第55話

 僕はリスヘルとなった。僕の部屋でお義父さんとお義母さんに昼食を御馳走してもらい。

 天使の扉へとコルジンと行くことにした。

 館の迷路を右に左に……頭がこんがらがる……。コルジンは何の苦もなくずんずんと歩いて行く。きっと、みんな今日も一生懸命なのだろう。僕は天使の扉のバリアを壊すのが良いことなのか悪いことなのかと考えてしまう。でも、外へとみんなは出たいのだから……悪いことではないよね。


 天使の扉へと着くと、大人たちは青いエプロンを着て今日も一生懸命だ。

「みんな! 今日から仕事をしなくてもいいことになったぞ!」

 コルジンの一声に、大人たちは目を丸くして、一番の働き者のコルジンを一斉に見つめだした。

「コルジン?いったいそりゃ……どういうことだ?」

 

 一番手前のおじさんがボロ布をバケツに放り込む。きつい仕事へのやる気が今の一声でなくなったかのようだった。

「こいつが黄金の至宝さ。これでバリアを砕けるし、館の外へと出られるんだ」

 コルジンが僕の持つ黄金の至宝を手に取り、高々と掲げた。

 その次の瞬間。天使の扉は大歓声に包まれた。

「やったぞー!」

「外へ出られるぞー!」

「コルジン万歳! コルジン万歳!」

 大人たちは口々にコルジンを称える。

「おいおい! これを見つけたのはおチビちゃんだぜ!」

 コルジンが僕を前に出す。僕は嬉しくなって顔を上気させる。

「ありがとな……ヨルダン」

 大人たちは涙声の人がポツリポツリとでて来た。

これで賞金の100クレジットもナンセンスになったんだね。

 入口にいる恐ろしく細い女は何やら考え込んでいた……。


 ハリーおじさんのドアまで、さあ出発だ。途中、ロッテを誘って青いドアのグッテンを連れていかないと。

「ヨルダン。いや、リスヘル。さっきのこと考えろ。この館から出なければいけない」

 雲助がコルジンとロッテと並んで歩いている僕の肩で踏ん張っている。

「どうして?」

「後で解るけれど、それじゃあ遅い」

「?」

「やあ」

 青い色のドアを開けると、三人の学者の中にいるグッテンが挨拶をしてきた。

「今、館の端っこへ行く廊下の埃が、700年前からそのままだったことが解った。古文書に書かれていたんだよ。つまり、あの廊下は700年前から誰も通っていないんだよ!ヨルダン! つまりは私たちだけでの偉業の探索だったのさ!」

「あ、グッテン。ヨルダンはリスヘルになったの。ついさっき」


 ロッテが小さい手を交えてさっきの説明をした。

「ほお。あのルージー夫妻の息子になったのか。それはよかった。とても優しい人たちだろう。リスヘル」

「うん。僕はこのおじいちゃんの館に一生いたいから、お義父さんとお義母さんの部屋で暮らすことにしたんだ」

「駄目だ駄目だ! ヨルダン。外へと出なければ」

 雲助がまた解らないことを言う。

「あ、でもお義父さんとお義母さんが外へと出たいと言ったらどうしようか」

「まあ、その時はその時だ」

 コルジンが明るく言った。

「グッテン。少し付き合ってくれ。ハリーのドアへと行きたいんだ。全員そろっていたほうがいいだろう」

「ああ。いいけど」

 グッテンは古文書らしき本をヘルタンに渡し、のっそりと付いてきた。何か考え事をしているようだ。

 ハリーおじさんの黒い両開きドアまで行くと、

「あのね。実は……」

 僕は雲助の言った。原型館へ行って誰も帰って来てないという事実を話そうとしたら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る