ジョブ判明
魔力での脅しが効いたのか、数日で調査結果が届いた。多分何もしなかったら、こき使われていたと思う。
(何回来ても、馴染める気がしないよな)
教員でもないおじさんが、高校に馴染んでいたら不味いんですけどね。
物が物だけに、ラルムの会議室に来ています。
「こいつ等がセキュリティーガーディアンの容疑者だ……俺が受け持った生徒もいて、正直ショックだよ」
現時点で容疑者は七人……随分こじんまりとした組織だな。他にも関わっている奴もいる筈。
「お前は去年までユニフォームガーディアンの存在を知らなかったんだから、仕方ないだろ。ジョブはシーフ・ネクロマンサー・サモナー・魔法使い・アサシン・バーサーカー・ロード……見事なまでに就職や進学に有利に働かないジョブばかりだな」
方相のドールマスターは、ましな方だったんだな。治める国がないロードって、無職と変わらないだろ。
ネクロマンサーは、伊庭達と行ったレストランにいた占い師。魔法使いは海灘さんをマジックアイテムで手籠めにしようとしていた男だ。
「……どのセキュリティーガーディアンから調べるんだ?」
大村の顔が暗い。元といえ自分が受け持った生徒だ。先生ゆえに思う所があるんだろう。
「顔を見られた魔法使い。それか召喚士だな……海灘さんはどうしている?」
サモナーが、召喚するのは強力か魔物や魔族。つまり上手く利用すれば、昔の部下を召喚してもらえるかもしれないのだ。
「不安そうにしている。明るい子だけに、心配だよ」
記憶は消せても、トラウマは残っているのかも知れない。
「海灘さんの彼氏って、どんな生徒なんだ?」
永倉とか言ったっけ。大久保君の友達なら高スペックな奴なんだろな……うん、サモナーにしよう。
「永倉真面目…お人好しで、いつも笑顔な奴だよ……特徴は、そばかす位かな」
大村も自分の受け持ちでないから、あまり詳しくないそうだ。お人好しで、いつも笑顔か……おじさんが応援したくなるタイプじゃないか。
「写真とかないのか?」
場合によっては、魔王様の個人的感情で優先的に魔法使いをぶっ飛ばす。
「ちょうど、あそこにいるよ……永倉と海灘が付き合った時は、生徒は大騒ぎしたんだぞ」
そこにいたのは、海灘さんとそばかす顔の素朴な少年。永倉君は海灘さんを元気づけようと一生懸命話し掛けている。
でも、肝心の海灘さんの顔は晴れないまま。
「生徒はって事は、教師陣は驚かなかったんだろ?」
学園でも十本の指に入る美少女と、素朴な少年。若い子なら、不釣り合いに思えるかも知れない。
「ああ、永倉君は良い奴だからな……二人共、お互いを大切に思っているのが、分って微笑ましかったよ」
そんな二人が馬鹿の身勝手な欲望で不幸になろうとしている。今すぐ魔法使いをボコボコしてやりたい。
人身御供ってやつだろうか。ユニフォームガーディアンの事は詳しく書いていなけど,件の七人の内情は事細かく書かれていた。
「魔法使いの名前は
……魔王様、名前だけは同情しちゃった。
(三年の九月までユニフォームガーディアンの活動をさせられているじゃねえか!)
間方は成績優秀そりゃ、Fランクしかいけないか。またもや同情しちゃいました。
「土貴のユニフォームガーディアンは、推薦をもらえるんだよ。間方が今の大学に進んだ理由は一個上の先輩が進学していたからだ。シーフの八木ってやつだよ」
魔王様の悪い癖で稼働率やどんな魔物と戦ったとかに目がいってしまう。野郎の生活歴なんて興味ないもん。
とりあず、同情がポイント減りました。
「悪い遊びを教えられて、ドはまりしたパターンか。シーフにとって、魔道具を作れる仲間は喉から手が出る様な存在なんだよ」
開錠する道具にガードマンを眠らせる道具。今の日本なら監視カメラの対策をあるだろう。
真面目な間方少年は禁断の蜜に誘われて、道を踏み外したと……まあ、海灘さんに考えれば、同情ポイントは消しとんでしまうけど。
「今更だけど大丈夫か?七人ものセキュリティーガーディアンと戦う事になるんだぞ」
七人もか……むしろ一気に攻めてきてくれた方が嬉しいんだけどな。
「心配するな。まずは情報集めだ……キャバクラの領収書って落ちるか?」
接待で行った事はあるけど、一人で行くのは初なんだよな……ぼったくり店だったら、どうしよう。返り討ちにしたら、警察呼ばれたりしないかな。
「前に言ったの忘れたのか?夏空の想い違いが醒めるまで禁止だって言ったろ」
勘違いは否定しない。でも、これは接待と同じく仕事なんだぞ。
「そこは先生様が上手く説明してくれよ。海灘さんの件もあるし、頼んだぞ。俺は店の方から調べてみる」
優良店でも、庶民には縁のない様な高級店ならアプローチの方法を変えよう。
◇
……学校に見慣れないおじさんがいたら、当然目立つ。ラルムに来る事が増えたけど、俺が来るのは放課後か授業中が主だった。
「しげちゃん、この間はなにがあったの?」
会議室を出たら、速攻で桜達に捕まりました。そう言えば俺桜達に監視されているんだよね。ラルムに来たら、ばれるか。
「嫌な気を感じたから、近くに行ってみたら大久保君が海灘さんに詰め寄っていたんだよ」
俺はあの日起きた事を桜達に伝えた。間方の事を言えば、警戒してくれると思うし。
「最近よそよそしいと思ったら、そんな事があったのか……それで岩倉さんはキャバクラに行くのか?」
秋月さんが溜息を漏らす。それと、気の所為でしょうか?夏空さんの視線が冷たいです。
空気がぴりついているので、大村にライソで助けを求める。
「まずは評判を聞いてからですね。ぼったくり店なら遠慮なく、ぶっ壊せますし」
ぼったくり店はサラリーマンの敵だ。たまには脅される側になって反省するが良い。
「案外、岩倉さん楽しみにされているんじゃないですか?デート出来る相手が出来るかもしれませんよ。そうしたら間方の話を聞けるんじゃないでしょうか?」
雪守さんが夏空さんを意味ありげな目で見る。さらに、ぴりつく空気。
「それは無理ですよ。店外デートなんて、ボトルを何本も入れて通い詰めなきゃ無理です。知っています?ああいう人達って、年に何回も誕生日があるんですよ。幸いな事に近くにコピー機を置いてある店があるんで、それとなく話を聞いてきます」
キャバクラより大人なお店だから、ここでは具体名を伏せておきます。ちなみに経営屋は怖い方達なので、例の店のけつ持ちも分かる筈。
「しげちゃんもプレゼントをあげた事あるの?」
桜君、プライベートな事に首を突っ込むのはやめましょう。
「俺が持って行くのは、出張先で買ったお菓子だよ。でも、接待で連れて行った人が、皆同じ指輪贈っているのを見た時は切なくなったぞ」
皆愛想笑い全開で媚びまくってる癖に、直ぐに売るんだもん。あんな海千山千のキャバ嬢に俺が勝てる訳ない。
「同じ指輪だと売ってもバレないってやつか。俺はもらったイヤリング大切に取ってあるぞ」
秋月さん、ありがとうございます。ちなみに川路君が誤解しない様に、雪守さんとお揃いのペンダントをあげた。きちんと防虫効果付きです。
「とりあえず、皆は海灘さんの護衛を頼む……さてと、俺は行くぞ」
なんとか全員納得してくれた……筈。入店と出店の報告をする様に言われたけど。
◇
うん、そういう事だったのね。とりあえず、お得意様が興味を持っているっていう体で話をふってみた。
「岩倉さん、あの店は止めた方が良いですよ。噂じゃ未成年を使っているって話ですよ」
怖いお兄さんと繋がりはないとの事。ただ調査に向かった若い人達が、闇討ちにあっているらしい。多分、シーフかサモナーの仕業だと思う。
(未成年に催淫術を掛けて手を出した挙句、キャバで働かせるか……そりゃ、
それじゃ、遠慮なくぶっ壊すとしますか。
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