ビーヘイバー ロンドンでの出会いと事件

porksoup (ポークスープ)

ソフィーとアマンダの親子げんか


 2022年2月。田原亮介と妻の美月、9歳の娘直美はペインターの島原勇樹とロンドンに来ていた。ダニエル・ラブズキャットのケーキ店でブルーベリーケーキを食べていると、茶髪に緑色の目を持つ12歳のソフィーが「もうママと暮らしたくない‼」と大声を上げ、酔っ払いが多くいる通りへと入って行くのが店内から見えた。

「待ちなさい‼」ソフィーの母アマンダは娘に向かって怒鳴った後、夫のジョーと地面に座り込んだ。

 

 ダニエルから渡された硬貨を財布に入れ終えて通りに出ると、茶色い毛でオレンジ色の目を持つオスのオオカミ犬・オータムが亮介の前に座ってしっぽを回す。「田原亮介だ」と言いながらオータムの背中をなでていると、黒いダウンコートと防雪ブーツ姿の武蔵野佑樹が駆け寄って来た。

 「亮介先生。ダンサーのソフィーちゃんが姿を消し、チラシが作られてます」と言い一枚を亮介に渡す。

 メスのシベリアンハスキー・ポピーのリードを持ったロンドン警察署の白浜賢哉がオータムの兄で濃い茶色の毛を持つオオカミ犬のウィリアムを連れ、通りへ向かった。



 ラジオ好きの美容師・アジさんがいる美容院の前に来ると、オータムが泥のついた黒のベストのにおいを嗅ぎ、くわえ上げた。密猟者の男4人が、睡眠薬を飲ませたソフィーを青いテントの中に入れるのが見えた。

 亮介がロンドン警察署にいるアマンダとジョーに電話をかけた。息を切らしながら美容院前に駆けつけた二人に佑樹が黒いベストを見せると「娘が広場に行く時着ているものです」と答え、テント内でバールを持った男からソフィーを守った。


 ジョーは肩が腫れ上がったアマンダを連れ、ロンドン警察署へ入った。賢哉が箱から出した丸いチョコレートと感謝状を亮介と佑樹に渡し「ありがとう」と頭を下げたる。(オータムは女性警官にニジマス2匹をもらい食べていた)。

 「ソフィー、ごめんなさい」「亮介さん、佑樹くん、オータム。ありがとう」ジョーとアマンダは娘と手をつなぎ、広場へ向かった。


 

 ―――午後4時。マグロの握りや青ネギ入りのうどんが夕食で出されるホテルに入ると、時計塔・ビッグベンや2階建てのラジオ局『Young Flowers』が室内から見えた。勇樹は鎌倉で活動するロックバンド『紫色タルト』のライブハウスでも愛用するスケッチブックと色鉛筆をリュックサックから出し、広場内で熱唱する高校生たちを描く。

 


 「アマンダさんは『ジョーが不在の時、ソフィーの足をバールで腫れ上がらせていました』と号泣してた」「2階建ての店舗で食器やリングノートを売っている抹茶タカユキさんに『お母さんに洗濯機の中に入れられ、顔が紫色になった』と言っていたらしい」亮介は妻とソファーに座り、湯気の立つ抹茶を飲んだ。



 

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