第5話 一手
☆凪島胡蝶サイド☆
正直言ってあの女の子は全く信頼出来ないと思う。
誰かと言えば矢川小春だ。
私が言える立場かどうか知らないけど歪んでいる気がする。
それも相当なものだと思う。
私が矢川くんを守ってあげなくちゃ、と思う。
そう、私が全てなのだから。
思いながら私はニヤッと笑みを浮かべた。
何というか屋上に向かう階段ですれ違った時。
私が挨拶したにも関わらず矢川くんの妹さんは私を死神の様な目でそのまま射抜いたから、だ。
挨拶どころか会釈も無かった。
最低な女の子だと思う。
ガチで最低だ。
何というか信じられない。
「.....その分.....私が守ってあげないとね」
私はそんな事を思いながら目を潤ませる。
笑顔が止まらない。
何というか私は放課後になって私の家に矢川くんを呼ぶ事になった。
勿論最高峰の準備をしている。
そして.....あの女の子の事を忘れさせて溺れさせる。
窒息させても良いぐらいに窒息させてあげようと思う。
愛の渦に、だ。
そう考えながら鼻歌混じりに部屋を片しているとインターフォンが鳴った。
約束の時間までやけに早すぎるのだが。
私は警戒しながら?を浮かべる。
それからインターフォンに返事をした。
何だろうか。
「はい」
「.....ここは凪島先輩の部屋で合っていますか」
「.....合ってるよ〜。もしかして小春ちゃん?」
「.....貴方に小春と呼ばれる筋合いは無いです」
私はニコッと笑みを浮かべながらドアを開ける。
すると笑みを浮かべた小春さんが立っていた。
私も笑顔で対応する。
何しに来たの?貴方、と言いながら。
そうしていると、話があります、と言ってくる小春ちゃん。
「.....はい」
「要件は1つです。.....もう二度とお兄ちゃんに近付かないで下さい。これ以上近付くと貴方の命の保証が出来ませんよ」
「.....それを嫌って言ったら?」
「それなりのご対応を取ります」
「ふーん。でも捕まったら終わりだよ?警察に」
「.....睡眠薬とかで貴方を眠らせて多少ボコボコにするぐらいならありでしょう?お兄ちゃんの為ですから」
私はその言葉に、アハハ。それをやるのかな?そんな事を。悲しむよ?家族さんが、と言ってみる。
すると、お兄ちゃんの為にやるって言ったらどうなんでしょうか?、とニコッとする小春ちゃん。
私は瞳孔を開いて反応する。
嫌だ、って言っておくね。
私はあの人に惚れているの、とも。
「諦めないんですね?」
「そうだね。どちらかと言えばノーと言っておくね」
「.....そうですか。残念です。.....あ。この場にお兄ちゃんは来ません」
「.....それは何故かな?」
「私は先回りして貴方の性格をお兄ちゃんにバラしました」
「.....そう。.....最低だね。女狐が」
「それを言うならあなたは阿婆擦れですね」
そんな感じで言い合いながら。
私は深刻そうな目を向ける。
何と最低だろうかこの女。
今直ぐにでも消し飛ばしたい気分である。
私はそう考えながら目の前の女狐を睨んでみる。
「.....言い合っても仕方がないね。アハハ」
「.....そうですね。でも貴方にはもう二度とお兄ちゃんを近付けたくないですから近付かないで下さいね。.....お兄ちゃんも納得したみたいだし」
「.....」
私は無意識に彼女の頬を殴ろうとしていた。
しかしその手は止まる。
危ない危ない。
捕まる訳にはいかない。
警官に.....。
「.....ねえ。貴方は何でそんなに最低なの?」
「.....貴方に言われたくないですね。.....私はお兄ちゃんが全てなんです。.....だから貴方みたいなゴミクズに言われたくないです」
「.....ハァ.....」
私はその言葉にもう諦めた。
そうなってしまったのならもう仕方がない。
取り敢えずは今はこの目の前の敵を倒す事だけを考えよう。
思いながら私は笑顔になる。
それから、ねえ。上がる?、と聞いてみる。
「冗談でしょう。.....上がりませんよ。敵さんのアジトに」
「そっか。やっぱり貴方は最低だね」
「.....私も貴方は最低極まりないって思っています。丁度良かったです」
「.....」
「.....」
私達は睨みながら真顔になる。
だけど途中で疲れた。
私は呆れてそのまま踵を返してから.....室内に入る。
それから背後を睨む。
帰って、と言いながら。
すると、はい、と機械の音声の様な返事で返事してからそのままドアが閉まる。
その姿を見送ってから。
私は1分ぐらい経った後に机を思いっきり蹴っ飛ばした。
そして机のものが飛んで思いっきり散乱する。
あの女狐。
「.....クソ女め.....絶対に私は渡さない。.....矢川くんは私のものだ」
そんな事を私は呟きながら笑みを浮かべる。
社会的に抹殺してやろうか?冗談抜きで。
思いながら私は絶対に許せない世界を睨み。
それから階段を降りて帰って行く小春ちゃんの姿を窓から見送った。
クソッタレめが許さない。
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