第13話 厄日
さっさと帰るべきだろう。
いや暫しまて! 瞬間移動の時間だよ。
「ほうほう。場所をイメージして移動する感じか。なんだか〇〇ボールの主人公みたいだけど、あんな感じだな」
想定どおり距離に応じて魔力が必要だが、魔力には自信がある。
「よっと。あれ? 案外まだしっかり小屋も残ってるな」
森で暮らした神の泉の小屋に瞬間移動した。
「この水が案外使えるようだし、少し持ち帰るか。あとバーナもリーゴも採ってと」
◇
◇
◇
「ビルドさんいる? ダンジョンの件で報告があるんだ」
「ライム様! 少々お待ちください」
椅子に座って待っていると、なにやら騒がしい。
あっ。例の貴族が何やら受付に文句を言ってるようだ。
ハンター全員が殺気立ってる。そういえば例の奴隷の子大丈夫だったかな?
「お前たちの管理がなっていないから、このリップ男爵が危険に晒されたのだぞ!
どう責任取るつもりだ!」
「ですから、ハンター組合としてはダンジョンに入れないよう守衛をおいておりました。逆にどのようにして入られたのでしょうか?」
「そんな者はいなかった。そうだな?」
はい。と騎士団3人が返事し、
「リップ様が買われた奴隷の二人を失った。ハンター組合にはその保証をしてもらわなければならない」
「そんな決まりはございません。あくまでも自主責任のもと「黙れ! 聞けば氾濫前の危険なダンジョンだったそうだな。その管理はハンター組合にある」」
「ですので、守衛を」
一体こいつは何がしたかったんだ?
確かに入れないように守衛がいたし、それこそ無理に入って危険を冒す理由がない。
あの子たちに聞いておけばよかったな。
「お前では話にならん! 組合長を呼べ!」
だるそうにビルドさんが部屋から出てくる。
「リップ男爵様。壁伝いに話は聞こえておりましたが、スタッフの言うように、あくまでも自主責任です。それこそお聞きしたいのですが男爵様がなぜダンジョンに入られたのですか?」
「お前が組合長か? ダンジョンに入った理由は我がリップ家の武功を世間に知らしめるためである。それが何か問題があるか? それよりも奴隷の補償をしろ!」
やれやれ。そんな下らない動機で忍び込んだのか。
初めから氾濫の情報は得ていて、それを討伐した功績がほしかったのだろう。
「ですから。」
「ちょっといいですか?」
「誰だお前は」
「Aランクハンターのライムです。リップ男爵さんが言ってる奴隷は俺が助けて今こっちに戻っているはずですが?」
「なにぃ? 助けた? そんなわけないだろ! 体力がなくなり今にも魔物に喰われそうだったのに」
「そんな奴隷を見放して逃げ帰ってきたのですか?」
「きさま!! 口を慎め! 身の危険が迫り泣く泣く帰ってきたのだ。だからこそ。その弔いをハンター組合に交渉しておる!」
「泣く泣くって生贄にして、その隙に逃げ出した癖に」
あっ思わず本音言っちゃった。ビルドさんが頭を抱えてる。
「この無礼者め!! おい不敬罪で斬り捨ててしまえ!」
その時
「ご主人様! ただいま戻りました」
「戻りましたよ」
ハンター組合に駆け込んできた奴隷の二人。
ナイスタイミング。もう少しで殺す所だった。
「あれ? お兄ちゃん先に着いてるのよ?」
「あーそうそう。ビルドさんダンジョンは討伐したからもう安心だよ」
「何! 討伐ってコアを破壊したのか?」
「そう。これコアの残骸ね」
「でかした! これで一安心だな。助かったぞ」
「嘘をつけ! あのダンジョンで奴隷を助けて先に帰ってくるなど、あり得ない話を信じるのか?」
嘘つき呼ばわれにトラウマがあるのか。
少しカチンときて、威圧スキルを使いながら
「うるせーおっさんだな。今ここで再現してやろうか?」
ハンター組合にいる全ての人が戦慄を覚えガクガクと震えている。
「ライム。ま、まて。俺がちゃんと説明する。だから威圧をとけ」
「いや。こいつさ。この奴隷の二人も騙してそうなんだよな。そのあたりも含めてちょっとお話が必要だと思うんだけど」
「わ、わかった。実は今、ザッツ殿を呼びにいっているから、、」
「ふーん」
ザッツさんが来るなら話もできるか。
前の村の話も奴隷の話も、こいつ基本嫌いなんだよな。
「こ、こ、この、お前たち早く捕らえろ!」
「ほう。その雑魚が3匹が俺を捕らえるだと? やってみるか?」
「まて! ライム。吾輩が預かる。よいな?」
「あっ。ムカつきすぎて気づかなかった。別にいいですけど、俺も入らせてほしいんだ。ちょっと奴隷の件で気になることがあって」
急いで威圧スキルを解除する。
「む。それは構わないが攻撃はなしだ。やっても問題ないが処理が面倒だ」
デブ貴族がギョっとして
「ザッツ騎士団長。我は男爵である。そちらの平民は不敬罪で処罰させてもらう」
「リップ男爵。それは無理だ。彼はキュロス家の家族である。もしそのようなことになれば、吾輩が一番槍を務めさせて頂く。そもそもここはキュロス領である。あまり事を大きくして我が主を怒らせないことをお勧めする」
「騎士団長ごときが大きくでたな。これは王に抗議させてもらう。覚悟しておけ」
「楽しみにお待ちしておく。がその前にリップ男爵にはお聞きしたいことがある。手荒な真似はしたくないので、あちらの個室でお時間頂戴できますかな」
「ふん。ハンター組合にはしっかり迷惑料を頂くことになる。話くらいはしてやろう」
尊大な物言いで、いちいち癇に障る奴だ。
すでに連れの騎士3人は青ざめて下を向いてる。
キュロス家がよっぽど怖いのだろう。
◇
◇
◇
まずは当事者同士の話となり、ビルドさんが聞き取りを始める。
「で、リップ男爵はなぜ立ち入り禁止のダンジョンに入られたのですか?」
「なんども言っておるだろう。知らなかった上、守衛がいなかったから入った。明らかにハンター組合の不備が原因だ」
このやりとりを繰り返すだけで、そろそろ飽きてきたので、
「たしか奴隷の二人って戦闘だけの契約だったよな。証言は取れるだろうから俺があっちで聞いてくるよ」
「?! おい。奴隷の話など証拠にならんぞ」
「あっそ」
待てやら、なんやら叫んでいるが、ザッツさんに止められて身動きを取れない。
「おーい。そこの姉妹」
「はい。どうされました?」
「あのさぁ。ダンジョンって守衛がいたよね? どうやって入ったの?」
「そ、それは」
「大丈夫。本当の事言ってくれれば後は俺がなんとかするから心配するな」
「し、しかし。この後の関係を考える「夜にね。交代の隙をついて忍び込んだのよ」」
「こら。言っちゃダメじゃない」
「まぁまぁ。そういうことね。後、母親ってどこにいんの?」
「え? お母様はリップ様の別宅に療養していると聞いてますが、全然会えてませんが‥‥‥」
「そっか。うーん。そういえば病気ってどんな病気?」
「咳が止まらなくて、熱と痰に血が混じってて体が動かないのよ」
「それって結核っぽいけどな。具体的にどうやって治療してるんだ?」
「ポーションを毎日飲ませるよ。それが高いのよ」
「ポーションって病気にも効くのか?」
「最初に飲ましてもらった時は見てましたけど、少し元気になってました」
「なるほどな。ある種栄養剤のような効果があるのか。でも多分それでは完治しないぞ?」
「え? そんな!」
「まぁー心配するな。後でさっきの話をちゃんと証言できたら俺が観てやるよ。知っての通り神水だっけ? あれを飲ませば治るはず」
「あっ! あの神水はまだあるのですか?」
「あるよ。大量に。だから安心してな」
「はい!」
ますます怪しいな。この世界に結核があるかわからないが、もし知っててつけ込んでいる場合は、治せない事を前提に奴隷契約したか。治せる薬を本当にもっているか。
「お待たせ。夜に交代の隙をついて進入したらしいぞ」
「おい! まさか奴隷などの言うことを信じて男爵であるこのリップ様が嘘をついてると言いたいのか!」
「そうだよ。でさ、奴隷の二人なんだけど、母親が肺の病気でリップ男爵が治療する契約で戦闘奴隷になったらしいけど、どんな治療をしてんの?」
「そ、そんなことお前に関係ない。不愉快だ! 帰る!」
ザッツ騎士団長がニヤリと笑って
「リップ男爵。奴隷の契約に虚偽があった場合、王国法で強く罰せられますぞ? 私も耳に挟んだ以上は、王国貴族として調査させて頂く」
あれ? ザッツさんて貴族だったんだ。っぽくない所がいいね。
「ザッツ騎士団長! それは越権行為だぞ。騎士爵が男爵を調査するなど聞いたことがない!」
「リップ男爵は違法行為をしていないと思う。だからこそ身の潔白を共に証明し、もし違えた場合は、このライムを罰すると誓いましょう」
「え? 俺? まぁーいいですけど」
「では決まりだ。我らはこれよりリップ男爵領に向かう。もしよろしければご同行しますかな?」
「話を勝手に進めるな! そのような暴挙はすゆるされん!」
「なぜか当事者になったので俺も行きますね。あっその前にゼットさんに報告してから合流します。で、調査の間は奴隷の二人を誰かに預かって貰わないと」
「ライム。それはハンター組合が責任もって預かる」
相当頭に来てたようで、嬉々として奴隷を預かるという。
「お前達。今回の侮辱は絶対に許さんぞ」
「へいへい。早く帰って隠ぺいしないと不味くなりますよ~。よーーいドン!」
よーいドンで、男爵勢が一斉に飛び出る時点で黒確定だけどな?
あんなのが貴族で大丈夫なのか?
俺もゼットさんに掻い摘んで説明した。
どのみち、早くても3日は大丈夫そうだ。リップ領の場所も聞いたし、霧で移動する。一度ついてしまえば、帰りは一瞬だしね。
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