真夜中の訪問者
ある日の深夜、レンの部屋のドアにノックの音がした。レンがドアを開けると、そこにはマヤが立っていた。慌ててレンはマヤを引き入れて、ドアを閉めて鍵をかけた。
「寮の他の人に見付からなかったのかい?」
「大丈夫よ! 静かに、ゆっくりと歩いて来たから!」
「ここまで、どうやって来たの?」
「セバスが車で送ってくれたのよ」
「レンも知っている通り、セバスは私達の味方よ」
「知ってはいたけれど……」
レンはマヤを椅子に座る様に勧た後に台所に立ち、インスタントコーヒーを淹れてマヤに差し出す。
「お口に合いますかどうか」
「大丈夫よ! こう言うチープな味も好みですわ」
「あらっ、ごめんなさいね! 失礼な事を言って……」
マヤはペロリと舌を出す。
コーヒーを飲んで落ち着いたマヤは話し出した。
「誕生日パーティーでの出来事は、後からセバスに聞いて知ったわ」
「お父様がレンに行った失礼な振る舞いも……」
「あの絵の具セットは私がレンの為に用意した物なの」
「パーティーの時にお礼の意味で渡そうとしていたの」
「私の絵を描いた時、レンの持っていた絵の具は余りにも貧弱だったわ」
「少ない絵の具のせいで、十分な絵を描けなかった事も、私知っていたの」
「それをお父様は勝手に持ち出して、手切れ金と一緒にレンに渡すなんて……」
「お父様に代わって謝罪いたしますわ」
そう言って、マヤはレンに向かって深々と頭を下げた。
「もうそんなには気にしていないから、大丈夫だよ!」
「『玄武族』と『白金族』の関係では当たり前の事だから……」
レンは慌ててマヤの下げた頭を優しく起こした。
起き上がったマヤの目からは、沢山の涙が溢れ出てていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます