神の悪戯「KACお題:ぐちゃぐちゃ」

雨上がりの空

神の悪戯

突然パッと目が覚めて天井を見る。

少し大きい紙が貼ってある。


『落ち着いて布団から出ろ。まずはサイドテーブルを見ろ。』


え?一体何なんだこの紙。


ベッドのすぐ左横に置いてあるサイドテーブルを見る。

また貼り紙だ。


『今日もとにかく頑張ろう!』


は?これは誰が書いた?まさか俺?

2日酔いでも無さそうだし、でもこんなの書いた記憶が全く無い。


「意味わかんねぇ。誰かのイタズラか?あ!」


思い出したように焦って側にあった携帯を見ると、今日が日曜だった事を確認してホッとする。


「良かったー。今日休みか。それにしてもこの貼り紙なんだ?」


部屋を見渡すと、あちこちに貼り紙が貼ってある。

一番近くの本棚にも貼ってあった。


『詳しくはテーブルの青いノートを見ろ。』


良く見ると他の張り紙にも同じ事が書いてある。


全く何の事か分からない俺は、早速そのノートを開く事にした。


『昨日までの俺の記憶』


ノートの表紙にはそう書かれているが、自分が用意して書いた記憶が全く無い。


「良く分かんないけど開いてみるか。」


1枚めくると、紙がテープでとめられていた。


その一番上には『検査結果』と書いてある。

急いで続きを読む。


『松下様の診断結果は【ぐちゃぐちゃ病】という世界初の奇病です。本来なら暫く当院で入院をしていただきたい所ですが、松下様の強いご要望により、自宅で過ごして頂くことになりました。ご不明な点がありましたら当院まで連絡下さい。』


下の方に病院名、電話番号等が書かれていた。

それにしても、ぐちゃぐちゃ病って一体何なんだ?フザけた名前だし本当にこんな病気あるのか?


朝起きてから今まで、訳が分からない事だらけだが手掛かりはこのノートしかない。

とりあえず次のページをめくる。


『ぐちゃぐちゃ病とは』


「お、病気の事か。」


『この病気は、脳の後天性によるもので、今回初めて発見されました。本来あるべき所に脳が収まっておらず、手術で治せるものではありません。また症状ですが、当日の記憶しか持てず、眠って翌日起きるとまた記憶がリセットされます。これだけではありません。詳細が知りたい場合は、テレビをつけて1チャンネルをご覧下さい。』


思わず自分の頭を触る。頭の形は正常だ。


「何で俺んちのテレビで詳細見れる事になってんだ?長ったらしい説明なんて要らないんだよなーったく。」


気だるそうにテレビの前まで歩き、少し乱暴にリモコンを取りチャンネル1を押す。


ピッ


白衣を着た男が現れた。


『松下様、おはようございます。ご気分は如何でしょうか。』


にこやかに話すその医者らしき男は、よく見ると俺とそっくりの顔をしていた。


「うわ、気持ちわりーな。俺にそっくりじゃねぇか。」 


『ゆっくり休めましたか?では早速、ぐちゃぐちゃ病について説…い……』


「おい!おい!何で大事な所で途切れるんだよ!」


リモコンを手に取り再度1チャンネルをグッと押すと、右手に変な感覚を覚えた。

今持ったはずのリモコンが有り得ない形でぐちゃぐちゃになっている。プラスチックが混ざり合い、それはもうリモコンとは言えないただの塊だ。


「は?何でこうなるんだよ!」


バン!


テレビを叩くと、リモコン同様それは黒い塊になった。

一瞬で頭が真っ白になり、次の瞬間には俺の記憶は無くなっていた。











『また失敗…ですね。』

『そうですね。これでは幾つセットを準備しても足りませんよ。では…次はプランCにしましょう。』

『分かりました。セットの準備に2、3日かかるのでこのまま眠ってて貰いましょう。』











【ぐちゃぐちゃ病とは、後天性の脳の病気である。脳の位置が変わり、人の顔全てが自分と同じ顔に見える。また、その者に本来の数百倍の力が宿り、周りの物をぐちゃぐちゃに溶かしてしまう。物を溶かした後は数日間の眠りにつく。直ちに生活環境を整える必要がある奇病である。】

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