魔王様はぼっち?
久し振りの定時帰宅。しかも明日から三連休。リーマンにとって至極の喜びと言えよう。
(明日は桜達とのたこ焼きパーティ。掛かっても四時間……つまり、残りの時間、魔王様は自由なのだ)
まじで何しよう。居酒屋巡り?愛車で海辺を一人ドライブも捨てがたい。
それとも、昼まで寝ちゃう?魔王様はもうワクワクなんです!
まずはゆっくりお酒を飲もう。好きなおつまみと焼酎。青春時代に流行ったJPOPを掛ければ正にパラダイス。
でも、浮かれ過ぎちゃいけない。プライベートモードに入る前に、メールチェックは忘れずに。
「知らないアドレスからメールが来ている?……おい、このタイミングで送って来るか?」
前に頼んでおいたユニフォームガーディアンの現状が届いていたのだ。これは素面で見なきゃまずいと思う。
……セーフティガーディアンがひねくれた理由が分かった気がする。
(正に天国と地獄だな……充実しているのは基本職系が多いな)
基本職、早い話が戦士・魔法使い・神官とかの事。この辺は潰しが効くから、再就職の斡旋が楽だった。
魔王軍で戦士をしていたってなれば、門番や守衛として引っ張りだこ。魔法使いも教職に再就職した奴が多かったし。
ユニフォームガーディアンで言えば、戦士系はプロスポーツ選手や格闘家になっている人が多い。魔石の効果が切れても、身体能力はある程度維持されるからだと思う。
頭を使う魔法使い系は学者や官僚。人体に詳しくなる神官系は医者が多い。
逆に盗賊やネクロマンサーとかは、ドロップアウトしている人が多かった。
まずは盗賊、ゲームだとレンジャーが盗賊系のジョブになっているけど、魔王軍では別物扱いだぞ。盗賊なんてただの犯罪者なんだし。
盗賊系は楽に稼げるからか、普通の仕事が長続きしていない。普通に逮捕されています。
ネクロマンサーやサモナーみたいな他人依存なジョブは、活かせる職業がなくてフリーター率が高かった。
駄目になっている人に共通しているのは、ユニフォームガーディアンだった過去の栄光に縋って現状を受け入れられていない事。
魔王様だって過去の栄光を捨てて、サラリーマンしているんだぞ。
ぐっと背伸びをしたら、チャイムが鳴った。この時間に来るのは宅配しかない。
(良いタイミングで、お取り寄せが来てくれたか)
俺の大好きな地元のスイーツを頼んでおいたのだ。しかも夏季限定のレアスイーツ!
「はい、今行きます…桜と夏空さん?」
タコパは明日だぞ。まさか今からタコを捕まえに行くって言うんじゃないだろうな?
「やっはー、しげちゃん。泊まりに来たよ。嬉しいでしょ」
満面の笑みで話す桜。いや、お酒がゆっくり飲めなくなるんですが。おじさんは、女子校生と絡めると無条件で喜ぶって勘違いしていないか?
「たこ焼きパーティは明日だぞ。何かあったのか?」
あえて真剣な顔つきで聞いてみる。これぞ必殺おふざけ封じ。うちはいつでもお泊り可能な友達の家じゃないんだぞ。ここは成人男性の家、魔王様は一人居酒屋の気分なんです。
「岩倉さんの食生活が心配で来たんです。最近あまり野菜食べてないですよね」
夏空さん、魔王様は野菜を食べなくても健康でいられるんですよ……でも、善意で行ってくれているので無下には出来ない。
「こ、これから買いに行こうと思っていたんですよ」
嘘じゃないもん。魔王様は割引お刺身も買いに行こうと思っていたんだぞ。
「それなら丁度良かった。僕達も食材を買いに行こと思っていたんだ……絶対に、しげちゃんの冷蔵庫には野菜ないと思うし」
ネギ、トマト、ジャガイモはあった筈。スイカとコーン缶は野菜の仲間といえば仲間だ。
「最近、忙しくて買い物もまともに行けていないんだよ」
言い訳です。きちんと亜空間には食材が入っている。
でも、忙しいのは事実。ユニフォームガーディアン関連で仕事が増えた。もうユニフォームガーディアンバブルって感じの忙しさだ。その中心にいるのが俺。
だってユニフォームガーディアン関連の仕事は、確実に俺を指名してくる。それに加えて、理事長先生や
提出書類を送るまで三影さんが許してくれないんだぞ……仕事増えて一番大変なのは社長と三影さんだから、強く出られないんだよね。
「でも、三食カップ麺は駄目だよ」
一昨日三食カップ麺って日があったのだ。あの時のフェーアさんは怖かった……秋月さんの携帯で、がち説教されました。
ちゃんとおにぎりも食べたし、塩・味噌・醤油で味変していたんだけどな。
「コンビニに行く余裕もなかったんだよ」
一回配達に出たら半日は戻ってこれない事が何日もあった。メーカーさんも、ここぞとばかりに営業仕掛けてくるし。流石に社内で亜空間から物は取り出せません。
「今日はしっかり野菜を取って下さいね」
夏空さん、人参以外なら喜んで食べますよ……待てよ、この方法なら人参を避けられる。
「それなら今日は俺が飯を作りますよ。野菜中心の献立にしますし」
これでも一人暮らし歴は長い。野菜を使ったレパートリーもある。女子校生受けする手料理は無理かも知れないけど、それなりに美味い筈。
「それじゃ僕達が来た意味ないじゃん。祭は、しげちゃんにご飯食べてもらいたくて練習してきたんだよ。素直に好意を受け取る」
夏空さんお母さんに料理を習ったらしい。嬉しいけど、なんて言って教えてもらったのか気になります。
◇
桜達と一緒にスーパーへ買い出し……職質されたくないから別行動したかったんだけど……。
「洗剤とトイレットペーパーを買って……桜、お前達が使う食器を買っておけ」
人数が人数だから、トイレットペーパーは切らせない。全部で六人だからジュースも多めに買っておこう。
傍から見たらハーレムだと思う。しかも全員美少女だし。魔王様、楽しみ。
「今度で良いよ。なんだかんだで十人になったし、色々買わないと」
今何て言った?
「えーと……あのですね。仲直りを兼ねてのたこ焼きパーティだから、永倉君も誘ったんです。そうしたら静香さんが川路君を誘って、流れで大久保君も参加する事になりまして」
夏空さんが気まずそうに話し始める。今日来たのは人数は増えた事を伝える為だったらしい。
「生徒ばかりじゃまずいから、大村先生と春告鳥先生も来る事になったんだ」
魔王様の疑似ハーレム、結成前に崩れる。
そして違う問題が発生した。俺の部屋に十人も入らないぞ。
(部下が出来た時の先行投資だと思えば良いか)
「帰りにドンキに寄るぞ。テーブルとか冷蔵庫を買っていく」
二組に分かれて、飯を食べよう。春告鳥先生に聞きたい事もあるし。
◇
魔王様、今日は自棄酒をしても許されると思う。
「春告鳥先生、そっちに肉焼けていますよ」
俺には決して見せるのがない爽やかな笑顔で春告鳥先生に話し掛ける大村。
そう、成人組と学生組に分かれたのだ。まあ、桜達も先生がいたんじゃリラックス出来ないし。
「ありがとうございます。大村先生、玉ねぎ食べませんか?」
ちなみに成人組は鉄板焼きとなりました。
……魔王様、自室でぼっちです。ちくしょう、人の部屋でいちゃつきやがって。
春告鳥先生にユニフォームガーディアンの事を聞きたいんだけど、いちゃつきバリアの所為で何も聞けません。
テレビ買ってよかった。視線をテレビに集中させていれば、気を遣われくて済むし……桜か秋月さん来てくれないかな。川路君でも良いぞ。
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