第12話 霧の守護者

 地図を貰い、馬車を出すと言われたが断った。霧化で直ぐに到着できるからだ。


「この辺りのはずなんどけどな。あったあった。これだよな」


 ハンター組合の人だと思われる人間が数人で入口を見張ってるようだ。


「あの。組合長から依頼を受けて調査にきたライムです。これが依頼書です」


「お疲れ様です。ライムさんですね。依頼書確認いたします。はい。では宜しくお願いします」


 早速、人生二回目となるダンジョンに入った。

相変わらず強い気配を感じる。今回は早々にコアを片付けることと、大量発生した魔物を目減りさせることが目的だ。

 聞いた話だとコアを討伐した瞬間にダンジョンは死ぬが、魔物が消えることはない。なので魔物同志で戦闘が始まることや下から上がってくる強い魔物に押されてダンジョンから溢れ出すこともあるようだ。


「結局、片っ端らから戦闘するのがベストだよな」


 ≪濃霧≫ ≪霧化≫ ≪氷霧≫


 見える範囲すべてに霧が立ち込め、瞬間で移動しながら≪氷霧≫で瞬殺していくを繰り返す。

 低階層なこともあって魔物のランクは低いため魔石はスルーしていく。


「おっと! 落とし穴だ」


 落ちる瞬間に≪霧化≫して回避していく。


「やっぱり罠があるんだ。ダンジョンコアは生物であり知能があるってことか」


 瞬く間に2階層に到達し進んでいく。前回と違って階段で降りていくタイプのダンジョンのようだ。降りると明らかに魔物のランクが上がったように思う。が、ライムの前には無意味である。


「レベルが200に到達してから、数を討伐してもあんまり上がらないなぁ。やっぱり魔物のランクも重要なのかもしれない。経験値といっても経験に至らないレベルは積み重ねても同じって事かな」


 なんてレベルアップについて考察しながら進んでいくと、近くで爆発音がした。

恐らく魔法だと思われる。


「あれ? たしか誰もいないって聞いていたのに、、まさかまた骸骨がいるのか?」


 をして、爆発音の近くに進んでいくと


「お前達何をしている! 早く殺せ!」


 恐らく貴族であろう服装をしたデップリ太った男が女の子二人に指示している。

近くには騎士と思われる三人が仰々しく貴族を守っているようだ。


「はい! しかしこうも数が多くては‥‥‥」


「えーーい黙れ! せっかく高い金を出してお前達を買ったのだから命を懸けて戦わぬか!」


「は、はい‥‥‥」


 ウィンドウカッターやウォーターカッターを主軸に上手く魔物を討伐しているが、明らかに体力不足で今にも倒れそうだ。

 奴隷とはいえこんなこと許されるのか? そういえば奴隷について教えて貰うの忘れてた。

 少し距離を取って静観していると、女の子二人がほぼ同時に倒れてしまった。


「おい! 立て! くっ。不味い。お前達! 一旦退却だはぁ

「はっ! こ奴らはいかがなさいますか?」


「こんな役立たずいらん。魔物がこいつらに向いている内に退却するぞ」


 そう吐き捨てて、体格に似合わず驚くほどの速さでその場から去っていった。

当然、魔物は多少警戒しながら二人に近づいていく。


「ひっ。。助けて」「お姉ちゃん‥‥‥」


 弱弱しい心の叫びを大きな声を上げるゴブリンナイトにかき消される。

防御を得意とする魔物と魔法しか使えない二人の相性が悪かったのだろう。


「はぁ。相変わらず人間は‥‥‥。」


 少し前のライムであれば、もしかすると見殺しにした可能性すらあったわけだが、これはキュロス家の功績である。

 逆にゴブリンナイトからすると獲物を得られる瞬間に命を奪われるから、たまったもんじゃないが。


「大丈夫か?」


「え? 助けてくれたの?」「ひっ」


「お前達は姉妹なのか? すまんが盗み聞きしたが奴隷のようだが」


「はい。あっ。まずは救って頂きありがとうございました。私たちは姉妹で奴隷です。数字でよばれてましたので名はありません」


 よろよろと立ち上がろうとするが、体力が無いようで再びへたり込む。


「も、申し訳ございません。立てそうになくて‥‥‥」


「うーん。一日で終わらそうと思っていたが仕方ないな。ここで少し休むか」


「え? こんなところで休めませんので、何とか生き延びて主人の元へ帰りますので、どうか先へ進んでください」


「お姉ちゃんよ。怖いよ」


「だめ。人様に迷惑かけてはいけないと母様に言われたでしょ」


「でも‥‥‥」


「これも何かの縁だろう。気にしなくていい。何か食べるか?」


「やったよ! お兄ちゃんありがとうよ」


「ちょっと! ダメよ! しかもここは危険なエリアよ。とてもじゃないけど」


「この辺りの魔物はもういない。居たとしても特に問題ない。とにかくそうだな。肉でいいか?」


「あっ。申し訳ございません。私たちエルフは肉を食べれません‥‥‥」


「そうか。ならバーナとかリーゴがあるけど、これならどうだ?」


「バーナとリーゴ? 神の恵み!? そ、そんな高価な物は頂けません!」


「もう煩いなぁ~。もう出したんだから食べろよ」


 妹のほうは、喉を詰まらせながら口いっぱいにして食べているが、姉の方は恐る恐る少しづつ食べている。慎重に食べても同じに思うが‥‥‥。

妹が窒息死しそうなので、例の水を出してやると勢いよく飲んで、


「あれれ? 力が湧いてくるよ?」


 姉にも飲ましてやる。


「ひゃっ! これは‥‥‥」


「あー神水ってやつらしい」


 二人は無言で絶叫している。器用な奴らだ。

全部を飲み込んでから、なんだか怒られてる? 

奴隷に飲ます物じゃないやら、エルフによってなんちゃらとか。

力説されるが興味がないから華麗にスルーだ。


「まっとにかく回復したようだな」


「まったくもぅ。貴方様は非常識すぎます」


「お兄ちゃんは良い人なのよ」


「でさ、奴隷ってどういう仕組み?」


「奴隷の仕組みですか? 仕組みといいますか契約スキルを使って契約した内容を履

行する事ですね。私たちの場合は事情があって戦闘に関する主従関係を結びました。その指示に従うと体中に痛みが走ります。逆にその、、せ、性的な要求は拒否することができます。そしてその対価として金銭や期間、その他の条件を双方が同意すれば契約となります」


「なるほど。ではその期間内に契約を破棄することは不可能なのか?」


「いえ。それも同じく双方が同意であれば可能です。あまり聞きませんが」


「そうか。言いたくなければ言わなくていいが、お前たちはなぜ奴隷契約することになったんだ?」



「そ、それは‥‥‥」


「あのね。お母様が病気なのよ。だから治療費がいるのよ」


「父親とか周りの親戚とかは助けてくれなかったのか?」


「お父様は死んだのよ。んで、人間と結婚したお母様は誰も助けてくれないのよ」


「そうか。で、その母親は生きてるのか?」


「はい! リップ男爵様との契約では病気の治療を約束してますので」


「うん? 病気の治療の契約? ずいぶん曖昧だな」


「そ、そんなはずは! 治療しなければ罰則が」


「働けない体でどうやって生活するんだ?」


「そ、それは治療の中に当然入ってます! よね?」


「うーん。粉臭いな。まぁ~とにかく体力が回復したようだし二人で帰れるか?」


「はい。逃げ帰るだけなら、なんとか大丈夫かと」


「まぁ~悪いが俺は仕事があるから、大丈夫なら二人で帰ってくれ」


「わかりました。本当にありがとうございました」


「お兄ちゃんありがとよ」


「じゃーな」


 ライムは先の3階層まで一気に進んでいた。道中先程の二人の事を考えていた。


「どう考えてもリップ男爵だっけ? 怪しいよな。

あっ!! あーーー。思い出した。あいつ俺が村で捕まりそうになった騎士のトップじゃん! 思い出したらムカついてきた」


 ムカついたようだが、思わず≪氷霧≫より殺傷力の高い≪雷霧≫を放った。

雷霧は霧を雲に近い状態にもっていき、静電気から起こる雷を指定のエリアに放つスキル。この世界には雷魔法は存在しないため唯一の使い手となっている。

これを受けた魔物は黒焦げになり、そのスピードに避けることも許されず一瞬で絶命する。 


「おっ。小部屋みたいな場所発見。ここだな」


 小部屋に進むと、想定通り扉が閉まった。

とすると強い魔物が奥にいるわけだ。

前は骸骨だったから今度はなんだろ?


「ワシの上半身と翼に下はライオンとなるとグリフォンか?」


 ギャオーっという威嚇? と同時に口から火の玉を吐き出してくる。

周囲にバリアのような魔力を込めた氷霧を発生させて、それを防ぎ≪濃霧≫を発生させる。雷霧は仕込みに少し時間が掛かるため、霧化で接近して翼に剣を振り下ろす。


 斬り落とせるはずが、羽? に阻まれドンっと弾かれてしまった。

グリフォンは鉤爪で反撃してくるので、霧化で即座に躱し一旦距離を取る。


「剣での攻撃も少し考えないとダメみたいだな」


 そんな悠長なことを言っていると、口から火の玉を連続で発射してくる。

濃霧がだんだん飛散していく。


 ≪濃霧≫ ≪氷霧≫


 再度、霧を発生させて全体に氷霧を発動すると動きを止めた。

が、動きは止まったが、火の玉を放ってくる。

 鳥って人間と肺の仕組みが違ったっけ?

いや。それもあるが、強引に火の玉を繰り出すことで溶かしたってことか。


 ≪濃霧≫ ≪濃霧≫


 馬鹿の一つ覚えのように火の玉を連射してくる。

こちらも同じく濃霧を繰り返し。


「これでどうだ? ≪雷霧≫」


 数十発の雷がグリフォンに被弾した。

翼はちぎれ、所々は焦げて真っ黒になっている。


「かなり生命力が高いよな。これに反省して剣を新調するのと剣術や魔法を見直すか」


 そんな感想を言ってると、グリフォンの体が消滅した。

そこには恐らくスキル書だろう物が落ちている。


「やったね! ≪鑑定≫ おっ! 瞬間移動? まじか!」


 瞬間移動。あれ? 霧を使って移動するのは出来るから意味なし?

ちょっと実験しないとな。距離があるならここから一瞬で街に帰れるもんな。


「あ。そうそうコア潰さないと」


 壊さずに持っていけないことは知ってるから剣で壊した。

ダンジョンから普通の洞窟に変わったようだ。



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