達成感と岩登り


 盗撮や時計強奪の経験を持つ16~40歳までの男10人は命綱を着け、岩の前に立っていた。一番上まで登り切り、達成感を与えて更生させるため、ボアコンストリクターのジョリーと父ヒュージが男たちの後ろに座って声かけをする。



 時計やハンマーを強奪した16歳のベイは交際相手で同じ学校のカーラを思い浮かべ、バスケットボール部で鍛えた脚力で丸い岩を登って行く。

 拍手が起き、ヒュージが「忍耐力があるな」とほめた。「ありがとう」と一礼し、翌日の岩登りにも参加することを決めた。



 17歳のローガンと22歳のエバンスはジョリーに怒鳴られながら、川のそばの岩を登る。盗撮がやめられず彼女や妹と別居し、ロンドン警察署に10回逮捕されていた。

 「スマホの写真を見ることを考えてたでしょう!妹を号泣させる気⁉」激高するジョリー。絶句し地面に座り込むローガンとエバンスの肩をヒュージがポンとたたいた。



 18歳のマイケル、30歳のトムと他の5人も登り終えたところでサーモンとレタス入りのサンドウィッチを食べ「登ってみてどうだった?」と聞く。

 「集中力が要ります」「命綱が外れたら、深手を負うぞ」ヒュージが答え、10人は岩登りを再開した。



 411教室に入ると、佑樹とカーラが「ベイ!」と手を振って来た。机を4つくっつけ、『親や交際相手による子どもの死亡事故、事件を減らす案』を出し合う。『網や木で、子どもの転落防止トランポリンを作る』という案も出た。

 佑樹が長机の前に立ち、「『18歳まで着続けられ、子どもの首や頭の骨を覆い転倒や殴打による深手を減らすダウンコート』をジェームズさんのバンダナ店で縫い、販売する」と20人の顔を見ながら黒板に書く。栞が上げられ、採用となった。



 「佑樹の案、採用されたな!」ベイが『カフェ&バー 月明かり』で黒コショウ入りフライドポテトを食べながら満面の笑みで言う。

 「幼児が亡くなる事件や事故を減らしたい」佑樹はロールキャベツを深皿に入れ、冷ましながらかじり食べ終えた。

 


 「佑樹」午後6時にジェームズとサムに連れられバンダナ店に入ると、美子やターナーたちが待っていた。20人は寝る間も惜しんで300着のダウンコートを縫い、アレックスやカーラたちに着てもらって完成させた。

 襟元にはコッツウォルズで暮らす羊たちの冬毛が使われ、子どもの頭や首の骨を覆う。胸ポケットにはオータムのしっぽやビッグベン、ゴールデンレトリーバーのポアロとベイリーが描かれている。


 ジェームズは机の上に置かれた便箋300枚を見ながら「ポアロとベイリーが描かれた緑のダウンコートを、600着販売してほしいという電話が鳴り止まない。店主として、これほどの喜びはない。ありがとう」と20人に深く頭を下げた。



 


 

 

  


 



 


 

 


 


 


 

 

 

 

 


 

 

 

 

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