紅茶店『Feel Relax』での再会
亮介は美月、直美と紅茶店『Feel Relax』に入り、44歳の日本人男性・
茶摘静雄の前に座る。
「茶摘さん。娘の直美です」「こんにちは」茶摘は直美を見て満面の笑みを見せ、抹茶色の羽に橙と黒の丸い目を持つワカケホンセイインコのホンちゃん(メス)とその夫カケさんが「父親になったんか、亮介!」と驚く。「ああ。直美も読書好きだ」と答え、娘の髪をなでた。
「茶摘さんは『紫いもタルト』のドラマーで、25歳の時にイギリス各地の茶葉
を集めた」棚に置かれた40種類の茶葉を見ながら亮介が美月と直美に言うと、茶摘がフランボワーズのマカロンと湯気の立つ紅茶を3人の前に置き「元気そうだな」
と亮介の肩に手を置いた。
「はい。明人や賢も、子ども食堂『キンモクセイ』で夕食作りをしています」
「海子が書道部に入ったと、賢から手紙が来た」静雄は机の上に置かれていた便箋を亮介と美月に見せる。『海子は温泉小書道部の大会で2位になり、マオたちとマカロンも作ってますよ』と書かれていた。
「海子ちゃん、『一蹴』って書いた半紙を黒板に貼ってたよ」と破顔一笑する直美。2階の書道室で、半紙が黒くなりそうなほど太く書いたらしい。
美月がフードバンクの前を通ると、「日本酒、運んで!」と店長の八ツ橋福に呼び止められた。トマトやトウモロコシなども段ボールに入っている。
寄付品の日本酒が入った箱をフードバンク内に入れ終えると、「ありがとね。あたしは八ツ橋福」と美月に名刺を渡し「『赤ワイン』と交際相手の男が、日本酒のフタを開けて飲んじゃう」と小声で言った。
美月はジルから渡された鍋のフタを店の前に置き、棚の後ろに身を潜めた。
『赤ワイン』とアレックスの父親が日本酒を取ろうとした直後、美月が回しながら投げた鍋のフタが二人の頭を直撃、ひたいから血を流しながら転倒する。福の相棒でモンハナシャコのマーティンがアレックスの父親の腰を強打し、店員の男性が日本酒をフードバンク内に戻した。
「ありがとね」入り口前に散乱したガラスビンをちりとりで集める福に手を振り、もらったイチゴが入ったビニール袋を持って亮介、直美と宿泊しているホテルへ戻る。
黄色いフリースに泥と砂がついた日本人女児で5歳の星原エニシがロビーのソファーに倒れるのが見え、美月は慌ててイチゴをビニール袋から出し食べさせる。エニシはうっすらと目を開け「ありがとう」と小声で美月に言った。
「エニシ」ジェームズがロビー内に入って来て、エニシの肩に手を置く。ジェームズや睦月にロールキャベツを作ってもらいながら過ごしていたが、両親のいる自宅に戻った後は体が細くなったらしい。
ソファーに座り本を読んでいた五月がエニシの髪をなで、抱きしめながら号泣していた。
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