クマのプレゼント

冨平新

クマのプレゼント

 ぬいぐるみのクマの両目を見つめると、

三恵子みえこの頭の中にクマが話しかけてきた。


 『君の名前は、何ていうんだい?』


 「…三恵子。宝田三恵子たからだみえこ。」


 『三恵子ちゃん。可愛い名前だね。

これから僕が、三恵子ちゃんを

素敵な世界へ連れていくよ。

僕のことを、抱きめてくれるかい?』


 クマが三恵子に

そう話しかけると、

三恵子の頭の中で、

秀丸ひでまる書店』のおばあちゃんとの

優しく温かい思い出が、

走馬灯そうまとうのようにめぐった。


 三恵子はわらにもすがる思いで

クマをギュっと抱きしめた。


 「ウ、・・・ウワーーーーーン!!」

 三恵子はせきを切ったように泣き出した。


 涙が止まらなかった。


 三恵子は涙を

クマのぬいぐるみで拭いながら

泣きじゃくった。


 クマはいつしか

三恵子の涙で

ぐちゃぐちゃになっていた。


◇◇◇


 ・・・パチッ。


 三恵子は目を覚ました。


 いつのまにか

眠ってしまっていたのか、

横たわっていた。


 しかし、天井が違う。

ここは自分の部屋ではない、と気づいた。


 「・・・・・・ここは、どこ?」



 すると、

メイド服を着た

太ったおばさんが

上から三恵子をのぞき込んだ。


 「うわっ!」



 「お目覚めですか?

ぽんぽこぴーな様。」



 どうやら、三恵子は

『秀丸書店』で読んだ

『ぽんぽこぴーなの冒険』の

主人公になっているようだ。



 白くて高い天井には

豪華なシャンデリア。


 三恵子が寝ているベッドは

とても大きく、

淡いピンク色の蚊帳かやに包まれていた。


 そして、肌触りの良い、

とても高そうな

シルクのパジャマを

着ていることに気づいた。



 「どうかなさいましたか?

ぽんぽこぴーな様。」

 

 「おばさんは、誰?」


 「ほっほっほ!

忘れてしまったのですか?

私はメイド長のアイン・ミラーですよ。」


(『ぽんぽこぴーなの冒険』に出てきた、

あの太ったメイド長だ。・・・!!!!!!

・・・ということは、私は

『ぽんぽこぴーな』になっちゃったってこと⁉)


 「お嬢様、朝食のお時間です。

何をお召し上がりになられますか?」



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クマのプレゼント 冨平新 @hudairashin

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