第42話 奇怪な原型館

 次の日。気分的に霧と大雨 

 狭い部屋へと入った。

 そこには、何の変哲もない。木製のテーブルの上に水の入った透明なコップが置いてあった。


「そういえば、散々走り回って喉が渇いた……」

 僕はそのテーブルの上に置いてあるコップを持とうとした。

 けれど、手が滑ってコップを床に落としてしまった……。

 コップは割れずに床で転がり……すると、みるみるうちに床がコップからの水で、水浸しになる。それは、足の指の高さまでになる。水位がどんどんと上がる。

「どうなっているの? これも原型館の魔法?」

 やがて腰の辺りまで水の脅威が迫る。

「ヨルダン! 俺は泳げない!」

 部屋全体がコップからの水で埋め尽くされそうだ。

「どうなっているの? 雲助?」

「逃げるんだ!」

 僕はざぶざぶと溢れかえる水の中を動いた。外へと繋がるグリーンのドアを開ける。肩までになった水位もそっちの部屋へと大うねりして流れる。


 グリーンの部屋へと入ると、ドアを閉めた。

 また寝間着が水浸しだ。

 室内は明るくて、このおじいちゃんの館で初めて見る時計がたくさん壁全体にあった。でも、時計の針はしっちゃかめっちゃかの時刻を刻んでいた。

「この部屋にも何かあるのかな?」

「ああ。恐らく。原型館には所々魔法があるのさ」

 僕は呼吸が苦しくなるほど切羽詰まる……でも、怖いわけじゃない。

 ゴーン。ゴーン。ゴーン。

 と、時を刻みだした時計が一つ……目の前にあった。

 すると、部屋全体の時計がスピードを上げて回り出した。

「今度は何?」

「ヨルダン! 逃げろ!」

 僕はだんだんと体が年をとって来た。


 体が大きくなり、背が伸びる。

 最初は青年にそして、今度は中年に。


 鬚面で太った腹を見て、僕は悲鳴を上げた。


「ここも駄目だ! 逃げるんだ! 次の部屋へ!」

 雲助は何だか年のせいか萎れてしまった。老蜘蛛の一言で、僕は次の部屋へと急いだ。

 元に戻った体でガタがきているドアへと入ると、今度は床が引っぺがされた部屋だった。

「また魔法!?」

 僕は床が土になっている部屋……家具がない部屋で緊張をしている。この部屋は安全なのだろうか?

 その時、体が小刻みな振動を察知した。

 

 その振動はだんだんと大きくなる。……地震だ。

 立っているのも難しくなり、僕はへっぴり腰のまま次の部屋へとオロオロと歩いて行く。次のドア付近までいくと、物凄い音が鳴り響き地割れが地面を走った。

 この原型館の魔法は侵入者を排除しようとするの?あのホクロだらけの男は今までどうやって生き伸びたの?

「だから……中の中には入るなと」

 雲助が嘆く。

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