第26話 ダンジョン

 魔王が復活する? そんな壮大なフラグをハーフエルフ姉妹から真顔で立てられつつ。

気を取り直してダンジョンの報酬を≪鑑定≫する。


 「スキル書は予知だ。未来予測みたいな感じか。あまり戦闘で予知してる暇はないような気がするが、逆に予知を上手く使わないと現実と未来がごっちゃになりそうだな」


「それよりあれは何なのよ」


「それよりって、、たしかにこれは鑑定しても不明ってでるんだよな。ただの水晶に見えるけど、ダンジョンの報酬だし変な物ってわけじゃないと思うんだけどな」


「まぁ、ライム様がいいなら私は気にしないけど、さっさとダンジョン潰してしまいましょう」


「そうだな。勇者の話にしかり、この黒の水晶も世界を旅する内に何かわかるだろ。それがまた面白い」


「ライムお兄ちゃんは勇者なのよ。伝説が始まるのよ」


「やめろやめろ。面倒ごとはごめんだ」


「ライム様はいずれにしても、巻き込まれ体質ですし、すでに跳ね除ける力を持っていますので同じ事かと。さっ。ダンジョンを」


「巻き込まれ体質、、はぁ、とにかく討伐するか」


 あっさりコアを破壊して、ダンジョンは普通の洞窟へと変化した。魔物の気配が消えたので、さっさと入口付近に瞬間移動する。


「ダンジョン討伐してきたぞ」


「はっ? まだ2日も経ってないのに冗談キツイぜ」


「これがダンジョンコアの破片だ。後は中を見ればいいだろ?」


「なっ! ダンジョンの討伐はハンター組合に申請してからだぞ?! なんて事をしてくれたんだ」


「へー。アメリア皇国の法律なのか?」


「そうだ! ハンター組合と皇国との約束事だ。お前達は犯罪者として囚われることになる」


「それならお前が捕まるだろうな。ダンジョン討伐をやれるものならやってみろと言った事を覚えているだろう。さらにハンター組合でそのような説明も無かったしな。俺には関係ないし、後は頑張れ」


「な、な、な、俺は言ってないぞ!

と、とにかく一緒に来い!」


「馬鹿か。知るかよ。その辺りも含めて先にハンター組合で俺が説明しといてやるよ」


 そう言って瞬間移動で皇都に移動する。

ダンジョンの見張り係は騒いでいたが、そんなの関係ねー。


「ってことで、これが依頼の中ランクの魔石50個だ」


「へぇーやるじゃん。早いけど本当にダンジョンで倒した魔石だよね? まぁそんなに中ランクが居るとは思えないけど、まぁーこれが報酬の金貨500枚ね。

で、ダンジョンはどうだった? その辺りも報告してくれると助かるんだけど」


「あー確かにメタルゴーレムが結構いたな。ってか、ダンジョン討伐したからもう出てこないけど」


「はっ?」


「入口で見張りの奴にダンジョン討伐の事を聞いたら出来るならやっていいって許可を貰ったから討伐しといた。どうやら申請が必要だったようだが、説明も無かったし次からは申請するよ。じゃー」


「ちょ! ちょっと待って! 見張り係がそう言ったの?!」


「だからそうだって。そもそも俺は余所者だし、そんなルールなんて知らない」


「知らないって! だからと言ってそれで済む訳ないじゃない!」


「まぁー後は頑張れ」


 周辺のハンター達がこっちに注目している。


「誰か! こいつを捕まえて!」


「おいおい。ここらで見ねえ顔のお兄さん。トラブルはいけねーな」


「うん? 俺はトラブルなんて起こしてないぞ」


「ハンター組合からの依頼だ。大人しくしてもらおうか」


「俺は今自由気ままに旅をしてるんだ。邪魔をするなら、大怪我するぞ?」


「俺はBランクのハンターだ。わかって言ってんのか?」


「しつこいな」


「なんだ! 騒がしい!」


「バルドナ組合長! こ、このハンターが例のダンジョンを討伐したと」


「何? 事前の申請もせずに何を勝手な事をしてくれたんだ? こいつは誰だ?」


「俺か? Aランクハンターのライムだ。申請については説明がなかった上に、見張り係から討伐できるならやってみなって言われたから討伐しただけだ」


「Aランクのライム・・・・・・まさかオリンポス王国のランサードだん、子爵」


「知ってるのか? なら話は早い。今説明した事が全てだ」


「お前がランサード子爵だとして、なぜ話が早いんだ? ますます疑いがかかった。大人しく調査に協力しろ!」


「ほう。この皇国のハンター組合は、相手が他国の貴族とわかっても、そのような対応をするのか? 話があるなら然るべき方法で来るんだな」


「ぐっ!!」


「じゃー俺は行くぞ」


 まだ先程のBランクハンターは退く様子はない。

 威圧を全開にして



 顔を真っ青にして尻餅をつく。

辺りのハンターも同じく無言で距離を取る。

 圧倒的な実力差を肌で感じ、この雰囲気に飲まれてライムを攻撃しなくてよかったと心の底から安堵している。

 そのままライム達は、悠々自適にハンター組合を出ていく。


「この皇国はダンジョンを討伐することを良しとしないのですね」


「ダンジョンから取れる魔石なんかで経済を回してるってのも必要だから管理してるってことじゃないか?」


「ダンジョンを管理なんてできる訳ないのよ」


「俺もそう思うけど、上手く管理してるつもりなんじゃないか? そんな事よりこれからハンター活動は一時休止だな。ダンジョンに入るには必要かもしれないけど、トラブルの匂いしかしない」


「勝手に入るのよ」


「それは罪になるだろ?」


「リップ男爵」


「他国なら別にいいか?」


「ダメです!」


 コントみたいに笑いながら、皇都を散策する。


「おいおいおい。忘れてた。宿取ってない」


「自然に観光してたよ」


「この距離なら領地に帰るのはどうですか?」


「まだ旅が始まって10日も経ってないのに、帰るの?」


「ライム様の旅の目的って何ですか? 私達は勇者様と世界を周る事は名誉な事ですが」


「え? あれ? 確かに・・・・・・」


「あれ。旅って食べ物巡りだと思ってたよ」


「おー。観光かー。いいなそれ。つい最近までそんな余裕は全くなかったし、名物や名所を見たり体験する事を目的にする!」


「高々と宣言する程、立派ではないですが、どの道イベント盛り沢山になるはずです」


「いや。観光に全力を尽くすから、それは無い。ってことで、皇都の人気の宿に泊まろう!」


「それは任せるのよ。もう知ってるのよ」


「やるな。ファリス」


「抜かりはないのよ」


 尻尾フリフリ状態のファリスについていくと、数分も経たない内に、大きな建物に到着する。人気って言うだけであって、まるで宮殿のような佇まいだ。


「いらっしゃいませ」


「こんな夕方に3室の予約は可能か?」


「はい。2部屋であればご用意可能ですが、当店は非常に高額となりまして・・・・・・」


「あー。金は問題ない。Aランクハンターでもある。これが証明だ」


「これはこれは大変失礼致しました。では、プランのご説明をさせて頂きます。

2部屋共にベッドはキングサイズになりますので、3人でもご利用可能ですが、2部屋になさいますか?」


「それでいい。女2人と俺の2部屋にしてくれ」


「はい。夕食は1番遅い時間で今から1時間後となります。館内にありますのでご案内致します。食事は夕食と朝食がありますが、3名様がご利用されることでお間違いないでしょうか?」


「それで頼む。で、風呂はあるのか?」


「お風呂はお部屋に備え付けがございます。朝食のお時間は何時に致しましょう」


「7時で頼む。で金額は?」


「1部屋金貨10枚と食事が夕食と朝食で1人金貨3枚となりまして、合計金貨29枚となります」


「わかった。じゃーこれで」


 と、ハンターカードで決済をすませる。


「ライム様。私達もこのような所に泊まらせて頂いて宜しいのでしょうか?」


「うん。てか、お前達は給金貰ってるんだっけ?」


「はい! 沢山頂いております」


「そうか。俺も細かい所までは頭が回らないから、その辺りは給金でやってくれ。後は俺と旅をする特別手当くらいに思っていればいいよ」


「ライムお兄ちゃんは太っ腹なのよ」


「じゃー夕食の時間まで各自待機ってことで」


「はい」ーい」


 案内された部屋に入ると日本の高級ホテルというより、調度品がいかにも高そうな品々が並んでいる。ベッドも王様仕様? まぁーとにかく優雅な感じだな。お風呂とトイレが同室にあるのも、これはこれで悪くない。


「さて、まずは風呂にでも入るか」


 ゆっくりお風呂を堪能し、ガウンを羽織ってエレガントに過ごしている。

にしても、この世界の娯楽というかテレビと言うか、まぁ暇つぶしが出来ることが少なすぎるな。スマホまでは不要だがゲームくらいは欲しい所だな。


 コンコンッ


「ライム様。お食事のご用意が出来ました」


「おっと。ちょっと待ってくれ」


 少々ぼーっとしてたみたいだ。

急いでガウンを脱いで、いつものハンター用の服装から、ちょっと豪華な服装に着替えて、部屋を出る。


「お待たせ」


「それでは参りましょう」


 レストランをイメージしていたが、個室のテーブル席となっていた。


「ライムお兄ちゃん遅いのよ」


「悪い悪い」


「では早速、コースのご説明をさせていただきます」


 俺も相当ワクワクしてきた。

ちょっと気取ってるけど、キュロス家以外で

フルコースなんて初めてだから、多少緊張してるし楽しみだ。


「うん? 誰か来たのよ?」

 

「こっ困ります! 当店としてもお客様「だまれ! 犯罪者を匿うのか?!」」


「うっ」


「ここか!」


 騎士と思われる奴が、ちょー楽しみにしているフルコースの邪魔をする。


「お前がライムと言うハンターだな? ダンジョン討伐の件で話がある。一緒に来い」


「話はしてやるが、まずは食事だ。下で待ってろ」


「!! お前! たかだかハンターの分際で、アメリア皇国騎士団に生意気な口を聞きやがって!」


「あー。潰すか?」


「ライム様、流石に他国で騎士団を潰すのは不味いかと。例の代官の証明書を提示されたらどうですか?」


「何をごちゃごちゃ言っておる! お前達! こいつを捕えろ!」


「俺はオリンポス王国ライム・ランサード子爵だ。今は代官として活動中だ。これが証明書となるから確認したら、大人しく下で待っていろ」


「なっオリンポス、、子爵だと。

た、たしかにこれは王印が押された正式な書類・・・・・・」


「ほう。それが本物かどうかは判断がつくか。なら理解しただろう? とにかく話はしてやるから、下で待っていろ」


「し、承知した。では下で待つとする」


 そそくさと騎士団数人は部屋を出ていく。


「ライム様、困ります。皇国の騎士団とトラブルのご様子。当店と致しましても、、」


「話は後程する予定だ。それと明日、出ていくから心配するな」


「し、承知しました。が、もし拘束されるような状況になりましても、当店は庇いきれませんが、予めご了承ください」


「わかってるよ。では食事にしよう」  


「はぁー。お言葉ですがこのような状況でゆっくり食事を取れるとは、、」


「まぁ気にするな」


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る