ジョニーと直美


 美月は『ミーン』の腰を盾で強打し、地面に叩きつける。真珠が広場を転がっていき、激怒しながら美月の襟をつかもうとする『ミーン』にジョリーが近づき、茶色から濃い緑に変わった目で見つめる。冷や汗を流しながら走って逃げる『ミーン』を11歳の息子カーレッジが一瞥し、美月に駆け寄って来た。

 「美月さん。カーレッジ・バード、11歳です。直美は『ストールン』のバールがリズとベラに当たらないようにしてたんです。母の暴言は憎悪犯罪です!」

 石畳に座り込んで謝るカーレッジに「落ち着いて。賢哉さんにも話そう」と声をかけると、「ありがとうございます」と破顔一笑した。

 ロンドン警察署でカーレッジから『ミーン』の暴言と美月の奮戦について聞き終えた賢哉は「ありがとう」と言ってブルーベリーケーキと牛乳を出した。


 直美がベッドから起き上がると、ジョニーが「直美―――!」と泣きながら抱きしめてきた。ジョブズが顔を赤くする二人を見ながら、嬉しそうな顔で経済新聞を読んでいる。

 「おー、直美ちゃん。オトンとオカンが奮戦してたで」タカユキが2階に入って来て、湯気の立つ抹茶を直美に渡す。



 「子どもの死亡事件や事故を減らす意見交換会が、寮内であるらしい。20人が参加可能だ」ジョブズが直美にオレンジ色の冊子を渡し、睦月とレモネードを飲む。「小学生も参加できるって書いてある!」「ノートとシャープペンシル必携だ」睦月が冊子を開き、ボールペンで赤線を引いた。



 寮内の2階に向かうと、五月やレオナルド、佑樹たちが来ていた。「おはようございます」と一礼し、ノート3冊とシャープペンシルを出す。エドワードが黒板の前に立ち、20人に緑色の栞を配り終えた。

 

 「川や山での死亡事故を減らせるよう、遭難防止ウインドブレーカーを子どもに渡すのは?」直美が佑樹たちに向かって言うと、エドワードが破顔一笑する。

 「バンダナ店でジェームズさんに縫ってもらえる!」20人が緑色の栞を上げ、採用となった。直後、10歳の女児が手に持った糸切りバサミを直美に向かって振り下ろそうとした。

 佑樹が女児に向かって「直美に深手を負わせ、彼女の意見に反対しようとした!」

と怒鳴り、直美に駆け寄る。女児は猛雄によって退室させられ、泣き叫んでいた。



 ―――夕方。バンダナ店ではジェームズが直美の描いたスケッチを見ながら遭難防止ウインドブレーカーを縫っていた。ジョニーは直美と店内に入り、ハンガーにかけられたダウンコートや防弾チョッキなどを見ながらマギーの羽をなでる。

 

 「オータム!」袖に茶色い糸でオータムの毛が描かれていくのを見て、ハイタッチをし歓声を上げる。

 カーレッジが直美の肩をたたき、「糸切りバサミ持ってたの、妹でさ。ごめん」と謝罪した。



 



 

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