親友だと思っていた女友達に突如告白された俺。頭の中が混乱状態でぐちゃぐちゃです

さばりん

友達だと思っていたクラスメイトから告白された

 放課後、夕日が西の空へ沈む中、学校近くのコンビニの駐車場で、雅也まさやはクラスメイトの晴香はるかと一緒にアイスを食べていた。


 まだまだ残暑残る九月上旬。

 山々には生い茂った木々が靡き、そよ風に揺られて葉の音が心地よい。

 となりでカップアイスを美味しそうに食べる晴香。

 雅也は自身のもモナカアイスと見比べ、春香の食べているアイスが羨ましくなってしまった。


「晴香、アイス一口くれよ」

「えぇ……もう、しょうがないな」


 唇を尖らせて、不満げな顔を浮かべつつ、春香は木のスプーンで一口分掬ってくれる。


「はい、あーん」

「あむっ」


 雅也は晴香から差し出されたアイスをパクっと咀嚼する。

 刹那、クリーミーなバニラビーンズの風味が口の中に広がった。


「んんっ、上手い。晴香の方のアイスにすればよかったなぁ」

「モナカの方、美味しくないの?」

「いや、美味しいは美味しいけど、モナカがポソポソしてて喉が渇くんだよ」

「もう……だから飲み物もセットで買えばっていったのに」


 やれやれと言った感じで肩を竦める晴香。

 雅也もあははと頭を掻くことしか出来ない。


 アイスを食べ終えて、ゴミ箱に捨ててから、再び歩き出す。

 背中に夕日を浴びつつ、二人分の影がアスファルトに伸びていた。


「ねぇ雅也」

「ん、なんだ?」


 唐突に晴香が話しかけてきて、雅也が返事を返すも、晴香から言葉の続きがない。

 どうしたのだろうと思って隣を見れば、春香は立ち止まって視線を下に向けていた。


「どうしたんだ? 大丈夫か?」


 雅也は心配して晴香の元へ近寄ると、春香が指を突き合わせながら尋ねてくる。


「あのさ……私達、もう中学からの仲でしょ?」

「えっ、まあそうだな」


 晴香とは、かれこれ五年ぐらいの付き合いになるだろうか。

 こうして二人気兼ねなく話せるのも、培ってきた年月があってこそだ。


「そのさ……雅也って今、好きな人とかいたりする?」

「好きな人? 別にいないけど」

「そっか……」


 急に好きな人の話など尋ねてきて、何の確認だ?

 疑問は増すばかりで、雅也の頭の上にはクエスションマークが浮かんでいる。

 すると、晴香は覚悟を決めた様子で顔を上げると、胸に手を当てて言い放つ。


「雅也が良かったらだけどさ。私達、付き合ってみない?」


 突然放たれた晴香からの告白。

 瞬間、強めの風が二人の間を通り抜ける。


 髪を靡かせ、頬を染めつつ、上目遣いにこちらを見据えてくる晴香。

 どうやら、冗談で言っている様子ではなさそうだ。


「えっと……急にどうして?」

「急になんかじゃないよ。私はずっと、雅也の事、好きだったんだから」

「……えっ⁉」


 まさかのカミングアウトの連続に、雅也は開いた口が塞がらない。

 晴香は仲の良い悪友みたいな存在だとばかり思っていたのに、ずっと行為を抱いてくれていたと打ち明けたのだ。

 動揺するに決まってる。


「返事は今度でいいから、私先に帰るね」


 その場にいるのが耐えられなくなった晴香は、雅也の横をすり抜けて、走り去って行ってしまう。

 雅也は一人取り残され、ただ呆然と去っていく晴香を眺めることしか出来なかった。



 ◇◇◇



「ただいまー」


 あれから、どれぐらいの時間が経ったのであろう。

 外は夜闇に包まれており、家にも人の気配はない。

 両親は今頃仕事を終えて、帰宅途中であろう。


 雅也は階段を登っていき、自室へと辿り着く。

 そして、背負っていたバッグを投げ飛ばして、そのままベッドへ倒れ込み、枕へ顔を埋めた。


「~~~~~~~~」


 足をばたつかせて、悶絶する雅也。

 無理もない、だって今まで仲の良い異性の友達だと思っていた春香から好意を伝えられたのだから。


「あぁもう! どうしたらいいんだよ!!」


 雅也の頭のキャパをはるかに超えてしまい、もう何をしたらいいのかも分からない。

 頭の中はぐちゃぐちゃで、まともな思考を展開できそうにない。

 雅也は枕を抱き締めて、きゅっと唇を引き結ぶ。


「晴香……ずっと俺の事好きだったのか」


 改めて口にすると、恥ずかしさが込み上げてきてしまい、雅也は再び枕へ顔を埋めることしか出来なかった。


「なんで俺は、こんなにドキドキさせられてんだよ」


 無駄に心臓の音がドクン、ドクンと脈を打ち、鳴りやむことを忘れたかのように血液を体内へと循環させていく。


「クソッ……可愛いじゃねぇか。バカ野郎」


 結局、雅也は謎のテンションになってしまい、明け方まで寝付くことが出来なくなってしまうのであった。



 ◇◇◇



 翌朝、雅也は重い瞼を開きつつ、学校への通学路を歩いていた。

 相変わらず気分は高揚してるのに、頭は重い。

 寝不足のせいで思考が回っていないようだ。

 気怠い表情を浮かべながら、重い足取りで学校へと向かっていると、四つ角に見覚えのある制服姿の生徒を見つけた。


「おはよ、雅也」

「お、おう……おはよう」


 春香は、素っ気ない感じで挨拶を交わすと、当たり前のように雅也の隣へ並んだ。

 表情はポーカーフェースを装っているものの、どこか落ち着かないのか、ソワソワとしている。

 そんな春香が面白くて、雅也はついふっと笑みをこぼしてしまう。


「なっ、何?」

「いやっ、何でもない」


 雅也は今まで考えていたことが馬鹿らしくなっていた。

 春香がどういう思いで雅也の隣にい続けてくれていたのかということを、今ようやく理解できたような気がしたのだから。

 雅也は柔らかい笑みを浮かべつつ、春香の肩に手を添えて、今できる全力の言葉を春香へ添えた。


「俺も好きだ。付き合おう、俺達」


 刹那、朝の心地よい風が、二人の間を通り抜けた。

 春香は、今返事をさせると思っていなかったらしい。

 驚いた様子で目を真ん丸にしている。

 がしかし、状況が呑み込めてきたのか、徐々に顔を真っ赤に染め上げていく。

 そして、視線をうろちょろと彷徨わせて逃げ場を探すものの、雅也が春香の肩をガジっと掴んでいるので逃げられない。

 春香はごくりと生唾を飲み込んでから、ふっと安堵したように破願した。


「もう……遅いっつーの。バーカ」


 その言葉とは裏腹に、春香の表情は満面の笑顔で満ち溢れているのであった。

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