第54話
「ロッテも座って、今朝取れたリンゴよ」
とても優しい夫妻だ。僕の憧れの義理の父と母のような人たち……。
「リスヘル。本当にありがとう。妻もこれで顔の火傷もなくなってくるんだ」
リグおじさんは嬉しそうに両手を摩った。
「ヨルダン。賞金の半分のことはどう?」
隣に座ったロッテは小声で僕に言った。
「今日にハリーおじさんの所へ行って、話をしてみるんだけど……。どうなるかな……?」
「私も行っていい?」
「うん」
「コルジンとグッテンも連れて行きましょう。きっと何かが起きるかも知れないわ」
ロッテは警戒をした方がいいと言っている。僕にはハリーおじさんが今では、面白い人なだけではなくなってきた。
「リスヘル。君の両親はどこにいるの?」
キャサリンおばさんが少し声を落として言った。
「僕には両親なんていない!」
僕は叫んだ。
リグおじさんが少し驚いた表情をしたが神妙に頷いて、
「そうか。何かあるんだね。よければこの部屋で暮らしなさい」
「そうよ。あなたとならもう一度、人生をやり直せるわ。リスヘル……お義母さんと私を呼んで」
キャサリンおばさんが涙目で僕の手を取る。
隣に座るコルジンが僕に向かってニッコリした。
正直、とても嬉しい……。けれど……。どうしようか?僕はきっとこの部屋で暮らす時にはリスヘルとなって、もう一度幸せになれるチャンスがある。そして、大人になる。賞金の100万クレジットもルージー夫妻に渡せるし……。
でも、僕は……一人がいい。もう、家庭にはうんざりしているのかも知れない。それがどんなに暖かくても……。
でも……。
「わかったよ。お義父さんとお義母さん」
僕はこれからリグおじさんとキャサリンおばさんをお義父さんとお義母さんと呼ぶのだね。ここへ来て、僕はお父さんとお母さんを得た。それは掛替えのない家族という絆。
「ヨルダン。外へと出なければ……いけない」
雲助は僕の肩で辛辣なことをいう。でも、その意味は僕には解らなかった。
それと、これで黄金の至宝をハリーおじさんに渡すことがナンセンスになったんだね。これは僕のもの。でも、一度ハリーおじさんに出会ったほうがいい。その前に天使の扉の大人たちに報告だ。
「コルジン。一度天使の扉へ行こう。その後は、やっぱりハリーおじさんに会うことにしたよ」
きっと対決をしないといけないことだと思う。
「おチビちゃんは勇気があるんだね。その時は俺も一緒に行くよ」
「私も行くわ。それと、グッテンも連れていきましょう」
ロッテはリンゴティーを口に含むところだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます