睦月との出会いとカフェ&バー『月明かり』での再会
「お昼を食べに行きたい」直美が通りに積もった雪の上で足踏みをし、亮介の肩に手を乗せる。「カフェ&バーがあるみたい」美月がホテルの1階に置かれていた地図を持ち、勇樹も一緒に広場へ向かった。
「いらっしゃいませ!カフェ&バー『月明かり』の店長、天原睦月です‼4名様ですね」薄茶色の短髪の日本人男性・睦月が亮介たちに満面の笑みを見せ、ロールキャベツが描かれた名刺を渡す。2階建ての店内には暖炉や抹茶色のソファなどが置かれている。
「睦月の妻で警察官の弥生です。ご注文をお伺いします」「ロールキャベツと抹茶を4つ」美月が言い、暖炉の火を眺めながら昼食が来るのを待った。
「ロールキャベツと抹茶、お持ちしました」黒髪を肩まで伸ばした天原美奈が、4人に向かって一礼する。驚く亮介と美月に、「俺と弥生は、美奈の養父母なんだ」
と睦月が説明し木のスプーンを机に置く。14歳の姉・天原夏と話す美奈は温泉小にいた時よりも笑顔が多くなっていた。
厚手の長袖シャツに黒いズボン姿で14歳の男子中学生が「亮介先生、美月先生!」と手を振って来た。
「釧路翔⁉」さらに驚く二人に「釧路湿原で強一さんにミネストローネとようかんを渡され、救助されました」と破顔一笑する翔。亮介は店内でミネストローネを食べ終えた高見強一に「ありがとう」と頭を下げた。
暖炉の前で11歳のロシア人男子、ゴルバチョフがスケッチブックに黒煙の絵を描いている。「ゴルバチョフは姉のナターシャ・カルムとロンドンに移住し、同級生に校内でペンキをかけられた。同級生20人はデンキナマズのマーブによって感電させられ、停学」
睦月が小声で言い、亮介と美月を広場へ連れ出すと5~18歳までの子どもたちが集まって来て、階段に座る。
美月が世界中にファンを持つ某アニメの主題歌を熱唱し始めると、「ひょえ~!」「うち、自宅でインコと聴いとるで!」という声が森子と美子から上がった。
亮介はゴルバチョフを一瞥し、『You Raise Me Up』を力強く熱唱。ゴルバチョフは弥生から渡されたタオルで顔の涙を拭い、亮介に満面の笑みを見せた。
―――午後2時。広場内の階段前で背中から血を流し号泣している1歳の女の子に翔と美月が駆け寄り、ゴルバチョフが「包帯持ってる方‼」と呼びかけると、ベージュの短髪に青い目の男性から8個が渡された。
背中までの黒髪に新緑色の目を持つイギリス人女性・ローズが女の子の背中に包帯を巻き、胸元に本が描かれたフリースを着せると「へへへ」と嬉しそうな笑い声を上げた。女の子は『リズ』と名付けられ、『Young Flowers』の2階で過ごすことになった。
勇樹はホテルでリュックサックから色鉛筆を出し、ソファの前で絵を描き続けた。
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