第25話 アメリア皇国

 証明書という紋所を! 


その紋所を見せることもなく、ハンターとしてアメリア皇国に入国した。


 アメリア皇国は、オリンポス王国が隣接するもう一つの国。

 要するにオリンポス王国はガイア帝国とアメリア皇国に挟まれた形になっており、その3国の中心地に神の庭が存在する。更にこの大陸の直ぐ横、アメリア皇国側に大きな島々があり、そこにユーラ共和国が存在する。


 で、旅人として出発したライムはガイア帝国には行きたくないというより、アメリア皇国経由で商人の国として経済力で大国と対抗するユーラ共和国に行きたいため、アメリア皇国方面を選択した。

 もちろんその経済力も強さとするなら、強さを追求するライムにとって


 アメリア皇国は、アメリア皇族の先祖を神として崇める大国で規模的には、この大陸の3国は拮抗している。文化レベルもほぼ同格だが、特記すべきは皇軍だろう。

 統治に貴族はいるが、基本的に軍の統括官を兼ねているため前線に出てくる武将タイプが多い。文化的に血筋を大切にしており皇族との繋がりもあるため反乱のようなことは起こらない。


 小さな村や街はスルーして、北側にある皇都まで足を延ばした。


「ふーん。案外平和な感じだな?」


 奴隷姉妹あらためハーフエルフの姉妹エリフィス、ファリスと一緒に旅に出ることになった。親友のキリはアインの護衛としておいてくることにした。

さみしいけど‥‥‥。

 パールは最後までごねてたけど、騎士団の役目を全うしてもらうことにした。


「そうですね。とはいえ、ガイア帝国と組んでオリンポス王国に攻め入った国。警戒はしましょう」


「おなか減ったのよ」


「たしかに腹へったよな。適当な店にはいるか」


「適当はダメなのよ。情報収集が必要なのよ」


「そうか。なら二人に任せた。俺はハンター組合に顔を出してくるよ」


「わかりました」のよ」


 別にハンターの仕事を取りに来たわけじゃないけど、折角Aランクなわけだし、実績作ってSランクまで上げたいじゃん?


「俺はAランクのライムだ。何か困った案件があれば短い期間であれば受けれるがどうだ?」


 あまり長いするつもりもないため、早速受付で聞いてみた。


「Aランク? ギルドカードはあるかしら?」


「あー。これだが」


「へー。オリンポス王国で登録したんだ。あれ? 注意人物ってなってるけど、あんた何かした?」


「いや別に。犯罪を犯したこともないし、身に覚えがないな」


 普通にシラーっと身の潔白を訴えた。


「あんた実力があるから変な貴族に目を付けられちゃったんじゃない? まぁ。ハンター組合には関係ないし、仕事をやってくれたらいいもんね。

ほい。これなんてどう?」


「中ランクの魔石が50個か。どのあたりに中ランクの魔物がいるんだ?」


「よそ者だから知らないと思うけど、最近ダンジョンが活性化してて近くのダンジョンの低層階に中ランクが出るようになったから、結構問題になってるわけ」


「へぇ。中ランクってハイオークとかグレードボアとか?」


「そこのダンジョンはそれ以外にもメタルゴーレムが目撃されてるね」


「メタルゴーレムは初めてだな。魔法が有効なの?」


「熱には弱いけど、防御力は抜群。ってか、まさかあんた一人で行く気?」


「いや。3人で行くよ」


「普通は10名以上のチームで行くけど大丈夫なの?」


「問題ない。全員が揃ったら報告してから行けばいいのか?」


「この依頼書持って、ダンジョンの入り口で入場手続きすれば、他のメンバーの情報はこっちで反映されるから別に報告は不要」


「そっか。じゃー場所教えて」


「馬車で2時間。ここの裏手から2時間に一本くるよ。今から1時間後が最速かな」


「わかった」


 ハンター組合を出ると、尻尾は無いが尻尾をフリフリしたファリスが待ち構えている。情報収集をした結果、パスタのような見た目と触感の食べ物を食べた。

 普通に美味い! 味が少し薄いように思ったけど、普及点だな。

そうだ。エルフは肉が食べれないから、情報収集は必要かもしれん。

 定番の異世界グルメも楽しむ必要があるけど、結構普通に上手い物が多いから、あまり食指が動かないんだよね。


「私たちの情報収集能力は凄いのよ」


「確かに美味かったな」


「で、取り合えずハンター組合でダンジョンの依頼を受けてきた。後10分もすれば馬車が来るから、みんなで食後の運動でダンジョンに行くぞ」


「はい」ーい」


 とはいえ、ダンジョンって実はそんなに経験がないんだよね。

全部で3カ所くらいか。普段は禁物だけど、ダンジョンって潰してもいいのかな?

そういえば、スキル書を貰えるしやれるなら潰してしまおうホトトギス。


「これが依頼書だ。で、ダンジョンってコア潰していいのか?」


「3名だな。ここにハンターカードを当ててくれ。ダンジョンを潰す? 出来るならやってみろ」


「そうか。わかった」


 早速ダンジョンに入るが、相変わらずなぜか明るい洞窟って感じだが。

俺の知ってるダンジョンはコア前のボスを倒せばスキル書やアイテムが手に入るくらいで、遠回りすることなく突き進むって方針だ。


「あれ? あそこに階段があるよ?」


「ここも階段で下に降りていくタイプだな。何階層なのか聞けばよかった」


 低ランクの魔物が大量に現れるが、まったく問題なく、魔石を拾うことが面倒になるくらい先を進んでいく。

 4階から5階に降りる階段で、全員が階段を降り切った瞬間に扉がしまった。

この扉の出現はどこも同じのようだ。5階でボスが来るのか?


「閉じ込められましたね?」


「これはボスパターンだ。どの道引き返せないし進むぞ」


「はーいよ」


「スライム? ちょっと大きいわね」


「ラージスライム、ラージポイズンスライム、ラージアシッドスライムの3体だな。中心の核を潰さないといけないけど、液体掛けられるのも嫌だし、≪氷霧≫」


 魔力の制御が上がったこともあり、氷霧の威力は過去の物とは比べ物にならない程強さを増していた。


「ライムお兄ちゃんの氷霧はつまんないのよ」


「液体は凍りやすいしな」


「カッチカチ。割ってもいいのよ?」


「いいよ」


 ≪ウィンドウランス≫


 風の槍が当たったと同時に粉々に粉砕され魔石が転がった。

魔石の横にスキル書が落ちているが、注目すべきは金の腕輪と禍々しい杖が置かれていることだ。


「おっ。スキル書は≪反射≫だ。どこまで有効なのかな? で、金の腕輪は収納機能があるぞ。で、その禍々しい杖は魔法威力増強だって」


「凄いですね。流石ボス。ダンジョンって夢があるわ」


「私は杖がほしいのよ」


「こら! これはライム様のでしょ」


「あーいいぞ。で金の腕輪はエリフィスにあげるよ。スキル書は悪いけど俺が貰う」


「やったー! 太っ腹なのよ」


「よ、よろしいのですか?」


「問題ない。にしても忠告されたゴーレムもいないし、本当にこれがボスか?」


「ちがうのよ。あっちに開けた洞窟があるのよ」


「ってことは、これは中間ボスって感じか? 復活しても面倒だし進むか」


「はい」


 ここまでで恐らく20時間ほど経過した。

1年近く修行し、体力馬鹿となった俺達にはあまり影響はないが、無理は禁物だ。


「うん。この辺りで一度瞬間移動で皇都に戻るか?」


「えー帰るの面倒だよ」


「私も問題ありませんが」


「俺も問題ないけど、本当に大丈夫?」


「不眠不休で魔法訓練したことを考えますとお遊びのように感じます」


「だよね‥‥‥」


「いくよー」


 ってなことで、かなり割愛してるが罠も盛沢山のダンジョンを何事もなかったように進む面々。

 ハンター組合の受付嬢の言う通り、やっとこさメタルゴーレムが現れるようになった。それも結構観光客の


 しかしハーフエルフ姉妹によって瞬殺されていく。

おい。熱に弱くて防御力が高いゴーレムはどこにいるんだ。


≪ウィンドウカッター≫


≪ウォーターランス≫


 サックサックとメタルゴーレムさんは斬られたりバラバラにされたりしていく。

ちょっと張り切りすぎて魔力を消費したようだが、恐らくレベルもそれなりに上昇しているし問題なさそう。

 俺は手持ち無沙汰なので、軽食を食べながら落ちている魔石を拾いながら、姉妹の後ろに続いて歩いている。

 他所から見ると、まるでダンジョン観光客のように見えるだろう。

しかしふと疑問に思うのが、他のハンターと全く会わないことだ。

まぁどっちでもいいけど。


 さて、次でとうとう10階に降りる階段まで来た。


「おそらくここが最終ボスか、またまた中間ボスかになるだろう。いずれにしてもここを抜けたら一度帰ろう。風呂に入りたい。ってか宿取ってないし、領地まで帰るか?」


「それが良いかと」


「賛成なのよ」


 思った通り、ここも階段を降りると扉が閉まったので、ふり返らず奥に進むと。

ゴブリン? が数体待ち構えている。一応鑑定すると。


「ゴブリンキング。ゴブリンロード。ゴブリンナイト。ゴブリンメイジ。ご丁寧にハイコボルトだって」


「ちゃんとしたハンターのチームのような構成ですね」


「そうだな。来るぞ。早めに終わらすか。≪濃霧≫≪氷霧≫」


 一瞬の判断力があるのか、濃霧のエリアから脱出したゴブリンがファイアーボールを撃ってくる。コボルトとメイジは倒れたようだ。


「ちょうどいいや。≪反射≫」


 5階で手に入れたスキルの反射を使ってみると、盾のようなグラフィックの透明な壁がファイアーボールを跳ね返す。

 ゴブリンナイトがキングとロードをかばう様に盾を構えた。


 ドーン! とナイトを炎が包むが、ロードが冷静にウォーターで消し去る。


「へぇ。結構知能があってバランス取れてんな。しかもキングは氷霧を避けた以外は動いてないし」


≪ウィンドウカッター≫ ≪ウォーターランス≫


 続いて姉妹が魔法を放つが、ロードが冷静にファイアーボールで相殺する。


「あまり派手にやりすぎるとダンジョンの天井が崩れそうだし、俺が前に出るよ。ちょうど剣の特訓の成果も実感したいし」


「はい」ーい」


 ≪濃霧≫ ≪霧化≫


 霧化で一瞬消えた俺をロードが目で追いかけるが、その時には俺の間合いである。

 

 剣を振りぬくと、ゴブリンロードは半分になった。

焦った素振りのゴブリンナイトは、俺の方を振り向くとこちらを向いた。既に首を落としている。流石はキングというべきか、その瞬間を狙って剣を俺に振り下ろしている。

 霧化している俺に物理攻撃は当たらない。すぐさま、それなりの剣速で振り上げるキングをあざ笑うかのように背後に周り首を落とす。


「まーこんなもんだろ。おっスキル書来たぞ!」


「もはやボスが憐れなのよ」


「ライム様がいれば世の中のダンジョンは全て討伐されてしまうのでは……」


「流石は勇者様なのよ」


「勇者ねぇ~。何か引っかかるんだけど、魔王ってこの世界にいないのに勇者って必要あるの?」


いませんけど昔はいたようです。それも復活するとかしないとか詳しくは母様に聞いてください。私も幼い時に少し聞いた位ですから」


「え? まじで?」



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