第21話 新生ランサード領

 隠密部隊の構成を女2名が2班。男2名が2班。部隊長として女と男1名づつを任命して遊撃隊とした。


壱(いち)女 部隊長  特殊スキル:統制士

弐(ぶ) 男 副部隊長 特殊スキル:軍師

参(さん)女 特殊スキル:魔法士

肆(しー)女 特殊スキル:剣豪

伍(ごー)男 特殊スキル:騎士

陸(むつ)男 特殊スキル:魔法士

漆(うる)女 特殊スキル:魔法剣士

捌(はつ)女 特殊スキル:拳闘士

玖(くー)男 特殊スキル: 狙撃手

拾(じゅう)男 特殊スキル:魔法剣士


 これを見ると俺の特殊スキルがいかに異様かわかる。 この世界の特殊スキルもかなりありふれたモノが多いがこのように戦闘系のスキルを得るとハンターや騎士団を目指したりすることが多い。特殊スキルによって人生が左右されるってことだ。

 名前の付け方にセンスがないことは理解してるが、覚えられん!


 で、騎士団は全員で200名が合格した。

実際は300名程いたのだが、筆記試験で落とした。やはり武術に長けると自己中心的な人間も多いと言う事だ。

 合格者には元ハンターや元リップ男爵の騎士団の人間もいる。思惑通りではあるが、特に元ハンター等は騎士団の基本的な常識や軍としての役割を理解していないため、キュロス領の騎士団長のザッツさんに事前にお願いしていた幹部による指導を今から10日間程実行してもらう。

 10日間の指導があったとしても継続することが必要だし、信頼できる騎士団長が必要だ。

 

 そこで、ザッツさんの甥っ子が王都で騎士団に所属しているようで紹介してもらうことになった。勿論、スカウトする旨は事前にザッツさんから王都の騎士団には話を通して貰っている。

 名をエルドと言い爵位はないようだ。

《鑑定》をすると、レベルは20ではあったが

まだ若く特殊スキルも騎士と言う事なしだったので、すぐに条件を伝えスカウトすると、快く引き受けてくれた。

 名誉ある騎士団長だし、同じ平民だとやりにくいだろうし、男爵が任命できる騎士爵に任命する事を伝えると大いに喜んでくれた。


 「我はエルド・ドリアーズ騎士爵である。この度、栄えあるランサード領の騎士団長を拝命した。新たに入団した諸君と共に命をかけて、ランサード領を守ることを誓う。また今日よりあのキュロス騎士団の方々より指導頂く事となっている。諸君の健闘を祈る。以上だ!」


 この10日間は恐らく地獄のような訓練が待ち受けているだろう。全員が残ってくれればいいけど、減ったら補充するしかないね。


「ザマス。悪いが俺とエリフィス、ファリス、パールと隠密部隊の全員で、10日間修行に出る。何かあればコレを使って連絡してくるように。で、後7日後くらいにハンター組合から、連絡が来ると思うが、こちらから連絡するから待っておけと言っておいてくれ」


「賜りました」



 神の庭の中間あたりで、周囲を中ランクに囲まれた集団は半泣きになりながら、魔物にを必死に刺している。

 俺の氷霧で体のほとんどを凍らされた魔物が、そこらへんに転がっていて異様な雰囲気だ。


「ご主人様、今のでどうやらレベル50となりました」


「パールも中ランクの魔物1匹くらいなら倒せるんじゃないか?」


「1匹なら倒せるかも知れません」


「とにかくレベル100になっておけば、後はダンジョンで経験を積めるだろ。ボスに挑むのは無しだけど」


「これを後7日間もやらないといけないとか」


「やるしかないのよ」


「まだ弱い魔物しかいないだろ? もっと奥に行くと更に数が増えて、魔物のランクもあがるぞ? 気を抜くなよ」


「せっかくお館様に拾って頂いた命を早くも無くしてしまいそうです」


「はははっ。俺がいるし死にはしないよ」


「ここにいる隠密部隊全員がレベル100になれば恐ろしい集団になるぞ」


「お館様が騎士団の幹部にも同じ事をやるっておっしゃってたぞ?」


「世界を統べようと考えておられるのか?」


「わからん。私たちはお館様についていくだけだし」


 


「帰ったぞー」


「ライム様おかえりなさいませ。早速ですが、ハンター組合から先般の件で打ち合わせしたいと連絡がありました」


「そうか。じゃー先に騎士団の仕上がりの確認をしに行くか。で、お前達は今日一日は休みとする」


「ぎ、御意」


「皆さんはこの10日間でライム様にしごかれたので? 大層お疲れのご様子」


「なんとか全員レベル100になったよ」


「?! れ、レベル、100?」


「明日ハンター組合に行くけど、返答次第では面白い事になりそうだ」


「ハンター組合からすれば悪夢でございますな。よい返答を期待しておきましょう」


「まぁーどっちでもいいけど」


 そういいながら、騎士団が大規模な訓練をしている場所に移動し、ご無沙汰ぶりのザッツさんに挨拶する。


「ザッツさんこんにちは」


「おーライム! 少し見ない内に男爵閣下とは吾輩は嬉しいぞ! それと甥を騎士爵に叙爵してくれた事、感謝の言葉もないわい」


「いやいや。優秀だからこそですよ。でも早速助けてもらっちゃってすいません」


「それこそ騎士団を全員解雇した事を聞いた時は驚いたが、今思うと良い案だったかもな。こいつらも士気が高い」

 

「この10日間で仕上がり具合はどうですか?」


「街の警備運営に関する事や緊急対応の方法は理解したと思うが、やはり不慮の出来事があれば臨機応変な対応は厳しいだろうな」


「その辺りはこちらでフォロー出来そうです。ちょっと今はバタバタしてますので、落ち着いたら、お礼に伺います」


「そんな事を家族に言うでない。また何かあればいつでも相談してこい」


「うん。ありがとうございました。

して、エルド」


「はっ!!」


「キュロス騎士団の皆様を城門まで全員でお見送りしろ。一糸乱れぬ動きで領民から信頼を勝ち取れ」


「ガハハッ。なるほど、流石はライムだの。ではエルドよ。頼んだ」


「はっ! ランサード騎士団全員注目! ただいまよりキュロス騎士団の皆様を表城門までお見送りする。アーサー王陛下と同じ式典隊形で準備」


 その掛け声と同時に200名の騎士団が速やかに隊列を組んだ。


「俺が先頭を切ろう。あえて街中を通るぞ」


 かなり迷惑と思ったが、これも必要な事なんだ。権力を見せる事、騎士団の力を見せる事。それらは直ぐに広まる。

 ハンター組合との打ち合せが楽しみだ。更にトドメもあるしね。


 結果は大成功。領民は俺に敬意を払いつつも騎士団の一糸乱れぬ隊列を見て歓声が上がっていた。しかも領民から騎士団に合格した人もいる為、家族辺りが大歓声を上げているのが印象的だ。


「ではザッツさん。ありがとうございました。ゼットさんに宜しくお伝えください」


「相分かった。必ず伝える。ライムも達者でな。また会おう」


 10名程で200名の素人騎士団をここまでにしてくれた。というより仕上げる事が出来る経験や能力が凄い。

 そりゃーキュロス領は他国からも恐れられるはずだよ。


「エルド、改めて今より街の警護を任命する」


 エルドや騎士団全てが膝を突き


「はっ!」


「では、各自配置につけ。散会」


 5人で1班構成で、門番や監視塔、屋敷周辺、詰所などに華麗に配分されていく。

 各々の誇らしい顔が印象的だ。


 俺は翌朝、屋敷にハンター組合長のリアルを呼び出した。


「ランサード男爵閣下。失礼します」


「はいれ」


「先日の騎士団の働き見事にございました。また各税率も通常に戻ったようで、一領民としても喜ばしく思います」


「それが俺の仕事だからな。して先日の件の返答は?」


「は、はい。その件ですが」


「あっ。そうそう。お前達はいれ」


「はっ!」


 ヅラヅラと13名が部屋に入ってくる。


「こいつらは俺の言わば直営部隊となんだけど、全員をハンター登録させようと思ってる。後で調べればわかる事だけど、全員がレベル100だ。返答によっては、ハンター登録させずこいつらを中心に直営の魔物対策チームを作る事にするから、悪しからず」


「レベル100? まさかこの全員が?」


「俺は態々そんなくだらない事で嘘はつかないよ?」


「そ、そうですが、、」


「で、返答は?」


「私の意見ではなく、統括の意見としては、やはりハンターにそのような契約は強制できないとなりました」


「そうか。では結構」


「しかし、ハンター組合とトラブルになりますと、他国へハンターが流れますぞ?」


「ほう。ならばやってみるがいい。それを実行した時点で俺の敵となる。敵には容赦しないよ?」


「もう少し、統括と協議するお時間を頂戴できませんか?」


「好きにするがいい。俺は俺で早々に準備を始める」


「わ、わかりました。良いお返事を出来るように致します」


「俺は領民の為という大義があるんだ。利益だけでは先はないよ? この意味はわかるよね?」


「勿論にございます」



「ザマス。ハンターカードと同じ魔道具って作れないのかな?」


「恐らく可能かと思いますが、あのカードには銀行機能もありますので、その辺りの信用性が担保出来るかどうかが問題になるかと愚考致します」


「いや。その通りだな。とすると、やはり公的な組織にして信用度を上げる必要があるか」


「となりますと、準予備軍のような立ち位置とすればハンター組合も口を出しにくいでしょう」


「たしかに、その対価として現在の買取価格より多少高く買うことと、商会連中と協議して宿泊や賃貸、装備について割引を導入しようか」


「それは良いお考えだと思います。商人組合に相談してみます」


「そうだな。あくまでも領民を守る事を目的としている。森が隣接しているにも関わらずハンター組合が非協力的で不安定な状況であることが前提だ」


「はい。ライム様の見事な手腕で街の治安を安定させた事も交渉材料になります」


「ではその方向で頼む。俺は隠密部隊の増強と騎士団の幹部を強化してくる。急ぎがあれば連絡機で頼む」


「賜りました」


 その後、キュロス領まで行って例の訳あり奴隷を6名増やして、部隊長と副隊長、騎士団の幹部候補の総勢、13名を連れて地獄のレベリングを行った。



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