第24話 師匠
「よ、ようこそおいで頂きました。俺がライム・ランサードです」
「
「あたいは、リリちゃん。よろしくね」
「サルマンさん。リリさ「ちゃん!」ちゃん。。宜しくお願いします」
「本日より早速始めよう。近くに修行できる場所はあるか?」
「街から少し離れた荒地がありますがそちらでも大丈夫ですか?」
「かまわん」
「いいわよん」
「何名かレベル100クラスが部下にいるのですが一緒にお願いするのは、、」
「問題ない。行くぞ」
場所も説明してないのに、サルマンさんは歩き出す。急いでザマスに指示を出して、隠密部隊とエリフィス、ファリス、パールも呼び出した。
「全部で20名程度か、剣と魔法で半分にわける。選定せよ。剣は一切のスキルを禁ずる」
「魔法は、スキルと魔法以外の使用を禁止するのよーん」
俺は先ずは剣を選択した。
まずは素振りから、1万回を10分で振るのが最低ラインらしい。いや。無理でしょ?
魔法は? しらん。見れん。それどころじゃない。
◇
◇
◇
「はぁ。はぁ。達成」
「やっとであるか。かれこれ1ヶ月、まぁ多少は早い方かもしれんが、次は剣術の基本型だが、某の
「あ、ありがとうございます」
あれから早くも半年。
なんとかお願いして、一週間に一度の執務時間を貰って領地経営をしつつ、しかもその合間に子爵に叙爵してもらいつつ、やっとのことで一剣流の基礎を学んだ。魔法? まだだよ。。
どんな剣術かって?
剣術の基本型を神速かつ剛力に振るだけさ。真向斬り、袈裟切り、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、左切り上げ、右切り上げ、逆風、刺突。
この基本の切り方を永遠と極めることが強さの秘訣らしい。
なんだそれって思うかも知れないが、これを極めたサルマン師匠とスキル無しで対決すると解るが、勝てる訳がない。剣術の動作は技やフェイントがあるが動きとしては、どうやっても基本に戻る。それをいかに早く。いかに強く振るかである。
もちろん対人になると判断力も必要だが、例えば俺が霧化して隙をついて背後に回る、そこから、斬る動作に入るよね? その時点でヤられるってこと。恐ろしいよね? まぁー普通に氷霧や雷霧で勝てるかもしれないが、初見では確実に負けてたと思う。
「基本は免許皆伝だ。応用編は自分で考えろ。次はリリに学ぶといい」
「サルマン師匠! ありがとうございました」
部下達も小剣流の基礎を早めにマスターし、魔法スキルを持っている人間だけ、リリさんの方に行っている。
小剣流は、基本は斬るではなく刺すことを基本と考え、応用編は2本持ち(二剣流)らしいが、時間の関係で1本のみで終わっている。間合いが近い代わりに到達速度が必要らしい。
到達速度とは剣先が相手に届く速さのこと。
ある日の屋敷での夕食時、思い切って聞いてみた。
「お二人はこんなにもお強いですがレベルっていくつくらいなんですか?」
「あまりその手の話は内緒だが、お主なら別によかろう。2人とも100前後というところだな」
「もし宜しければ、俺がレベルを上げた神の庭にレベリングにでも行きますか?」
「たしかに興味はあるけど、レベルはもういいかなー。だって今更レベル上げても強い魔法を撃てる訳じゃないし、それこそ剣術なんて興味なんもーん」
「某も同じだな。魔法に興味がない上に、剣だけなら他国の剣聖にも負けん。後は応用力で勝負は決まる。レベルに頼るといずれ負けるぞ?」
「たしかに、思い当たる事が多いです」
「まぁー気持ちは貰っとくけど、明日からの訓練も手加減なしだよ?」
「うっす」
いやー。知らない事多いなぁーと。
俺は体力と魔力ってレベルに応じて上がると思ってたんだけど、違ったね。
よく聞くとレベルに応じた数字には限界値があって、それは修行じゃないと上がらないらしい。久々のステータスは、
名前:ライム【人間/男】ランサード子爵
年齢:19
レベル:210
体力 :50000
魔力 :250000
攻撃力:12000
防御力:9000
俊敏性:11000
特殊スキル:霧【霧化・濃霧・氷霧・雷霧】
通常スキル:鑑定、鑑定偽造、収納、調合、解体、刻印
戦闘スキル:魔法【火、風、水、土、無、光、闇、空】
一剣流基礎皆伝、槍術、盾術、威圧、体術、テイム
従魔 :キリングモンキー(キリ)
あれ。ちょっとレベル上がってるし、年齢19歳だし。それにしても、レベル200の時から体力と魔力の上がり方がインフレしちゃってるよ。
恐らくこれが修行の成果ってことか。
それよりも魔法の修行の途中経過だけど、前世でよく読んでた転生系に書いてた魔力操作。フル無視してたけど、やっぱりいるらしい。
今まではゴリゴリの魔力量や気合い?
で動かしていたから、超絶高燃費、低効率な状態だったらしい。
魔力操作の基礎は、基本誰でも使える無魔法で行い。訓練方法は、薄いバリアと同時に身体強化をスムーズに発動すること。って簡単に聞こえるけど、右手左手右足左足を、すべて違う動きにする感じ。
脳がパンクするよ? これを四六時中やらないといけない。体がアベコベに動くから、、
トイレの失敗はキツイよー?
◇
◇
◇
「うーむ。某達はとんでもない化け物を作り出してしまったかもしれんな」
「そだねー。ライムが本気出すと、あたいらは瞬殺される感じだね」
「そんなことないですよ。今の俺なら師匠を見つけたら真っ先に逃げますよ」
「それは違う意味でしょー」
「それで師匠のお二人に相談があるのですが、今後この訓練方法を直営部隊や候補に教えても大丈夫ですか? 一子相伝的な、、」
「あくまでも基本であるから問題ない。もちろんこの国の仇になるような奴は駄目だが」
「候補ってなーに?」
「ありがとうございます。候補は才能ある子供や若者を学校といいますか、専門教室を作って強い人間を増産しようかと思いまして」
「某も弟子はいたが、子供にまで、、恐ろしい事を考えるな」
「魔法は無限で自由だから問題なーし」
「王もゼットさんも家族なので、それを守るには必要かなと思ってます」
「たしかに、今はお主がいると恐らく負ける要素がないが、寿命もあるしの。相わかった」
「弟子の弟子は弟子なのよ」
「とにかくこの一年ありがとうございました」
そう。かれこれ1年を費やし修行に明け暮れた。そのおかげで、謙遜しても圧倒的なこの全能感はたまらない。
苦戦したドラゴンと再戦したら、一撃で倒す事が出来ると思われる。いかに成長したかわかるだろう。
また師匠達から許可を貰ったので、新たな事業として、隠密部隊の候補生の専門学校を作る事にした。
俺の直営部隊として、存在だけは有名となっているが、今回、
全員がレベル100以上の隠密戦闘部隊という触れ込みで、既に領民からは支持を受けて、さらに他国やハンター組合、マフィア的な人間には恐怖の対象でもある。
そこに霧隠候補生の専門学校の募集が始まるから、他領からも多くの応募があった。
特殊スキルに囚われず、努力出来る性格等も審査の対象である。
あくまでも戦闘部隊として考えていたが、その他の才能溢れる人間が居たことで、ここから多くの有能な人間が霧隠として、世に出ることになるが、本人以外は霧隠であることは知らない。この話は少し未来の話となるが。
◇
◇
◇
「アーサー王。ご無沙汰しております。やっと長い修行を終えて少しは強くなれました」
「ライム。なんだ畏まった話し方をしおって。それにしてもサルマンとリリが興奮しておったぞ? お前がその気になれば大陸を統一できると、他の十志に自慢するから会わせろ会わせろと煩いくらいだ」
「お世話になった礼儀だよ。師匠が褒めてくれると嬉しいな。出来るだけ戦争は避けたいけど、仕掛けてくるなら、ゼットさんの言葉を借りると、俺が1番槍で終わらしてくるよ」
「ガハハハッ。頼もしいの」
「妾はドラゴンとの戦いで負傷したと聞いた時は心配で気が遠くなったけど、怪我は気をつけるようにお願いするわ」
「お陰様でもうドラゴン如きには傷は負わないよ」
「ドラゴン如きにとな? 妾の甥でも末恐ろしい」
「母上の国は俺の国なんだ。それを守るための力は誰よりも貪欲になるだけさ」
「うむ。して今日は本題があるのか? 余は顔を見せてくれるだけで充分だが」
「うん。貴族にしてもらって修行もしてもらって感謝してるけど、領地も落ち着いてきたから、他の国や大陸を回る旅をしたいなって思うようになってきて、勿論緊急の場合は一瞬で帰って来れるし、許可貰えないかなって相談にきた」
「ほう。やはりライムも男だな。大陸を回る冒険がしたいか」
「まさにその通りで、責任ある立場だけど色々な話を聞けば聞く程、行ってみたい見てみたいってなってきちゃって」
「自領の運営はどうする?」
「ザマスってのが優秀で、任せておけば大丈夫だし、有事の際は霧隠と騎士団がいるから、問題ないと思う」
「霧隠は大層優秀のようだな」
「気づいていないと思うけど、他領や王都にも既に紛れ込んでるよ?」
「なっなに!」
「あくまで隠密だから、不穏な動きがあれば真っ先に連絡機で情報共有できる。国を守るには、ね?」
「ね? って、はぁー。普通は処罰される内容だぞ? まぁーいい。それで他国に回るとして、一応王家直属の外交官の証明書を渡す。この大陸以外の国々とも外交の契約は結んでおるから、外交官は貴族扱いとなるため移動に便利だ」
「え。でも逆にトラブルに巻き込まれたりしないかな?」
「ライムの事だ。あからさまに悪用したりせんだろう。他国に入る際に身分証を求められる故、移動しやすい。もちろんハンターとして行けば入れるが、その点お前は有名人だからな」
「たしかに、、ハンター組合から恨まれてそう」
「余からすると逆恨みだが、我が王国ではハンター組合の立場が魔物予備軍に押されて売上が大幅に下がったようだ。その辺りは充分気をつけた方がいいだろう。とはいえ、ライムに勝てるハンターなどいないが」
「うーん。ハンターの存在意義と国や住んでいる場所を守る事は同義である必要があると思うんだよね。自由ってのは犠牲の上に成り立つものじゃーだめなんだ」
「ライムがどこでそのような事を学んできたかわからんが、その通りだ」
「領地経営で学んだのさ」
「そうか。では外交官の書類と証明のための剣を持って帰れよ。いつから行く予定だ?」
「え? 明日かな?」
「・・・・・・」
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