりGPSアプリを彼氏の携帯に入れているのだ。恐ろしい。


「もう嫌だ。なんでいつも上手くいかないの」

「常に連絡しろなんて普通に無理だろ」

「だって寂しいんだもん」


 リコは異常なほど彼氏に依存する。どこにいて、何をして、誰といて、何を食べて何を見て何を聞いて……、とにかく全てを知りたがる。

 そして、その場所、人、物にすら嫉妬し、憎悪し、敵意を向ける。


「寂しいからトモヤがかまって」

「かまってるだろ」

「じゃあ、付き合って。彼氏になって」

「無理。俺、リナのこと愛してるから」

「んなこと知ってるよ。ばーーかっっ! あー、さみしい。彼氏欲しい。リナはいいなぁ、トモヤに愛されてて」


 自分の一つ下の妹まで羨むとは、今回も面倒なやつだ。だが、それがリコなのだから仕方がない。


「俺が何歳からリナ一筋か知ってるだろ?」

「5歳でしょ? 気持ち悪い」

「お前なぁ……」

「トモヤなんてリナにフラれちゃえばいいんだ!」

「ふざけんなよ? 元気になったんならもう行くからな。あんまりリナに心配かけるなよ」


 そう言って部屋を出る俺にリコはテーブルにつっぷしながら手を振っている。



「しょうがないじゃん。トモヤとは付き合えないんだからさ」


 その呟きは誰にも聞かれることなく、ぐちゃぐちゃに濡れた袖に消えていった。

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