第27話 皇国の恐怖

「ふぅー美味かった」


「はぁーホントに満足なのよ」


「私も大満足。あっ! それよりもう2時間くらい待たせてるけど、大丈夫かしら」


「あー面倒だなぁ。約束は約束だしな。俺だけで行って来るから、お前たちは部屋で休んでていいぞ」


「それはダメです。ご一緒します」


「トラブルの匂いしかしないのよ」


 散々待たせたし、帰ってくれてればラッキーなんだけどな。

 とんでもないくらい不機嫌な騎士団の皆様が殺気を込めた目で俺達を睨む。


「で、ダンジョンの件だったか?」


 と言いながら、俺はソファーに腰掛ける。


おりました。ランサード子爵殿。早速ですが、待っている間、我々も確認してまいりましたが、子爵がおっしゃる通りダンジョンの討伐のやり取りがあった事は確認できました。とは言え、討伐した事は皇国では罪となります。しかし貴方は他国の貴族、私の上司が頭を抱えておりました。明日の朝、お迎えに上がりますので、城にて上層部と面談をお願い出来ませんか?」 

 

「それを言うためだけに待ってたのか?」


「そうですね」


「はぁーー。すごく面倒だが、文句も言わず待ってたわけだし、ただ罪だのなんだので捕まえようとするなら、抵抗するぞ?」


 それと同時に殺気を放った。

隊長の後ろに控えて睨みを効かせてた面々は、小さな悲鳴と同時に尻もちをついた。


「わ、わかりました。あ、朝の10時にはお迎えにあがります。お、おい。お前達帰るぞ。では失礼します」



【アルメリア皇国サイド】


「ビクテリア宰相。明日の朝、のランサード子爵をこちらに連れてきます」  


「うむ。して実力の程はどう見る?」


「少し部下がソソを致しまして、殺気を当てられましたが、私は何とか体裁を保ちましたが、部下は全員尻餅をつかされました。恐らくレベルは100をゆうに超えているかと」


「そうか。ランサード領の領主が代わり、進めていた計画が全て失敗に終わった。あくまでもキュリオ家の後ろ盾を使った、どこぞのボンによるマグレかと思っておったが、、」


「明日はどのような方向で?」


「こちら側に引き込めるなら、皇王の末の娘の一人でも与えてやってもよいが。もし取り込み不可能な場合は、せめて力量を図るためにもファイブスターのダビドと戦わすか?」


「ダ、ダビド様ですか! 沢山いらっしゃる姫様はともかく、もし他国の子爵を殺してしまうと不味いと愚考しますが、、、」


「殺さない程度の遠慮は出来るだろう」


「そうでしょうか‥‥‥。とにかく姫様との縁談により取り込めることが出来れば理想ですね。では私はこれで失礼させて頂きます」


「うむ。では明日」



「ランサード子爵殿。お迎えに上がりました」


「わかった。二人はお留守番だ。ってか好きに買い物でも行って来ていいよ」


「大丈夫でしょうか?」


「え? なにが?」


「ライムお兄ちゃんが大丈夫って言ってるから大丈夫なのよ」


「あ。そうだ。待ち合わせしないとな。とりあえず3時間後にここにしとくか」


「わかりました」


「じゃー行くか」


 なにやら立派な馬車が宿の前に待機している。

王城に行くから当然っちゃー当然か。


「では出発したします」


 馬車の中から外が見えないのがつまらない。

道が整備されているのか、ほとんど揺れが少ないのは嬉しい限りだ。

 なんて思っていると馬車が止まった。


「ランサード子爵殿。到着致しました」


 馬車の扉を開くと仰々しく整列する騎士団。

その先に、恐らく偉いであろう老人が立っている。

 この場合は俺から挨拶するのが常識なのかな?

なんて考えていると、


「お待ちしておりました。オリンポス王国ランサード子爵殿。私はアメリア皇国で

宰相を務めさせて頂いておりますロマ・ビクテリアと申します。以後お見知りおきを」


「これはご丁寧に。俺は、いや私はライム・サンサードです」


「では早速ですが、お部屋をご用意しておりますので、そちらで暫しお話をさせて頂きたいので、ご案内致します」


「わかりました」


 前後に騎士団を連れて、王城の中に案内をされる。

オリンポス王国の王城と違って、かなりお金をかけている感じの立派な西洋式の城だ。装飾品も沢山あるが価値はわからない。

 部屋に通されると、二人で話すには広すぎないかと思うくらい大きな部屋に立派なソファーと立派なテーブルが配置されている。

入口から奥に座らされた所を見ると、そのあたりは前世の常識と同じように思う。


「では、改めまして、今回ランサード子爵に来て頂いた理由はダンジョンの討伐の件でございます。すばり単刀直入にお聞きしますがダンジョンの討伐は、本当に皇国の法律を知らずに行動された結果ということでお間違いないですか?」


「そうですね。お、私も少し短慮であったとは思いますが、そもそもハンターとして皇国に入国し、ハンター組合からの依頼としてダンジョンに居る魔物から取れる中級魔石を取りにダンジョンに入りました。そこの入り口の警備? の人間に討伐していいのかと確認した所、出来るものならやってみろって事を言われたので、むしろ討伐してほしいと勘違いしました。そもそもメタルゴーレムが下層から上層に上がってきていると組合の受付からの情報でありましたので、氾濫する寸前と判断したことも踏まえると、どちらかというと討伐してという認識ですね」


「経緯については我々も認識しております。が、氾濫する寸前であった認識はございません。我が国はダンジョンを上手くコントロールすることに長けた知識があります故、例のダンジョンに関しては討伐は不要と考えております。もちろん時に討伐が必要なダンジョンがあることも事実ですが」


「その知識によって本当に管理出来ているのであれば、問題なかったかもしれませんが、人の身でダンジョンを管理する事が果たして可能か否かは、わかりかねますね」


「ふむ。その辺りは見解の相違ですな。とはいえ、結果としてランサード子爵は皇国のを潰したと言う事実が残る訳ですが、この件はどのようにお考えですかな?」


「討伐して事実については、何かしらの褒賞があるのかと思ってましたが、その辺りも認識の相違ですかね?」


「ふははははっ なるほどランサード領を短期間で全てまとめ上げ、腐敗を取り除き、新たな体制へと導いた手腕、正に報告通りのお方ですな。しかし、今回の件は皇国としても、簡単には無かった事には出来ない事情もございますので、一つご提案があります。ランサード子爵殿の政治的手腕を買って、皇国の姫様と婚約するのはいかがですか?」


「簡単に姫様の婚約を約束していいのですか? と言うより、勝手にすると家族に怒られますね」


「おや。家族ですか? それはキュロス家の事をおっしゃっているのですね?」


「そうですね。と言う事でお断りします」


「ふむ。いい案かと思いましたが。では、もう一つの案ですが、恐らくランサード子爵の自信の根底にあるのは、その類稀な力だと考えます。私が準備する人間と模擬戦をして貰えませんか?」


「他の案は無さそうですね。俺の力量を知りたいと。良いですけど俺は手加減出来ませんよ?」


「ほう。では、その旨も含めたをしましょう。後で問題になるのは避けたいと思いますので」


「では、その模擬戦で今回の件は無かった事と言う事で良いですね? では、やりましょう」


「はい。では、こちらは既に準備が出来ておりますので、準備は出来ましたら城内の訓練所にご案内します」


「準備は不要です。今から行きましょう。契約書のサインした後で」


「では、こちらを」


 中身を確認するが、至ってシンプルな内容だったため、すぐにサインして訓練所に移動した。


 「遅い! 宰相! 強い人間と戦えると聞いていたが、まさかそこにいる坊ちゃんじゃーないよな?」


「ダビド殿。正にその通りですよ」


「くだらねー。おい! 坊主! 見逃してやるから、さっさと帰れ」


「俺は別にそれでいいけど」


「そういう訳にはいきません。ダビド殿。これは大事な模擬戦です。しかも貴方らしくもない。この方はオリンポス王国の十志に勝るとも劣らないランサード子爵です。下手をすると怪我をしますよ?」


「なに。坊主。サルマンを知ってるのか?」


「知ってるが。ってか、面倒だからさっさとやろう。時間の無駄だ」


「勘違いした生意気な坊主は、少しお仕置きが必要なようだな」


「へいへい」


 誰か知らないが、よほど自信があるようだ。

油断は禁物だな。けど、特殊スキルを披露するのは、いただけない。


 とか、言ってる内に準備が出来たようだ。

両手に剣を構えているから、剣術ベースの戦い方だろう。俺も剣で打ち合うか。


 おっと。かなりの人数が隠れて見ている。


へー。宰相が審判ってことね。


「では、はじめ!」


 かなりの速さで間合いに飛び込んでくる。

確かに速いが、サルマンさんより軽いし、フェイントが単調だな。


 「ほう。少しはやるようだな。だが俺様が剣だけと思うなよ」


《トルネード》


 なるほど、無魔法で身体強化した上に、風魔法で加速することで、さらにスピードを上げているのか。しかも攻撃魔法も盛り込んでくる。

自信があるだけはあるな。


 でも。


 サルマンさんに習った一剣流の応用編として、俺が編み出した奥義。魔法剣を使う。


 そう。中学校二年生の時に、、、


 各属性を剣に纏わせて、斬撃はまるで漫画のヤイ◯のような、、古いけど。

 呪文はないから、地味なだけで見た目は最高なはず。今回は風魔法を纏わせて斬撃を飛ばす。


 「ぐわっ!」


 トルネードごと相手の右肩を斬りつける。

目視できるため、ギリギリで致命傷は避けたみたいだ。


 「どうする? 降参か?」


 「こっ! このやろう!」


 と言った瞬間に、さらに斬撃を程、繰り出す。

 半分近くまで避けた事は褒めてあげるけど、途中から無魔法で全力でガードして、それでも体を切り刻んでいく。


 シーンと静寂に包まれた訓練所に、対戦相手は全身血だらけで倒れてる。


 「トドメさしていいのかな?」


 「ま、まて! 終わりだ! こちらの負けだ」


 「あっ。そうですか。じゃー帰りますね」


 「ち、ちょっと待って貰えませんか?」


 「約束は果たしましたよ?」


 「も、もちろん! ではなく、まだ皇国に滞在されるご様子。他領地で変なトラブルにならないように皇国のお客様である書類をお待ち頂きたい故、しばしお待ちくだされ」


 「あっそうですか。確かにそれがあれば便利ですね。では、ここで待ってます」


 「いえ。先程のお部屋に案内させますので、少しお待ちください。私はここの片付けをしてすぐに参ります」


 「わかりました」



【皇国サイド】


「なんだあの化け物は・・・・・・」


「恐らくまだ力を隠している様子」


「オリンポス王国への対応を全て見直ししなければなりません」


「奴の弱点はないのか?」


「いずれにしても時間は必要です」


「忌々しい。急いで皇王様に報告し、皇国の案内役として姫様を付けるよう進言するのだ!」


「はっ」








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