一発の銃声

 二人は身繕いをして衣服を着た。

 マヤの『金色の光』は消え、レンの『青白い光』は消えそうな位に薄くなっていた。

「ボクの光は、体力に比例しているみたいだ」

「夜間に逃げる予定だったのに、結構体力を消耗してしまったな」

 レンは少し笑い、残っていた食料を食べ始めた。食べると光は明るくなっていった。


「私の光はレンに対する思いが光って出たのね」

「レンと一つになれて満足したから、消えてしまったわ」

 マヤはレンの隣に座り、もたれ掛かる。

「私、もう一度お父様を説得してレンとの交際を認めてもらうわ!」

「『白金族』と『玄武族』が本当に愛し合えば『虹』が生まれるって事を伝えて」

「それをお父様の前で証明したいわ」


「二人で市長の目の前で愛し合うのかい?」

 レンは悪戯っぽく言った。


「そうじゃなくて…… いやらしい人ね!」

 冗談でマヤは軽くレンの頬を叩いた。

 二人の肌が触れ合った時、二人の体が『虹色』に輝いて消えた。


「……⁈」

「……⁈」


 二人は見つめ合い、今度は握手をした。手と手が握り合った時に再び二人は『虹色』に光り、手を離すとマヤの光は消え、レンの光は青白くなった。

「二人が深く愛し合うと、肌が触れ合うだけで『虹』ができるのね……」

 マヤは力強くレンに言った。

「これなら、私の話をお父様は信じて下さるわ!」

「レン、行きましょう! これからお父様に会って『虹』を見せて説得しましょう!」

「暗いうちに会わないと、見えなくなるから……」

「工場の入口の警官に言って、お父様をここへ呼んでもらいましょう」

「常夜灯の無いここなら、『虹』を見せる事が出来ますわ!」

「解ったよ、ボクも一緒に行く!」

 レンは頷いて立ち上がった。


 二人は持ち場の外へ出ようとした。

「ちょっとまって!」

 マヤがレンを引き止める。

「お父様が来るまで『虹』は秘密にしましょう」

 マヤはゴミの中から黒い布を取り出し、頭から被る。

「これなら、不意に触れ合っても『虹』は出ないわ」

「お父様は『虹』を見たら、どんな顔をするかしら」

 マヤは黒い布の合わせ目から顔を出し、悪戯っぽく笑った。

 二人は廊下に出て工場の入口へ向かった。



 その長い廊下の反対側には警備の警官隊が居た。

「小隊長! 廊下の向こう側に二つの人影が見えます!」

「一つは白い影です、もう一つは黒い影です!」

 警官隊の小隊長は判断する。

「白い人影は『白金族』のマヤお嬢様だな、黒い方は『玄武族』の男だろう」

「市長から『玄武族』の男は殺しても良いと命令されている」

「おい狙撃手! 白い影の隣の黒い影を狙って撃て!」

「白い方には当てるなよ!」


 銃声がして、黒い影が倒れた……

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