乙女ゲーのヒーローに転生したんだが、悪役令嬢がやたらおヨーグルトを薦めてくる件について
kattern
第1話 ヤクル○のおヨーグルトですわぁ!!!!!!
ワイの名前は三軒茶屋ボブ。
アニマ○連邦から亡命してきたような父と、地元最○!の世界で生きているような母から生まれた、戸籍に存在しない子供や。世が世ならテスカトリ○カの土方○シモのようになっていたかもしれんが、そんなこともなく、暗い部屋で日がな一日ギャルゲをして過ごしとる。スナックバ○江の森田激似の30歳(下一桁省略)やで。
そんなワイは長年の不摂生な生活が祟り、ある日パソコンの前で死んだ。
心臓発作やった。
みんなも徹夜でギャルゲはしたらあかんで。
せめて下はちゃんと穿こうな。
最後に「せめて生まれ変わるなら、長年やりこんだオンラインゲームの世界で!」と、苦し紛れにFA○ZAの「対○忍RPGX(よい子はしちゃダメ!)」を立ち上げたけど、願いも虚しく――ワイが生まれ変わったのはまったく別の世界。
しかも、人生で一度も触れたことがない未知の世界やった。
ワイは乙女ゲーの世界に転生した。
しかも、よりにもよってヒーローもヒーロー。
オッペングラム王朝第一皇子『ラインポルト・フォン・ローゼンメイデン』に。
わからん!
乙女ゲーわからん!
わかるんは名前の「ローゼンメイデン」くらいや!
助けてやで、○銀燈ちゃん!
そんな右も左もわからん世界でワイはあれよあれよと流された。
そして気がつけば、皇太子としての実績をつくるため、『陸軍ローゼンリッター士官学校』に士官候補生として入学することになった。
「クラスにナンバー2は必要ありません」
「光には影がしたがう。ローゼンメイデン皇太子ならおわかりだろう?」
「私の目的は新たな覇者の登場に協力すること」
「駒はより多くおそろえになったほうがよろしいか。汚れた駒も使いようです」
「遺言状はデスクの三番目の抽斗に……」
多くの(?)仲間との学園生活を通して、ワイは少しずつ乙女ゲーの世界(システム)に慣れていった。
言うてギャルゲも乙女ゲーもいっしょやね。
出てくる男女比のバランスが著しく偏ってる所も含めて。
なんや、そう思うとワイでもできるような気になるから不思議やわ。
幸いにも、他のヒーローは陰気くさい嫌われ参謀長くらいしかおらんし。
これは余裕やろ。
はよヒロイン出て来てクレメンス。
そう思っていたある日、ワイはついにその娘と出会った――。
「まぁ! いけませんわいけません! 食堂で戦闘糧食なんて!」
その日、ワイは賞味期限が近づいた戦闘糧食を食堂で処分しとった。
咥えていたヌガーをぺいと取り上げた、そのお嬢さんはワイが皇太子と知って知らずか、きっと力強く睨みつけてきた。
ええね!
陸軍士官学校に通う女士官。それくらい強気でないとおもろないわ。
これがおもしれー女いう奴やな。
けど、自分――髪がちょっと長ない?
紫髪の縦ロールって、どう見ても悪役令嬢のビジュアルと違う?
え、もしかしてヒロインより先に悪役令嬢が来た感じやろか?
「ダメですわよ! ヌガーなんて高カーボなもの食べてらしたら!」
「君は――?」
「お忘れになりまして閣下? 貴方の未来の妻――ミリオネでしてよ!」
「ミリオネ嬢。どうして君が
「愛しい方のためならばたとえ火の中水の中、銃弾舞う嵐の中ですわ」
そう言うと、ミリオネ嬢は口に手の甲を当てて「オーホホホホ」とお嬢様しかしないような高笑いを食堂に響かせた。
悪役令嬢確定やね。
しかし、陸軍士官学校まで押しかけてくる悪役令嬢ってどないやねん。
なかなかパンチの効いたキャラクターやで。そこに加えて、ヒロインもこれから出てくるとか――この乙女ゲーのシナリオ書いた奴は何を考えてるんやろ。
人の心とかないんか?(言うてみたかっただけ)
「軍人は食べるのも仕事のうちですわよ! さぁさぁ、私が閣下のために用意いたしました料理をお食べ遊ばせ!」
「用意とは?」
「学園の隅に良質な土壌を見つけましたの。栄養価の高い野菜を栽培しましてよ」
「なんと、悪役令嬢なのに家庭(菜園)的!」
「私が丹精こめて作ったお料理をお食べくださいまし~!」
いそいそと食堂の厨房へと入っていくミリオネ嬢。なんかおばちゃんたちと親しげに挨拶をすると、彼女は配膳用のお盆を持って戻って来た。
そこに載っていたのは、士官・下士官共通のまずい軍用レーションではない。
皿こそ飾り気のない銀皿だが、間違いなくそれは手料理だった。
しかも――!
「こ、これはまさか!」
「我が魂のふるさとの料理を用意させていただきましたわ!」
「納豆! とろろ! オクラ! どうして!(困惑)」
まさかの日本食!
しかも、健康にいいネバネバ&ぐちゃぐちゃ系料理だった!
これをこの悪役令嬢が作ったというのか!
こんな「スプーンより重いものをもったことがなさそうな」悪役令嬢が!
いや、その前にどうして、ワイが元いた世界の料理を知っているんだ!
まさかこの悪役令嬢――ワイと同じ
頭を過った可能性を静かに首を振ってワイは払った。
そんなことあるはずがない。これはきっと何かの偶然。
「どれもこちらのお醤油――ソイソースがあいましてよー!」
「間違いない! 彼女は
「ほら、このようにぐちゃぐちゃと混ぜていただいて、麦飯の上にだらーとかけていただいてくださいまし! 見た目は悪いですけれど栄養満点! これで明日から閣下の健康も壱百満点! 胃カメラの写真だって周りに見せられますわ!」
「しかも彗星の如く現れた人気VTuberみたいだ!」
彗星!
彗星の
ワイは戦慄した。
悪役令嬢の中に異世界人が転生している事態に腰を抜かした。
違った。ワイが主人公なんかやなかったんや。これは、彼女のための物語。
ワイは所詮、ボブ。
異世界に行って、名前を変えてもただのボブやったんや。
調子に乗ってすまんやで……!
「さらに、デザートも用意してございますのよ!」
「いやな予感しかあらへん」
「こちら、ヤクル○のおヨーグルトですわぁ!!!!(エコー&効果音)」
とんとワイの前にミリオネ嬢が置いたのは、どう見ても異世界から持って来たアイテム。青い紙製の容器に入った「おヨーグルト」だった。ただのおヨーグルトじゃございません、ヤクル○のおヨーグルト(ソフー○)だった。
きっと、異世界転生特典で持って来たのだろう。
どうしてよりにもよってそれなのか。
もっとなんかあっただろう。
腸内環境よりも異世界で生きていくのに大切なアイテムとかチートとか!
ガンダ○くらい持って来いよ! なんでよりにもよってそれなんだ!
「とにかく、こちらを食べていただいて、元気をつけてくださいまし」
「あ、ありがとうミリオネ嬢。しかし、私は……」
「ミリオネさ~ん。トマトピューレがうまく作れないんですけど」
「まぁまぁ、スレータさん。そんな力任せにトマトを叩いてはいけませんことよ。ほら、手のひらがぐちゃぐちゃになっておりますわ」
「はわわ、す、すみません!」
厨房の中から出て来た紅い髪をした少女料理人。
彼女に声をかけられてミリオネ嬢はまた厨房へと再び入っていく。
去り際、こちらを振り返って熱いウィンクと投げキッスをして。
「お残しは許しませんことよ~!」
なんて強烈で情熱的な婚約者なのだろう。
心からワイのガワ――『ラインポルト・フォン・ローゼンメイデン』を愛しているのが伝わってくる。さぶいぼがちょっと立ったくらいや。
そういや、乙女ゲー転生ものは悪役令嬢に生まれ変わるのが主流やもんな。
王子に転生するのは亜流やで。
邪道やで。
ウケへんで。(とほほ)
「せやね、乙女ゲーやから女の子が主人公になるわな。男のワイはおとなしく、このゲームのヒーローの人生を演じさせてもらうで」
その時ワイは、今生は彼女が求める理想のヒーローを演じることを決めた。
ぺりぺりとミリオネ嬢が残したソフー○の銀紙を剥がす。
するとコラボ中の商品なのだろうか、銀紙の裏には「1、10、100、1000、満点サロ○~!」と、さるお嬢様VTuberの挨拶が書いてあった。
いや、違うな――。
「壱百万天○サロ○嬢は、お嬢様を目指す一般人VTuber。あくまで一般人が、お嬢様を目指すというコンセプトのVTuberやで。そこをはき違えたらアカン」
その時、厨房の方から皿の割れる音と、女性の怒号が聞こえてきた。
「ミリオネ! さっきからなにを仕事サボってるんだい!」
「すみません料理長! ついラインポルトさまが気になって!」
「気になってじゃないよ! ただの町娘上がりの料理人のくせになんだいその口の利き方は! 皇太子さま相手に勝手に婚約者だのとよく言えたもんだね!」
「違います! 違いましてよ! この乙女ゲームは、食堂の料理人からヒーローの奥方に成り上がっていくんですの! これは一番最初の大切なフラグですのよ!」
「なに寝ぼけたこと言ってるんだい! こい、修正してやる!」
「ミリオネさん! やめな……!」
「ダメですスレータさん! 貴方が本気を出したら料理長がトマトピューレに!」
え?(困惑)
「さい!!!!」
「きゃあああああっ! 料理長!」
「オーイズミシェフが過酷な海外ロケにでも行ったみたいにぐったりと!」
「ひ、人○し!」
え?(あたまぐちゃぐちゃ)
【了】
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