KAC20233 終末時計

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「貴方、コーヒーが入ったわ。テレビをつけたまま寝てしまうなんて。風邪ひくわよ」

　深夜までニュースを見ていた彼の肩に私は厚めの毛布をかけてあげた。前例のない危険な時代だとか残り９０秒だとかとスピーカーから聞こえてくる。私にとっては雑音だ。

「ねえ、貴方、たった９０秒しかないんですって。これじゃラーメンも作れないわね。来年はせめて三分になって欲しいものだわ」

　インスタントラーメンの蓋を開けてお湯を注ぎながら嫌味を言うと、彼のこめかみの辺りがピクンとなった。今までステーキばかり食べてインスタントなんて食べたことがないものね。特にシーフード味って美味しいんだよ。

　三分経ってから私は彼の机の上に置いてあげた。香ばしい香りで起きるようにと蓋を開けておいた。

「ねえ、食べないの？　じゃ、私が食べようかな」

　かなり深く眠っているようだ。遠慮なくカップを手に取ると、熱くて溢してしまった。机の上の雑誌がびしょびしょになる。私は彼に怒られる前に手早く片付ける。読みかけの科学雑誌。彼のお気に入りの雑誌もぐちゃぐちゃになってしまった。

『主な要因は去年2月に始まったウクライナ侵◾️ロシアが核▪️兵器の使◾︎をほのめかし……紛争🔳誰の手にも負えなくなる可能性は依と指■■⬛️

時計の針を戻すためにアメ⬛️■⬛️やNATO（北大西洋条約機構）同盟国の指導🔳らに対して「能⬛️🔳最大限、発揮してあらゆる道筋を模索すべきだ」と求めています。終末時計にはウクライ⬛️🔳侵攻のほか、気候変動の影響や新型コロ⬛️🔳ウイルスの脅威なども反映しています』

　大事な部分だけはスープがこぼれた程度で読み取れる。私は安心した。

「ねえ、貴方もこの中の一人になるの？　まさかね、貴方が影響を与えるほどの力を持っているとは思えないもの」

　それより火傷は大丈夫かしら？　毒を飲まされて貴方の皮膚もぐちゃぐちゃになってる。

完