ハーレム転生者のせいで上流社交界の血縁関係がぐちゃぐちゃになった件
真名千
ハーレム転生者のせいで上流社交界の血縁関係がぐちゃぐちゃになった件
その男は英雄だった。英雄色を好む。転生前の知識とチート能力を駆使して覇者に成り上がった男は、王族や貴族の娘に手を出しまくった。その結果、二世代後には世界を牛耳る社交家の面々はほぼ全員が血縁者という地獄が現出していた。
英雄は何歳になっても子作りをやめなかったので孫より年下の子供が生まれるなど世代すらぐちゃぐちゃである。
この世界ではきょうだいどころか、いとこ同士の結婚も近親婚として禁止され、処罰の対象にさえなっている。結婚相手は外部に求めるしかないのだが、それは社交界が独占している力の分散にも繋がりかねず、また日頃から交流している相手に惹かれてしまうのは自然なこと、いけない関係と分かっていても近親者に想いを寄せる権力者が続出した。
幼少から一緒に育てられたならウェスターマーク効果も発動したかもしれないが、英雄は女性たちに対して通い婚であり、孫世代にもなると全員一緒に育つのは無理な話だった。
上流階級で我ままに育てられた子供・孫たちからは何とかしろとの声があがる。もちろん旧来の価値観を重んじる人々からは反対の声もあがる。障害発生のリスク、家庭内での権力勾配をを反対理由にあげる者もいた。
老年の英雄は板挟みにされてしまった。
権力ほどは統治に興味のない彼としては(どちらでもいい)という無責任な気分だったが、自分の子や孫がいつまでも争う――彼の血縁者は近親婚賛成派にも反対派にもいた――のを見るのも忍びなく、妥協案をひねり出した。
「以前同性婚を解禁したが、このたび、近親者も同性婚は可能とする」
英雄が老獪なのは、近親婚推進派には今回の政策は異性婚に拡大するための最初の一歩だと説明し、近親婚反対派には同性間なら子供ができないから障害の問題はないと説明したことだった。ひとまず時間稼ぎは成功である。
(時間がなんとかしてくれるだろう)
彼はひどく楽天的だった。
ハーレム転生者のせいで上流社交界の血縁関係がぐちゃぐちゃになった件 真名千 @sanasen
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