人生の意味

キザなRye

第1話

 僕が少し遠出をして県内随一のショッピングセンターに行った日、久しぶりに母に出会でくわした。大学を卒業したきり実家に帰ることも両親に会うこともなかった。僕自身一人っ子で両親が親戚たちと疎遠なので“家族”という言葉で括られる人たちが両親だけであった。

 そんな両親は僕のことを良く思っていなかったらしい。元々父が子どもに対して可愛いなどの肯定的な感情を抱いたことがないらしく、朝から夜までキーキーうるさい奴といった程度しか僕のことを考えていなかったらしい。母は母で思い描く進路に僕が進まなかったことが許せなかったらしい。母の中では自分の子どもに通っていって欲しいレールのようなものがあったらしいが、早い段階で僕が別のレールに舵を切ってしまったが為にこうなっている。

 僕の方が母よりも先に母の存在に気付いて少ししてから母も僕に気付いた。気付いた瞬間は気まずそうな顔になってバレないように逃げようとしていた。僕が目線を送ると母は逃げるのを止めて僕の方に来た。

「あんた、まだ生きとったんか」

ずっばと刺さる言葉を近づいてきて開口一番に言われた。僕自身、両親にどう思われているのかは知らなかったが、やはり嫌われているんだなと感じた。分かってはいたが、実際にその言葉を口にされると精神的にどんとくるものがある。

「生きてて悪かったね」

強がっておかないと自分のメンタルがただではいられないなと感じていたので感じ悪いくらいに強く言った。多分ドラマでは悪役が言ってそうな口調だったと思う。

 僕も母も機嫌が悪い感じでそのまま別々に歩いて行った。僕にとっても母にとってもずっと一緒にいることは精神衛生上良いとは言えなかった。早々に撤退することが最善の策だっただろう。

 僕は家に帰ってからずしんと精神がやられた。どこか片隅に思っていた部分はあったが、どうしてもこうなってしまう。気持ち的にもぐちゃぐちゃになっていたし、自分の人生を考えると絶対に出会わない方が良い人であることは確かである。

 巡りに巡った噂によると家に帰った母が父に僕と出会ったことを伝えたそうだが、特に大きな反応はしなかったらしい。母としては自分と同じかそれ以上に嫌悪感を抱くと思っていたらしいが、思い通りに行かなくて周りに愚痴をこぼしていたらしい。これが噂の種になっていると聞いた。

 父が今僕に対してプラスの気持ちを抱いているのか、マイナスの気持ちを抱いているのかは分からない。出会ったときに母と同様に罵詈雑言を並べられるとこの世に未練を持たずに“死”を迎えることとなるだろう。

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人生の意味 キザなRye @yosukew1616

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