誕生日パーティー
次の休日にレンの部屋にセバスが迎えに来た。レンは手持ちの服の中で、一番上等で綺麗な服を着てセバスの運転する車にに乗った。
「ねぇセバス、マヤは元気かな?」
「……」
「市長様はボクの絵を見て、何か言ってましたか?」
「……」
「セバスはあの絵を見て、どう思った?」
「……」
「パーティーはどの位の人が出席するの?」
「……」
「ボクなんか出席しても、迷惑だよね?」
「大丈夫ですよ、お嬢様は御主人様を一生懸命に説得していましたから」
「ありがとう、セバス」
「……」
レンは、後は黙って車に揺られていた。
「よく来て下さったね、娘から良く話を聞いているよ!」
満面の笑みを浮かべて、市長はレンを労ってくれた。
「さぁ、こっちに来なさい!」
「みなさんに君を紹介しよう!」
市長は会場の真ん中へレンを連れて来ると、会場の出席者に大声で呼び掛けた。
「この『玄武族』の青年は、娘のマヤの新しいお友達です!」
「新進気鋭の画家だそうだ!」
「将来有望の青年だ!」
「彼のように、『玄武族』でも趣味や余暇を過ごすようになったのだ!」
「これも我が市の政策が徐々に浸透した結果である!」
「ぜひ! 次期選挙でも、わたくしに清き一票をお願いいたします!」
会場が万雷の拍手に包まれた。
戸惑うレンに、人々が次々と握手を求め始めた。レンは一人一人に誠意を持って握手した。
しかし、レンは気付いていた。レンと握手をした人は、必ず近くあるフィンガーボールで手を洗っていたのだ。
「まぁ、こんな物だよなぁ…」
レンは心の中で深いため息を吐いていた。
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