お弁当

綴。

第1話 お弁当

 ぼくは今日はとっても嬉しくて、スキップをして行ったんだ。

 いつもの颯ちゃんとの待ち合わせ場所に。


「おはよう!颯ちゃーん!」

「おはよう!広くん!」

「今日は楽しみだね!」

 って、ぼくは颯ちゃんに言って。

「うん、広くんと一緒にお絵かきするんだってママとお話してきたんだ!」

 って、颯ちゃんは嬉しそうにぼくに言ってくれた。

「うん、しよう!しよう!」


 一年生になって、初めて学校の近くの大きな公園までお散歩にいく日だ。

 緑色の葉っぱも増えてきたけれど、桜の花もまだ残っている。


 先生の後をついて、皆で並んで歩いていく。

「広くん!あっちにいこっ!」

「うん、颯ちゃん!」

 ぼくたちは、仲良く手を繋いで走った。

 綺麗な桜の花が見える場所に並んで座った。

 クレヨンを使って、画用紙いっぱいに桜の木や小さなお花の絵も書いた。


「颯ちゃん、聞いて!今日ね、ママはお仕事お休みなんだ。だからお家に帰ったらママが待っていてくれるんだ!」

 ぼくは嬉しくて颯ちゃんに話した。

「広くん、良かったね!ぼくのママはいつもお家に居るけれど、凪ちゃんのお世話で忙しいんだ」

「そっか。颯ちゃん、すごいね。お兄ちゃんだろ?」

「そう、ぼくはお兄ちゃんだ」

 そんな事を話ながらお絵かきをした。


「みんなー、そろそろお昼ごはんにしましよう!」

 先生に呼ばれて、ぼくたちは走っていった。


 ぼくは颯ちゃんと並んで座って、お弁当箱を開けた。

「あ、広くんのお弁当」

「ぅわーーーーん!ぅわーーーーん!」

 ぼくは泣いてしまった。


 ママはお仕事で毎日忙しいんだ。

 でも今日は、ぼくの為に早起きをしてお弁当を作ってくれたんだ。

 大好きなオムライスと桜の花の形をしたかまぼこを飾って、ブロッコリーを入れて。

「広くん、今日はこんなお弁当みたいな場所でお絵かきするんだね!」

 って。

 ママのオムライスはにっこりと笑っていた。


………なのに。

 にっこり笑っていたオムライスは泣いていて、桜のかまぼこも違う場所にいっちゃって。

 ぼくのお弁当はぐちゃぐちゃになっていた。


「ぅわーーーーん!」

 泣いてるぼくの肩を、颯ちゃんがとんとんしてくれる。

「大丈夫だよ、広くん!広くんが嬉しくてスキップして来ちゃったから。オムライスも嬉しくてお弁当箱の中で飛びはねちゃったんだよ!ちゃんと食べれるよ!ねっ!」


 ぼくは上着で涙や鼻水を拭いてお弁当箱の中を見た。

「オムライスも嬉しかったの?」

「そう、きっとママが魔法をかけすぎたのかもね!」

「うん!そっかぁ!」

 そう言って、ぼくたちは一緒にお弁当を食べた。

 跳び跳ねてぐちゃぐちゃになったお弁当は、とってもおいしかった。



「ただいまー!」

「おかえり、広くん!楽しかった?」

「うん!オムライスがぐちゃぐちゃになるほど跳び跳ねてたよ!」

「ん?」

 と、ママは不思議そうな顔をしていたけれど。

 空っぽになったお弁当箱を見てにっこりと笑っていた。

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お弁当 綴。 @HOO-MII

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