コッツウォルズでの出会い


 農場主で30歳の男性が「ようこそコッツウォルズへ」と亮介と美月、直美に笑みを見せる。牧草地では丸々とした羊たちが亮介たちを見つめ、牧羊犬のミラが納屋の前に座っていた。


 男性が白い靴下を直美の手に乗せ、「羊の毛から作る靴下を販売するのが生業だ」と説明する。

 「なりわい?」「生活するためにする仕事」と答え、男性は羊たちの毛を刈り亮介と一緒に石に座って靴下を作り始めた。


 「わ―――!」強風に飛ばされそうになり絶叫する直美を、羊たちが冬毛で守った。「ありがとう」亮介が羊たちに一礼した後、美月が66歳の男によって納屋に入れられるのが見えた。



 階段で2階に上がると、水車の周りにいるザリガニが美月に向かって「歌姫‼」とハサミを振る。水車は羊の飲み水用に置かれ、ザリガニたちが水をろ過する。

 ハンマーを投げて来た男の腰を、淡く短い茶髪と緑色の目で黒いベストとズボン、緑色のブーツ姿で17歳の女性ベリーが強打し転倒させる。肩に乗っていたモンハナシャコのブレイクが、3連続パンチで男の老眼鏡を粉砕した。

 納屋のドアが吹き飛び、突風に飛ばされそうになりながら悲鳴を上げる男を亮介が「You made her scared!(俺の伴侶に恐怖を与えた!)」と絶叫し猛追。ベリーは美月の肩をたたいて納屋から出た。



 「ありがとう」亮介と美月、直美に言われ、ベリーは嬉しそうな笑みを見せた。「9歳から不登校で、チョークや黒板消しを投げ『牧草地でザリガニや羊と暮らしてる⁉変な女』って言ってきた同級生に向かって、岩登りで一番上まで行ってから『登ってこい!へなちょこ‼』って笑いましたね」



 「ベリーは岩や山登りで脚力と腕力を上げ、徒歩や列車で旅をしながら過ごしている」ベリーの養親でもある農場主が言い、駆け寄って来たミラの背中をなでる。

 「君主制には反対してる。お金もなく生活に困窮してる人がいるのに、ドレスや宝石で飾り立てるから」ベリーが牧草の上に座り、「ベストは7歳から着続けて、ボタンが2個取れた」と直美に言う。


 「直美。羊を柵の中に入れてみる?」ベリーが羊たちをちらりと見るとミラが直美の顔をなめ、しっぽを回す。直美は納屋の前にいた4頭をミラと一緒に追いかけ「水飲みに行っちゃった!」「あ、1頭逃げそう!」と声をかけて走りながら柵の中に入れ、汗だくになった。


 

 「すごいよ直美!この牧草地で就職したら?」と満面の笑みを見せ、名刺と白いフェイスタオルを渡すベリー。

 亮介も隙間なく編まれた靴下が入った紙袋を石の上に置き、農場主の男性と一緒にトウモロコシとソーセージを焼く。直美とベリー、ミラもバターをつけ焼いたトウモロコシとソーセージをかじりながら雑談し、美月は牧草の上に座り寝息を立てていた。

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る