第14話 犯罪

「どうやってライムが先に着いたのだ? 吾輩が抜かれた様子はなかったのだが」


「ザッツさんには教えますね。霧化で霧の中を移動してるから早いんですよ」


「あっあの霧はライムの出した霧だったのか? 妙に深い霧だと思ったわい」


「へへへ。で、もう母親は見つけましたよ。苦しそうなので、すぐに治療しようと思いましたけど、論より証拠ってことで」


「その前に不法侵入は不味いだろ」


「固いこと言わずに、どのみち犯罪確定なんですから」


「はぁ~そうだな。お前達、この街におる神父を呼んで来い。証拠を確認してもらう」


「はっ!」


 なるほど、神父の証言は証拠になるのか。

うん? でもそれと上手く組めばもみ消せるような。


「ライムよ。考えていることはわかるが、神父は嘘をつけない。そう神としておるのだ」


「なるほど! この世界の契約ってすごいな」


「この世界? たまに変なことを言うのぉ?」


「いやいや。あっ! デブが来ましたよ」


「あいつの前でデブというなよ? 話がこじれるわ」


 必死の形相で、特に馬が。駈け付けてくる。


「はぁはぁ。ここで待っておれ、奴隷との約束通り治療している証拠を」


「もう見つけましたので、こちらで介抱してます。今神父が来ますので、そちらが少しお待ちください」


 とノリノリで言ってやると。


「またしても戯言を、あれは別邸の地下ろぅ‥‥‥」


「なんですと?! 治療するのに地下牢とは可笑しなことを、もうすぐ神父が来るので男爵はそこで待機願う!」


「ちがう! 今のは言葉の綾で」


「言い訳は神父が来てからと言う事で」


「神父を連れて来ました」


「ご苦労。早速だか神父よ。リップ男爵に奴隷に関する犯罪疑惑がかかっておる。其方を証人として、取り調べを行う故、よしなに頼む。もちろん身の安全はキュロス騎士団長のザッツが保証する」


「キュロス騎士団長! わ、わかりました」


「では、早速だがリップ男爵よ。これより審議に入るので嘘偽りなく話すように」


「くっ」


「まずは奴隷2名に関する契約で、その母親の病気を治療すると確約したと聞いたが事実か?」


「そうだ。だから」


「その母親にどのような治療をした?」


「ポ、ポーションを飲ましている!」


「では、その病名は何か? 訳あってポーションを飲ませてしている訳であろう」


「び、病名は、ふ、不明だ! だが、ポーションを飲ますと多少元気になった。だからそれが治療としては最善である」


「では、然るべき鑑定を受けさせていないと。神父よ、それで治療は出来ると思うか?」


 ギロリと神父を睨む男爵。


「いっ一般的には出来ません」


「ではせめて看病はしていたのか? 

先程は地下牢に入れていたと言っていたが?」


「そ、そんなわけないだろう。執事に看病するよう指示してある」


「だそうだ。ライム」


「では本人に聞きましょうか。前もって馬車を借りて匿っていたので、証言のためにポーションを飲ませましたが、話せそうですか?」


 馬車からヨロヨロと母親が出て来た。

すぐさま手を貸して支える。

男爵は真っ青になりながら、不法侵入だのなんだの叫んでる。


「さ、先程の、ゴホゴホッ。看病の件は、、それどころか地下牢に、ゴホゴホ。。娘達に申し訳な、ゴホゴホ」


「神父よ。治療を受けているはずの本人がこのように証言しておるが、これいかに?」


「リ、リップ男爵には申し訳ないですが、これでは契約不履行と言われても仕方がない状況ですが、、、」


「何を言う! ではどのように治療すれば良かったのだ! 此奴は既に死ぬ寸前と聞いておる」


「ほう。では死ぬ前提で奴隷契約をしたと言うことだな?」


「ちっ違う!」


「神父さんは鑑定できますよね? 病状はわかりますか?」


「は、はい。《鑑定》 むっ。肺の病となっております。これは不治の病と言われておりまして、申し訳ございませんが、我々にも治療が難しいと、、何度治療しても再発する病気でございます」


「なるほど、では俺が治しますよ。しかし俺が治したことを証言して貰えますか? 当然奴隷の契約不履行の件も合わせてお願いします」


「治せるのですか?! それはどうやって」


「それはキュロス辺境伯の判断になりますので」


「そ、そうでしょう。では治せましたら、ご希望通り証言致します」


 どうも神水を見せるのは不味いようなので、馬車に連れて行き、神水を飲ませた。

合わせてバーナやリーゴを食べさせたが、奴隷姉妹と同じく反応がやばかった。死にかけとは思えないテンションで喉を詰まらせていたので、さらに神水を飲ませた。やはり親子だ。


「お待たせしました。神父さん鑑定してください」


「は、はい! おぉー! 本当に完治している。これはとんでもないことですぞ! 大変恐縮ですが、教会に報告する必要がありますので、キュロス辺境伯を通じてお話しがあるかと思いますので、お名前を教えていただけませんか?」


「えー。ザッツです」


「おい! 吾輩の名前を語るな! 神父よ、彼はライムと言う」


「ちっ。ついでに男爵にもバレちゃった」


「むっ。そうだ。リップ男爵を捕えろ」


「くそっ! 役に立たないエルフでこのような事になるとは」


「それは追々王都での裁判で話せばよかろう。では、その騎士の三人も合わせて輸送するとしよう。ライムはどうする?」


「いや。その前に、奴隷の姉妹とこの母親はどうするつもりなんですか?」


「神父ともどもキュロス家の預かりとなる。ライムよ。悪いが神父と母親をキュロス領に送ってくれんか? これはハンターとしてのライムに依頼する。王都へは方向が違う故、頼めるか?」


「ハンターとして、後でたっぷり報酬貰いますよ?」


「ハハハッ。わかった。騎士団の予算を使おう」


「じゃー神父さんとお母さん行きますか?」


「ライム様。私の事はサリデンテ。いえサリとお呼び下さい。そして娘はエリフィスとファリスと言います。家族共々このご恩を一生かけてお返し致します」


「おっ。重たいですよ。別に気まぐれでしたし、気にしないでください」


「いえ、貴方様はエルフに伝わる伝説の勇者そのもの。私に飲ませて頂いたご神「ちょっとまったー! まずは行きましょう。ねっ?」」


「はい。仰せのままに」

 

「クククッ。ライムはエルフの勇者であったか? もはや何も驚かないが、またしてもゼット様が目を回されるわ。では吾輩は出立するので、報告も含めて頼んだ」


「まるふりだ。。ハンターって大変な仕事だって今気づいたよ」


 で、俺は瞬間移動を手を繋いだ状況で全員を運べるかチャレンジすることにした。

 3人分の魔力が必要だが、どうやら成功したようで、サリさんも神父さんも何が起こったか分からないようで混乱していた。


 一応、門を通るルールだから、門前の横に瞬間移動し、貴族専用窓口で軽く説明し、そこからは馬車でキュロスの屋敷に移動する。面倒だけど、、その途中にハンター組合によって姉妹を拾う。



「お母様!」「お母様だよ!」


「貴方達。ごめんなさい。私のせいで」


 と、号泣しているサリさん。ハンター達が興味深々に遠目で見てくるから、威圧しといた。


「積もる話は後にしよう。とにかく屋敷にいくよ」


 キュロス家に戻り、ゼットさんにダンジョンの流れから奴隷を救った話からリップ男爵が犯した奴隷との契約違反の件を説明した。


「ふぅ。ライムが動くと何かと起こるのー。で、その奴隷と母親は神水の事を知っておったのだな?」


「はい。エルフに伝承があるようで・・・・・・」


「その3人を交えて話をする必要があるようだ。もちろんリップの罪が確定するまでは屋敷で匿うつもりだから安心しろ。セバス。3人を呼んできてくれ」


「はい」



「失礼します」


「うむ。我が王国の貴族が迷惑をかけたようだ。しっかり対処するゆえ、しばらく屋敷で安静にしてくれ」


「有り難く存じます」


「で、その後はエルフの国に帰るのか?」


「セイント王国に私共の居場所はごさいません。もしご迷惑でなければこのキュロス領に住まわせて頂ければと思っております」


「それは構わないが、エルフは人間を好まないと聞くが?」


「確かにそういう風潮がある事は事実ですが、出来るなら大恩ある勇者様のお側でお世話をさせて頂けましたらと思っております」


「ゆ、勇者? だと!」


「はい。恐れ多くも神水や神の恵をお待ちである方はエルフの国の伝承では勇者様と伝わっております。その証拠として娘から聞きましたが、ダンジョンをしたご様子。その力も含めてライム様は勇者様と判断致しました。この事はセイント王国でも王家に伝わるお話、私は元王家でしたので、それはもう何度も聞かされております」


「ちょっと待て! 情報が多すぎる。ライムが勇者であることは、もはや驚かないが、エルフの元王族だと?」


「はい。申し遅れましたが、サリデンテと申します。人間と恋に落ち、駆け落ち同然で娘を出産し、エリフィスとファリスが生まれました。その時からエルフ全体から蔑視されるようになり、二人の父親である旦那様も無理がたたり、病気で。今思えば私と病状は同じだったように思います」


「そうか。辛い思いをしたようだな。その姉妹は人間とエルフのハーフ。だから魔法が得意なエルフの才能をもっていた訳だ。そこをリップに目を付けられたってことだな」


「はい。娘達はハンターとして何とか生活をしていましたが、私の病気のせいで幾度も騙され、、」


「そうか。してライムはどうする? 世話をしたいと言っているが」


「いや。そんな急に言われても、、うーん。乗り掛かった船ってこともあるから、少し考えます」


「乗り掛かった船とは、中々うまい表現だな。では少し考えてくれ。後、3日後に王都に出向く事になったから、悪いが予定は空けてくれ」


「わかりました。あっ少し相談があるのですが、今回のダンジョンでグリフォンと戦った時に、武器の必要性と魔法や剣術をもう少し学びたいと思ったのですが、お知り合いで指導してきれる人はいませんか?」


「グリフォン、、それを倒すライムに指導する程の人間は心当たりがないが、一度聞いてみよう。武器に関してはバンスに言えばよい」


「ありがとうございます。バンスさんってどこにいますか?」


「バンス商会は、メイン通りの一番大きな建物だ。聞けば領民は知っておる」


「そうでしたか。わかりました。では俺は早速バンス商会に行って来ます」


「あっ! 私も一緒にいきたい。です」


「私もいくよ」


「えー。別に良いけど、男爵の関係者に襲われるかも知れないよ?」


「お兄ちゃんを襲う奴は馬鹿よ」


「姉妹よ。その通りだ。母親は任せてライムについて行けばよい。ライムを襲う奴は馬鹿だからな」

 

 ゼットさんは、そう言って爆笑している。

なーんかトラブルの匂いがするんだけどなぁ。



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