第35話
「これから、どこに行くんだいおチビちゃん」
コルジンがニンジンと肉をグッテンと交換している最中に僕に聞いてきた。
「そうだね。食料や薬草、そして黄金の至宝を探すのだし。かなり遠くに行こうよ。あ!
そうだ。このおじいちゃんの館の端っこに行こうよ」
「端っこ!?」
みんなが驚いて大声を発した。
「そう。このおじいちゃんの館にもきっと端っこがあるはずだし」
僕の話にみんな小首を傾げてしまう。
「ヨルダン。この館の端っことは聞いたこともないんだ。勿論、見たこともない。誰も想像すらしたこともないことだよ」
グッテンが驚いた表情で言った。
「うん。だから僕たちで見つけようよ。きっと……いや必ずあるはずさ」
コルジンは驚いてはいるがその表情は柔和な感じを受ける。
ロッテは……奇想天外なのかな……そんな感じのことを僕が言ったことに好奇心を持ち始めた表情だった。きっと、この旅行が決して危険だけと目的だけのことではないと、みんながみんな思い始めたんだと思う。でもね。僕は最初から気が付いていたんだ。この旅行がハリーの罠だったことは、正直……がっかりだけど。それだけじゃ終わらない。そんな気持ちが僕には芽生えているんだ。
シャンデリアを見終わったら、次はどこへ行こう。
「早速。原型館の端っこへと行こう。この通路をまずは突き進んでみて、終わりがあるかどうかを知って。それから考えよう」
僕の言葉にまたみんなが驚いた。
「原型館!? ここが……!」
グッテンが叫んだ。
「……原型館?」
コルジンがグッテンと僕の顔を交互に覗き込む。
「知らないの。この館の最初に出来た館よ」
ロッテとグッテンは知っているみたいだ。僕はしまったの顔をした。このおじいちゃんの館で……最初に出来た館だって?
「そうなのか。原型館は遥か昔……700年前から強力な魔法によって、その形を保っている。そして、そこにはこの館の主ジェームズ・ハントの亡霊が眠っていると言われ、不思議な魔法が到る所にあると……古文書の中でももっとも古い文献に載っていた。目に見えて形ある幻の館なんだ」
グッテンは熱を帯びた顔で古文書の知識をみんなに捲くし立てた。
「幻の館?」
僕はグッテンの言うことに驚いた。この館には興味が尽きることがない。
「ああ。伝説上の館なのさ」
「それより、薬草よ」
ロッテは涼しい顔で大きい声を発した。
「ああ」
コルジンも同意見のようだ。みんなグッテンと同じく古文書に興味があるはずもない。僕は興味を持ったけど……。それじゃあ魔法も持って帰ろう。
「でも、住んでいる人もいるんじゃない?」
ロッテの発言にグッテンは小首を傾げた。
「700年前からその姿を変えない。いや、変えることが出来ないところだ。はたして住人が居るのかどうか?」
「まずは食糧を探そうよ。とにかく進むよ」
僕たちは色々と好奇心を持った頭で奥へと進むことにした。
「ここが原型館! 素晴らしい!」
グッテンは驚愕の表情で、ポケットからメモ帳を取り出し、何かを書いていた。
ぶら下がっているシャンデリアから遠く離れたところにある。パステルカラーのドアを目指して突き進む。この床には住人が居そうな雑巾やらモップやらが所々に落ちていた。
パステルカラーのドアを開けると、今度は四方にドアがある部屋になった。
「右に行こうか? それともまっすぐ行こうか?」
僕は館の端っこに向かうことと、食料を探すことに専念している。
「その端っこには薬草があるの?」
「解らないんだ。けど、誰も行ったことがないなら何かあると僕は思う。きっとそれはとんでもないものさ」
ロッテの疑問に僕は自信のある声を発した。きっと、ロッテの探している薬草は食用栽培園のように、床を加工しているところにあるのだと思う。僕は住人がいないこの辺りで、薬草が取れるのかと心配した。でも、グッテンがこの原型館には見たこともない食物や動物がいると言っていた。
「グッテン。この館には見たこともない。動物や植物があるって昨日言ったよね」
グッテンは顔を輝かせて何か考え事をしているふうだったけど。
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