第7話

「ハリーおじさんがどうかしたの?」

 グッテンは重い口を開いて、

「ハリーは数週間前に奥さんを館の亡霊に殺されてしまって、そのショックで気が狂ったのさ。とても危険な精神状態だったよ」

「え、あのハリーおじさんが? 僕には面白いおじさんに見えたよ……」

 僕はそこで、心の片隅にあの不可解なざわざわした気持ちがでてきた。

「……」

「ヨルダン。その三日後のハリーのショーには行かないほうがいい。何か嫌な予感がしてきたんだ」

「うーん。でも、平気さ。僕は死を恐れたりなんかしない。きっと、面白いショーさ」

 

 グッテンは俯きだし首をユルユルと振った。

「じゃあ、僕もう行くね」

 僕はドアを閉めた。

 

 雲助は不機嫌だった。グッテンたちとの会話に一言も喋れなかったのが原因かな?

「俺のことを忘れてもらっちゃ困るよ」

「別に忘れたわけじゃないさ。雲助が一言も話さなかっただけで、一言話せばよかったじゃないか」

「俺は学者嫌いだ」

 雲助はぶっきらぼうに言い出した。

「へえ、そんなこともあるの。僕は蜘蛛に好き嫌いがあるなんてちっとも知らなかったな」

 雲助は何も答えなかった。

「次にどこを目指そうか? この周辺しか行けないからな」

 僕は周囲を見回した。


 4・5段の階段の正面の部屋を除けば、後は正面の部屋から二つの通路が伸びていて、丁度Vの字になっている。一つはさっき来たところ。あのしかめっ面のおじさんと陰気なおばさんがいた部屋があって、まだ開けていないドアやいった時がない通路が幾つかあるが、だいたいは人が住んでいそうなドアだ。もう一つはドアがまったく無く。変りに壮麗に武装した天使の絵が二つ向かい合って描かれた扉がある。


 書き記そう。僕がおじいちゃんの館へと入ってから、絵の具の人型にあったところはさすがに解らない。赤いドアの筋肉隆々のおじさんのところからは迷路だったので、しっちゃかめっちゃかになった。


 幾つか道があるかしら?だから、金色の両開きドアから書くと、そこから迷路や二三段の階段がある斜めの通路を歩き、しばらくすると灰色のドアに到り、(勿論、その他のドアも通路には当然ある)それから、少し行くと淀んだ青色のドア、グッテンがいたところに到る。単純にはこうなる。でも、細い道が幾つか到る処にあるので、簡単には行き来出来ないんだ。


「当然、天使の絵がある扉さ」

 僕は怖いものがない。堂々と通路を歩く。

「ヨルダン! 中の中には入っちゃなんね!」

 雲助がそう言い終わる前に僕は重い扉を開け放つ。

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