魔王様は浮く
おぼろげながら、今回の絡繰りが掴めてきたので大村へ報告に来た。
「ハーブを調べてみたら、あの蘭の葉っぱが混じっていた。しかも魅了効果付きだ。あのハーブティーを飲んだら、蘭の虜になるのだ。そしてダニの媒介者になるって寸法さ」
植物園ですれ違った人にダニが付いていたので、魔法で回収しました。こいつを調べたたら面白い事が分かったのだ。
「媒介者?……生き物に寄生するんじゃないのか?」
普通のダニなら宿主を探して寄生する。でもあのダニは改良されていた。
「あのダニは魔力を好む様に改良されたいた。魔力を持っている……もしくは魔力を持っている人間と良く接する生物に寄生するんだ。そして魔力を持った人間に卵を産み付けるのさ」
川路君は雪守さんと良く接しているからダニに寄生されたんだ。肝心の雪守さんだけど、俺のジンジャーパウダーの影響で忌避されたんだと思う……付着率を高めておいて良かった。
「それで、ダニ退治は出来そうなのか?」
魔王様も見くびらないで欲しい。きちんと対案を考えてきている。
「蘭の前に転移魔法用のマーカーを設置しておいた。ゴブリン掃討戦の翌朝に植物園に行って来るよ」
開園前なら誰にも見つからない筈。部屋にも設置しておいたから、一瞬で戻れるし。
ついでに朝露もゲットしておこう。ドリアードは襲ってこなければ無視。あいつ等身体がでかいから動くと目立つんだよな。
「転移魔法も使えるのか?車いらないんじゃないか」
いや、そんなに万能じゃないです。
「他人に見られたらアウトだし、魔力と体力の消費が激しいんだよ。あらかじめマーカーを
設置しておかないと使えないしな」
今の状態で転移魔法を使ったら、半日は寝込むと思う。
「便利な様で不便なんだな……ちょっと待て。それじゃ、掃討戦の時にダニが蔓延する危険性があるんじゃないか?」
流石は大村先生、察しが良い。これで話を早くまとめる事が出来るぞ。
「桜達には虫除け効果のあるアクセサリーを渡しているから平気だ。他の生徒には防虫スプレーでもふっておけ……うちの取引先のドラッグストアで買ってくれれば、
下水に潜るんだから、防虫スプレーをふっても怪しまれない。そして俺は得意先にゴマをすれる。まさにウインウインだ。
「元王様の癖にせこいというか、しっかりしていると言うか……それでデートはどうだったんだ?まあ、夏空の様子を見れば嫌でも分かるけどな。あいつ、朝から物凄くご機嫌らしいぞ」
……植物園を楽しんだ後、ドライブしてお茶を飲んで帰りました。健全その物のデー……エスコートだぞ。
「俺のエスコートで、満足してくれたなら嬉しいよ。心配しなくても、もう誘ったりしないから安心しろ」
俺も楽しかったから、やばいのだ。色んな言い訳をして、誘ってしまいそうで怖い。
「当たり前だろうが。それと当面は合コンとかガールズバー……誤解を与えそうな物は禁止だからな」
今ストライクゾーンな女性との合コンがあったら、断れって言うのか?人権侵害だぞ。
「それ、まじで言ってる?」
まあ、そんなチャンスは滅多にないけどさ。
「マジもマジ、大マジだ。今、そんな所に行ったら夏空は裏切られたと思って傷つくぞ。お前は大人なんだから、きちんと考えて行動しろよ」
楽しくデート?した男性が合コンやガールズバーに喜ぶ勇んで行く……大人の女性相手でもアウトな行為だ。
「分かったよ。夏空さんの様子を見て動く。掃討戦は来週で良いんだよな」
ゴブリン相手なら動画を見ながらでも、出来る。即全滅させて、英気を養うんだ。
「ああ、先に言っておくけど、お前は手を出すなよ。今回はユニフォームガーディアンがメインなんだからな。第一、お前が暴れたら正体がバレちまうだろ」
俺は大村と一緒に後方で見守り兼救護担当との事。
(実力を過信するから、バフも掛けられないか)
なんでも半日近く潜らなきゃいけないそうだ。亜空間に弁当でもいれておくか。
◇
掃討戦というだけあって、かなりの数のユニフォームガーディアンが参加するらしい。
(ここまで大掛かりにすれば、かえってバレないか)
集合場所には、大型バスが停まっていた。フロントガラスには“三校合同 社会見学 下水道見学ツアー”の文字。
これなら確かに怪しまれない。そう、下水道に入る事は怪しまれないと思う。
「ねえ、あのおじさん誰?」
「あんな先生いたっけ?」
「またマスコミ?まじでひくんですけどー」
……その代わり
集合場所にいたのは約四十人の少年少女……浮きまくっていて、おじさんは目立ちまくりです。
(しかし、全員容姿が整っているな……ユニフォームガーディアンの試験には容姿審査でもあるのかね)
もし
「岩倉さん、こっちですよ」
身の置き場がなく、うろうろしていたら夏空さんが声を掛けてくれた。その背後にはニヤニヤ笑っている桜達もいる……嫌な予感しかません。
だってグループチャットに藤棚の写真が上がっていたのだ。冷やかしたい気持ちは分かるけど、おじさんのは致命傷になるんだぞ……今度からは行動に気を付けます。
「ありがとうございます。しかし、凄い人数ですね……うん、あいつは」
前にラルムで俺に絡んできた剣崎勇吾もいたのだ。あいつもユニフォームガーディアンだったのか。
「三校のユニフォームガーディアンが全員参加していますから……誰か気になる人はいますか?」
正直言って全員団栗の背比べだ。違う意味で気になる人はいるけど。
「いや、あの剣崎って人もユニフォームガーディアンだったんですね……桜、なんで距離を置いておるんだ?」
なぜか桜達は遠巻きに俺達を見ていた。
「いやー、お邪魔しちゃ悪いかなって思って。剣崎先輩は強くて有名だよ。他に有名なのは、竜崎女学院の竜崎麗奈さん。竜崎さんは竜崎財閥のお嬢様なんだよ。それとうちの二年で交換留学生のアイリーン・エリャ先輩、ジョブはガンナーで凄く強いんだ」
確かに紹介された三人は頭一つ抜きんでている。でも俺が気になるのは、その子達じゃない。
「あそこにいる無表情な集団はなんだ?」
制服はきっちりと着こみ、私語も全くない。それどころか眉一つ動かさず、じっと待機している。
「
夏空さんの話によると、今回の掃討戦は土貴高校が言いだしっぺらしい。
うん、気になるよ。だってあいつ等の魔石はここからでも汚染しているのが分かるんだもん。
「後から説明しますよ……全員アクセサリーはつけてますね。やばいと思ったら、俺が助けに行くので、安心して下さい。戦績より、安全第一でお願いします」
今の桜達ならゴブリンに負ける事はない、俺は魔物やユニフォームガーディアンの情報収集に勤しみます。
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